砂上の「1兆円企業」・メタプラネット株価暴落の真実――熱狂と代償を追う

はじめに

2025年夏、日本株投資家や金融関係者の話題の中心にいたメタプラネット
「ビットコイン戦略」で時価総額は一時1兆円を突破し、その急騰ぶりはまるでバブルの再来とまで言われました。
ところが熱狂は持続せず、株価はわずか数カ月で3分の1以下に暴落。「砂上の1兆円企業」の象徴として、個人投資家には重い教訓を残しました。

  • 急騰する株価に沸く個人投資家とSNS世論
  • なぜメタプラネットはこれほどまでに上がり、そして落ちたのか
  • 熱狂の裏で何が見落とされたのか

メタプラネットとは?企業概要とビットコイン戦略

メタプラネットは2023年2月に現社名へと変更し、近年は積極的にビットコイン(BTC)への巨額投資を進めてきました。
もともとは低位株だったが、ビットコイン購入計画が2024年4月に発表されるや否や、株価は20円台から急騰を開始。
同年7月には100円を超え、更に同月中に300円近くまで暴騰。しかし、その勢いのまま7月末には80円台まで急落し、ボラティリティの高さが注目を集めました。
2025年にはビットコイン相場の好調も追い風となり、株価は再度上昇し1,500円付近まで到達します。

ビットコイン戦略と株価推移

  • 2024年初頭:20円台の水準で横ばい
  • 2024年4月:ビットコイン購入発表で株価急騰、100円を突破
  • 2024年7月:300円付近まで暴騰後、80円台まで急落
  • 2025年2月:一時684円台の高値を記録
  • 2025年6-7月:最高値1,500円台(6月19日には1,930円の年初来高値)
  • 2025年9月:激しい調整局面、530円(9月18日終値)まで下落、その後も不安定な推移

この1年で、わずか20円台から一時2,000円弱へ、そして短期間で600円割れという、「乱高下」の相場でした。

なぜ急騰し、なぜ暴落したのか――背景を読み解く

株価上昇の主因:「企業価値=ビットコイン」の熱狂

メタプラネットの急騰を支えたのは、個人投資家の「ビットコイン=これからの富」という熱狂的期待です。
2024年春以降、SNSを通じ新NISA口座で怒涛の買い注文が入り、出来高が急拡大。
企業がビットコインを大量に保有すると、「日本版マイクロストラテジー」と賞され、単なる事業会社から「仮想通貨のETF的存在」へと変質していきました。

暴落を誘発した3つの要因

  1. 1. ビットコイン相場急変動
    メタプラネットの株価はビットコイン市況と高い連動性があります。ビットコイン相場が調整に入ると、株価もそれにつれて急落しました。
  2. 2. 公募増資(新株発行)への警戒感
    2025年、同社は最大5億5500万株の新株発行を計画。
    これにより「株式価値の希薄化」を危惧する声が拡大、多くの投資家が売りに転じる結果となりました。
  3. 3. 業績・財務への将来的懸念と過熱感
    ビットコイン戦略による評価益は得られても、本業の収益構造は大きく改善されておらず、「本当に1兆円の価値があるのか?」という根本的な疑問が高まっていました。
    PBR(株価純資産倍率)の割高感や、税制改正リスクも嫌気され始め、見かけ上の価値と実態の乖離が急拡大したのです。

「熱狂の代償」――個人投資家の現実

株価が上がり続ける中で、多くの個人投資家が新NISAなどを通じて資金を投入。
2025年夏には「新NISA3カ月で買われた日本株30」の7位にランキング。

  • 普段株式市場に縁のなかった新規参加者も多く参入
  • SNSでは「●●円突破!」と熱気が広がる一方、一転して急落後は嘆きや自省の声も
  • 「高値掴み」の損失を抱える層が急速に増加

一部の予想サイトやSNSでは「売り予想数上昇」銘柄として取り上げられ、個人の間でも警戒感が徐々に強まっていきました。

時価総額1兆円は「幻想」だったのか――ファンダメンタルの再評価

株価が一時1,900円台をつけた時点で時価総額は1兆円強
しかしビットコイン価格と企業価値を直線的に結び付けるロジックは持続性に欠け、ブームが去れば急落する危うさも同時に露呈しました。
9月18日には終値530円と高値の3分の1以下になり、企業価値も一気に6000億円台へ萎みました。

  • 短期目線のマネーが一斉に引き上げ、市場流動性も枯渇
  • 「バブル的熱狂」の後遺症で中長期筋の信用も低下
  • 本質的な収益力の再点検が迫られることに

それでも買いが続く「日本版マイクロストラテジー」の矜持

9月8日には新たに136BTC(22億円分)の追加購入も発表。
これでビットコイン保有量20,136BTC超、総購入額3,000億円超と、世界的にも突出したポジションを持ち続けています。
市場ではこうした継続的なビットコイン戦略が「リスク」と「価値魅力」の両面で評価され、株価が急落した直後にも一時的な反発を見せる場面もあるのです。

株価乱高下の“舞台裏”――市場心理と制度変更の影響

  • 新NISAやSNS情報で注文が集中、一時的な流動性不足で値が飛びやすい体質
  • 新株発行計画で株価希薄化リスクが顕在化
  • 税制改正リスク(仮想通貨課税強化など)への不透明感
  • PBR・PERといったバリュエーション指標の「過熱警告」

本来、株式投資の本質は「企業の稼ぐ力」です。
しかし、メタプラネットについては「資産としてのビットコイン」による「会社=トレジャリー」的側面が色濃く、ファンダメンタルとは別次元の売買が繰り広げられていました。

金融機関・投資家は今後どう向き合うべきか

2025年9月現在、ビットコイン相場は回復基調にあるものの、メタプラネット株は依然として乱高下が続いています。
メガバンクや大手証券会社は冷静にリスクを分析しながら、個人投資家には「短期の値動き」ではなく「中長期的な企業価値」への注目を呼び掛けています。

  • 短期資金の集中による「過熱」と「冷却」サイクルの再来リスク
  • ビットコイン価格が安定しない限り企業価値も大きく揺れる構造
  • 本業の持続的な収益拡大が市場から強く求められる

個人投資家への教訓――「熱狂」の代償から学ぶこと

「すぐ儲かる」「上がる株を一斉に買う」という熱気は、市場に必ずしも良い結果をもたらしません。
メタプラネットの経験は、リスクコントロールとポジション管理の重要性、さらには本質的な投資判断の必要性を再認識させました。

  • 投資判断は「話題」や「熱狂」だけでなく、企業の本質的強さを冷静に見極める
  • 過度な集中投資は反転時の損失リスクが極端に高まる
  • SNSやインフルエンサー発信の情報には慎重な姿勢を持つべき

まとめ

メタプラネット株の乱高下は、現代金融市場における「バブルとクラッシュ」「熱狂と冷却」の縮図です。
「砂上の1兆円企業」とは決して他人事ではなく、投資家一人ひとりへの大きな警鐘と言えるでしょう。
今後も変動リスクとともに、冷静な視点で企業の本質的価値に目を向けることが、市場全体の健全な発展につながります。

参考元