「重点支援地方交付金」で広がる物価高対策 静岡県と函館市の動きを詳しく解説
物価の高騰が長引くなか、国が用意した「重点支援地方交付金」を活用して、各自治体が独自の支援策を打ち出しています。
今回は、その中でも静岡県と函館市の最新の動きを中心に、どんな対策が進もうとしているのか、できるだけわかりやすくお伝えします。
「重点支援地方交付金」とは?
まずはキーワードになっている「重点支援地方交付金」について簡単に整理しておきましょう。
- 国が物価高騰などへの対策として、地方自治体に配分する交付金の一種
- エネルギー価格や原材料価格の高騰で苦しむ家計・事業者・医療機関・福祉施設などを支えることが目的
- 「重点支援」という名前のとおり、地域の実情に応じて重点的に支援メニューを組み立てられるのが特徴
この交付金をベースに、各自治体が補正予算を組み、独自の支援策を打ち出しているのが現在の流れです。
静岡県:医療機関・中小企業支援に60億円を計上
まず注目されているのが、静岡県がまとめた補正予算案です。
県は、物価高騰の影響が大きい医療機関や中小企業を支えるために、約60億円の支援費を盛り込んだ補正予算案を議会に提出しました。
新型コロナや相次ぐ災害、そして今回の物価高と、医療機関や地域の事業者には大きな負担が重なっています。
その中で、
- 電気代やガス代などエネルギーコストの上昇
- 医薬品・医療材料、原材料、仕入れ価格などの物価高
- 人件費や賃上げへの対応
といった負担が増えており、経営を圧迫している現状があります。
静岡県が今回の補正予算案に60億円を計上したのは、こうした現場の声を踏まえ、医療提供体制を守ること、そして地域経済を支える中小企業の事業継続を下支えすることを狙いとしたものです。
静岡県:12月補正で170億円を追加、国の物価高対策を受けて
静岡県は、この60億円の支援策に加え、12月補正予算案として総額170億円規模の追加を行う方針も示しています。
背景には、国が打ち出した物価高騰対策があり、それを受けて県としても、家計や地域経済を守るための施策を広げる形です。
県が公表している資料などによると、静岡県の令和7年度12月補正予算案は、一般会計の補正額がおよそ75億円規模とされており、職員の賃上げや台風被災者支援なども含まれています[静岡県議会提出議案資料より]。
一方、国の交付金などを活用した物価高対策として、約170億円規模の追加措置が打ち出される形で報じられています。
この中には、
- 先ほどの医療機関・中小企業向け60億円の支援
- 子育て世帯や低所得世帯への生活支援
- エネルギー価格高騰への対策
- 農林水産業者などへの支援
などが含まれるとされ、県全体で幅広い分野に対して物価高対策を行う構えです。
静岡県は、これらの補正予算案を12月定例会に提出し、議会での審議を経て実施に移す流れとなっています。
物価高が長期化しているだけに、どれだけ迅速に、そして現場の実情に合った形で支援が届くかが大きなポイントとなります。
函館市:物価高対策の交付金は25億円を見込む
一方、北海道の函館市でも、国の物価高対策の交付金を活用した取り組みが進められています。
報道によると、函館市は物価高対策に充てられる交付金として、約25億円を見込んでいるとされています。
この25億円という規模は、函館市のような地方都市にとっては決して小さくない金額であり、今後の使い道が注目されています。
具体的な配分先としては、次のような分野が想定されています。
- 市民生活を直接支える光熱費や生活支援
- 物価高に直面する中小企業・小規模事業者への支援
- 医療・介護・福祉など、地域のケアを支える施設運営の負担軽減
- 子育て家庭やひとり親世帯への支援
現時点では、交付金の詳細な使途が最終決定された段階ではなく、市の予算編成や議会での議論を経て具体化していくことになります。
しかし、25億円という額から見ても、函館市が物価高対策を重点テーマの一つとして位置づけていることは間違いありません。
なぜ今、「重点支援地方交付金」が重要なのか
静岡県と函館市の例からわかるように、「重点支援地方交付金」は、単なる一時的な補助金ではなく、物価高という全国的な課題に対して、地域ごとの実情に合わせて対応するための重要な財源になっています。
その重要性には、次のようなポイントがあります。
- 地域ごとの事情に合わせたメニューを作れる柔軟性
- 医療・福祉・教育・中小企業など、幅広い分野に使える汎用性
- 国の対策を受けつつも、自治体の判断で重点配分ができること
例えば、同じ物価高といっても、
- 観光業が中心の地域
- 製造業の比重が高い地域
- 農林水産業が基幹産業の地域
では、困っている内容も必要な支援も大きく変わります。
「重点支援地方交付金」は、こうした地域の違いを踏まえたきめ細かな対策を取りやすくする枠組みと言えます。
生活者・事業者はどう関わっていけるか
では、私たち一人ひとりや、中小企業の経営者としては、この動きをどう受け止めればよいのでしょうか。
ポイントは、次の2つです。
- 自治体の情報をこまめにチェックすること
- 気になる支援策があれば、早めに相談・申請すること
物価高対策の多くは、申請が必要なものや、実施期間・申請期間が限られているものが少なくありません。
せっかくの支援策があっても、「気づいたときには期限が過ぎていた」というケースも実際に起きがちです。
静岡県や函館市のように、補正予算案が決まり次第、県や市のホームページ、広報紙、地元メディアなどで詳しい案内が出てくることが多いので、
- 自治体の公式サイト
- 商工会議所・商工会
- 業界団体
- 社会福祉協議会など
を通じて、情報をこまめに確認することが大切です。
まとめ:静岡県と函館市の動きは全国的な流れの一部
今回ご紹介した静岡県の60億円規模の医療機関・中小企業支援や、12月補正での170億円追加、そして函館市が物価高対策として25億円の交付金を見込むというニュースは、いずれも「重点支援地方交付金」を活用した地域の物価高対策の一例です。
今後も、全国のさまざまな自治体で、
- 電気・ガス料金の負担軽減
- 生活困窮者・子育て家庭への支援
- 中小企業・小規模事業者への補助制度
- 医療・福祉・教育現場への支援
など、地域の実情に合わせた取り組みが続いていくとみられます。
物価高がいつまで続くのか不透明な中で、こうした国と地方が連携した支援策をどう活用していくかが、私たちの暮らしと地域経済を支える大きなカギになっています。


