コロプラ、黒字転換とリストラ同時発表――揺れるエンタメ企業の転換点

株式会社コロプラは2025年11月5日、2025年9月期の決算とともに大規模なリストラ「キャリア転進支援制度」を正式発表しました。2024年9月期の厳しい赤字から一転、2025年9月期は営業利益および経常利益での黒字浮上を果たした一方、70名規模の人員削減を行う決断となっています。今期の業績見通しは「非開示」とされており、その背景や今後の展開について各角度から詳しく解説します。

2025年9月期決算:黒字転換までの軌跡

  • 売上高:259億3300万円(前期比0.2%減)
  • 営業利益:10億200万円(前期12億800万円の赤字から大きく改善)
  • 経常利益:18億500万円(前期9億4700万円の赤字)
  • 最終損益:3億600万円の赤字(前期18億6600万円の赤字から赤字幅大幅縮小)

営業利益・経常利益の黒字転換の背景には、「株式売却による収益増」「グループ全体でのコスト最適化」「為替差益の発生」があります。本業(エンターテインメント事業)ではまだ厳しさが残るものの、投資的な側面や経費削減の成果で全体として好転を示しました。しかし、投資有価証券評価損(保有する株などの価値見直しによる損失)が最終損益を圧迫し、完全な黒字化には至っていません。

エンターテインメント事業の現状と課題

  • エンターテインメント事業の売上:232億6400万円(前年同期比4.9%減)
  • 同事業 営業損益:1億8000万円の赤字(前年同期13億200万円の赤字)

コアのエンターテインメント事業では、新作タイトルのヒット創出が年々困難となり、競争環境も厳しさを増しています。主力タイトルの配信期間が長期に及ぶものの、新しい収益源の確保が大きな課題です。

キャリア転進支援制度による人員削減の詳細

今期、コロプラがキャリア転進支援制度と位置付けて発表したリストラは、今後の企業戦略・体制見直しの一環です。その具体的内容は以下の通りです。

  • 対象者:26歳以上の正社員(マネージャー以上を除く)
  • 募集人数:70名程度
  • 募集期間:2025年11月24日~12月12日(予定)
  • 退職日:2026年1月31日予定
  • 優遇措置:会社都合退職扱い、特別退職金の支給、希望者には再就職支援を提供
  • 特別退職金等費用:約2億1000万円(2026年9月期1Qで特別損失として計上予定)

この措置により発生する費用は、応募者確定後に会社から正式に公表予定です。また、今回の支援制度は純粋な「希望退職制度」としており、対象者の自発的なキャリア再設計を支援する趣旨が強調されています。

なぜ今リストラなのか? 経営の現状と中長期戦略の狙い

コロプラによると、モバイルゲーム分野を巡る市場環境の厳格化・競争激化が大きな要因であり、新旧タイトル問わずヒットの難しさが年々増しています。さらに、グローバルなエンターテインメント需要や消費者嗜好の短期的変動、開発・運用コストの高騰など、将来の成長シナリオ構築が経営課題となっています。

そのため、コロプラは人材と事業ポートフォリオ双方の抜本的見直しに着手し、今後求められるスキルや働き方にふさわしい人材構成を目指しています。加えて、「社員のキャリア自律」を経営の一環として掲げ、社外で新たな挑戦を後押しする姿勢を取っています。

コロプラの今後の展望――業績見通しは非開示

2026年9月期の通期業績予想についてコロプラは「非開示」としており、その理由については「足元の業績動向や外部環境の変化、内部改革の進捗を慎重に見極めるため」と述べています。企業が業績予想を非開示とする場合、経済環境や事業構造に大きな変動が見込まれることが多く、成長・再建双方の課題に向き合っていることが窺えます。

コロプラの会社概要と沿革

  • 会社名:株式会社コロプラ
  • 設立:2008年10月
  • 代表者:代表取締役社長 宮本 貴志
  • 決算期:9月
  • 上場区分:東証プライム
  • 証券コード:3668
  • 直近業績(2024年9月期):売上高259億7500万円、営業損益12億800万円の赤字、経常損益9億4700万円の赤字、最終損益18億6600万円の赤字

市場関係者・従業員・ユーザーへの影響

コロプラは「黒字浮上」と「リストラ」を同時に発表したことで、投資家や従業員、ゲームユーザーなど多様な関係者にインパクトを与えました。特に、黒字転換自体は経営再建の兆しと期待される一方、人員削減は短期的な痛みを伴います。長期的にみれば、体制のスリム化と人材再配置によって、組織の健全化や競争力向上を図ろうという狙いが明確です。

従業員に対しては、再就職支援や特別退職金を設けることで、会社都合ながらも円滑なキャリア移行を後押ししています。株主や市場関係者には、業績改善策と並行した人員最適化の意思を強く訴える内容となりました。

まとめ――コロプラ、再生の真価が問われるフェーズへ

今回の決算発表およびリストラ策は、コロプラがエンタメ業界の荒波の中で生き残り、今後の成長を目指して変革を続ける過程にあることを象徴しています。事業・人材・財務の三位一体の改革を目指すコロプラが、どのようにユーザーに新たなエンターテインメント体験を届けていくのか、注目が集まります。

いままさに「企業としての転機」を迎えているコロプラ。経営改革と体制再編の先に、どのような成長戦略が描かれるのか、今後の動向から目が離せません。

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