60年前に誕生した伝説のクレーンゲーム「クラウン602」――幻の1号機を求めて、いまタイトーが大捜索
はじめに 〜 クレーンゲームの原点、クラウン602とは?
1965年――日本が高度経済成長の只中にあったこの年、日本国産初のクレーンゲーム機「クラウン602」が太東貿易(現タイトー)から発売されました。
ガラス張りの箱型筐体を上から操作するという構造は、今日のクレーンゲームの原型そのものであり、多くの日本人に夢と楽しさを与えました。しかしその存在は時代とともに徐々に姿を消し、現存する実機は見つかっていません。
誕生から60年目の2025年、株式会社タイトーが「#クラウン602を探せ!」と題した全国大捜索プロジェクトを開始。日本全国から実機の所在情報や思い出エピソードを募集するという異例の取り組みが、現在大きな注目を集めています。
クラウン602――クレーンゲーム史に残る歴史的機械
- 1965年に太東貿易(現タイトー)が発売(諸説あり)。
- クレーン操作はボタンで行い、狙った景品を爪で掴んで出口に落とす仕組み。
- 筐体(きょうたい)は前面・側面・天板がガラス張りで、中の動きがよく見える設計。
- 景品はキャラメルやタバコなど、当時の暮らしに寄り添った品が中心。
- 高度経済成長期の日本で、だれでも気軽に夢を掴める「新しい娯楽」として急速に広まりました。
クラウン602は「今のクレーンゲーム」の標準構造の源流となった存在であり、タイトー自身が「当社の技術の原点」と位置付けています。しかし、残念ながら現物は長年行方不明のまま。現存が確認できるのは写真資料のみとされ、現在まで実機の明確な所在情報は一切ありませんでした。
「#クラウン602を探せ!」記念すべき60周年の全国大捜索
クラウン602の誕生から60年を記念し、タイトーは2025年10月24日からSNSや専用サイトを通じて「実機」や「思い出エピソード」の情報提供を広く募集しています。
このプロジェクトには、
- 専門家や歴史研究家、そして全国のレトロゲームファンまでが熱い関心を寄せています。
- 1か月間で既に1000件を超える情報提供が集まっており、「昔温泉旅館で見た」「祖父の経営していた商店にあった」など、各地から様々な目撃談や思い出が続々と寄せられています。
- 情報提供者へのささやかな謝礼や、貴重なエピソードの紹介も予定されており、全国的な「発掘プロジェクト」として盛り上がりを見せています。
タイトーは「現物の発見のみならず、記憶や記録も歴史遺産として次世代に伝えたい」と呼びかけており、単なるレアアイテム探しではなく、昭和~平成期の日本のモノづくりや遊び文化全体を振り返る機会としても注目されています。
クラウン602の魅力と文化的背景
クラウン602の特徴は、手動ではなくボタン操作という先進性。
そのインターフェースは現代のプライズゲームの祖先と呼べるものであり、「誰でも直感的に遊べる」工夫が盛り込まれていました。
当時、娯楽の少なかった地方や観光地では、クラウン602が設置されていることで子どもも大人もワクワクしたもの。飲食店や温泉旅館、映画館のロビー、商店街など、全国津々浦々に設置されていたという証言が寄せられています。
さらにクラウン602は、戦後の日本社会の変化、「自分の力で“モノを掴む”という体験が幸福や希望につながる」という時代精神とも強く結びついていました。
「家族で初めてのおでかけの思い出」「少ないお小遣いで景品を手に入れた日」など、数え切れないほど多くのエピソードが今も人々の胸に残っています。
なぜ幻となったのか ― クラウン602現存不明の理由
- 玩具やアミューズメント機器市場は進化のサイクルが早く、旧型機は入れ替えや廃棄が進みやすい状況でした。
- 60年前の製品という古さ、また当時の娯楽機器への保存意識が希薄だった背景もあり、クラウン602もいつしか人々の記憶と記録の中にしか存在しなくなったと思われます。
- メーカー側も詳しい保存記録を残しておらず、いまや資料写真数点と設計図の一部が残存するのみ。
その一方で、「どこかの倉庫や離島の宿、廃業した商店にひっそり残っているのでは」という希望も大きく、発掘プロジェクトは多くの人の知恵と思い出を頼りに進行中です。
今につながるプライズ文化の原点 ― クラウン602の意義
現代、ゲームセンターやアミューズメント施設で目にするクレーンゲームは、年間出荷台数数万台、景品数十億個以上の巨大市場を形成し、子どもから大人まで幅広い世代に愛されています。
その始まりが「クラウン602」だったという歴史認識は、日本の娯楽史において極めて大きな意義を持っています。
タイトーは「クラウン602を技術の原点とし、これからも魅力ある遊び文化を創造し続けたい」とし、クレーンゲーム60周年の節目を「日本のものづくり精神と遊び心の継承」と位置づけています。
未来へのバトン――クラウン602が残したもの、これからの展望
クラウン602の捜索は、実機そのものの発見がゴールではありません。
「遊び」や「ものづくり」に込めた先人の情熱、そして家族や地域で培われたつながり、その全てを思い出し、現代に伝え直す大切な時間でもあります。
ゆえにタイトーは、今後も情報提供窓口の拡大や全国への広報活動を精力的に行い、多くの人とともに歴史を再発見していく方針です。
- 昭和・平成・令和を生きた全ての世代が、それぞれの「クラウン602」にまつわる記憶を共有できるきっかけ作り。
- 本プロジェクトを通じて、日本のユニークなアミューズメント文化を世界に誇れる財産として位置付ける狙いも明示されています。
- 将来的には集まったエピソードや写真、資料を編纂し、特設展示やウェブアーカイブとして公開予定という目標も掲げられています。
この取り組みは、今後さらに盛り上がりを見せることは間違いありません。
「クラウン602」を知る全ての方の参加と応援によって、「遊びのルーツ」を世の中に広く伝える歴史的な挑戦となりそうです。
情報提供の方法 ― だれでも参加可能!
- 「#クラウン602を探せ!」のハッシュタグを付けてSNSで投稿
- タイトー公式ホームページ、または特設サイトの情報提供フォームから送信
- 写真・資料だけでなく、「思い出エピソード」や「目撃情報」、昔撮影した家族写真の中の背景情報など、どんな小さなことでも歓迎
- 情報の一部は今後「クラウン602」特設展示やウェブで紹介される予定
ガラクタだと思った物の中に、歴史的なヒントが隠れているかもしれません。
これを機に、家族や友人と昭和・平成時代のおもちゃ話に花を咲かせてみてはいかがでしょうか。
おわりに ― 幻のクレーンゲームに託す“夢”
クレーンゲームにワクワクした日々、初めて手にした小さな景品の重み――。
それは世代や地域を問わず、多くの日本人に共通する思い出なのかもしれません。
「クラウン602」は、そんな思い出の原点であり、日本の遊び文化の象徴でもあります。
たとえ現物が見つからなくても、その“存在感”はこれからも人々の想像力と記憶の中で輝き続けることでしょう。
あなたの知っている「クラウン602」に関する情報も、もしかしたら日本のゲーム文化の歴史をつなぐ大きな一歩になるかもしれません。




