富士フイルムビジネスイノベーション製複合機に発見された脆弱性とその影響

2025年8月13日、富士フイルムビジネスイノベーション製の複合機(MFP)に深刻なセキュリティ脆弱性が発見されたというニュースが社会に大きな波紋を広げています。本記事では、この脆弱性の内容や影響範囲、さらにユーザー・管理者が取るべき対策について、分かりやすく解説します。

境界外書き込み(Out-of-bounds Write)とは?

今回発見された脆弱性は、境界外書き込み(CWE-787)と呼ばれるもので、メモリの管理に起因する不具合の一つです。これは、プログラムが許された範囲外のメモリ領域にデータを書き込むことで、予期しない挙動やサービスのクラッシュ(DoS: denial of service)などに繋がるものです。
本件では、CVE-2025-48499が割り当てられています。

  • 発見日:2025年8月4日
  • 影響製品:富士フイルムビジネスイノベーション製複合機(例:DocuPrint CP225 w 01.23など)
  • 脆弱性評価値:CVSS 4.0 基本値 6.9(CVSS 3.1 基本値 5.3)

この脆弱性により、細工されたIPP(Internet Printing Protocol)またはLPD(Line Printer Daemon)パケットを複合機が処理した場合、デバイスがサービス運用妨害(DoS)状態、すなわち動作不能な状態になる可能性があります。復旧には製品の手動リセットが必要となります。

第三者による報告と技術的な背景

この脆弱性は、中国の北航大学(Beihang University)サイバーサイエンス&テクノロジースクールの研究者らが報告しました。報告はIPA(情報処理推進機構)およびJPCERTコーディネーションセンターによって「Japan Vulnerability Notes(JVN)」で公表されています。

「境界外書き込み」は、特定の条件(ここでは悪意のあるネットワークパケットを受信した場合)でのみ発生するとされています。よって、脆弱性を悪用するには、攻撃者が複合機のあるネットワークにアクセスできることが前提となります。ただし、プリンターや複合機は多くの場合企業ネットワークの中心に位置し、ファイル共有やスキャン送信など様々な情報が行き交うため、影響は限定的とは言い切れません。

どれくらいの機種が影響を受けるか

Rapid7によると、この種の脆弱性は富士フイルムだけでなく、他メーカーの複合機やプリンター、ラベル機器にも広範囲で影響することが明らかになっています。該当する富士フイルムの複合機は46機種、加えて他社を含めると4社・742機種にのぼる大規模なものです。

脆弱性が悪用された場合のリスク

この脆弱性が悪用された場合、認証されていない攻撃者が特製のデータパケットを送信するだけで、ターゲットの複合機を継続的にクラッシュさせることが可能です。その結果、重要な業務で使うプリンターやスキャナー機能が停止し、業務の持続的な妨害となるリスクがあります。

関連するセキュリティ勧告と利用者への対応策

IPA並びにJPCERT/CCは、下記のような対応を推奨しています。

  • ファームウェアやソフトウェアのアップデート:開発元が提供する修正済みファイルを必ず適用する。
  • ネットワークのセグメント管理:印刷機能への外部ネットワークからの不要なアクセスを遮断する。
  • 不要なプリントプロトコル(IPP/LPD)の無効化:必要ない場合は無効にする。
  • 注意喚起・教育:複合機担当者へ、最新脆弱性情報の周知徹底を行う。

特に企業や大規模オフィスでは、機密文書の印刷やスキャンなど、複合機が業務の重要なインフラとなっており、ダウンタイムや情報漏えいにつながるセキュリティ事故を未然に防ぐ対策が急務です。

富士フイルムによる最新の光学系新特許出願

セキュリティ課題が注目される一方で、富士フイルムは技術開発分野でも革新的な動きを見せています。2025年8月、「6mm F1.8」「10.5mm F3.5」光学系に関する新たな特許が出願されました。

光学系特許の概要

  • 特許出願対象:6mm F1.8および10.5mm F3.5光学系
  • 用途想定:小型カメラ、監視用途、高性能センサー搭載機など
  • 主な技術的ポイント:コンパクトなフォームと高い解像力、低歪み設計が特徴

この新しいレンズ設計は、これまで以上に高い明るさや広角化、小型化を両立しつつ、近年急速に進化する映像機器市場の要求に応えるために研究開発されたものとみられます。監視カメラや組み込み用途などにも応用が期待されています。

特許技術から読み取れる今後の富士フイルムの方向性

富士フイルムは、従来の写真フィルムだけでなく、現在は医療機器・映像ソリューション・情報通信と多角的に事業展開しています。今回のレンズ特許は、その研究開発力が生きており、今後も様々な分野で最先端技術を生み出す基盤となるでしょう。また、社会のIoT化、セキュリティ需要の拡大、人工知能(AI)画像認識の進展などを背景に、こうした新光学技術の重要性はますます高まっています。

まとめと今後の動向

今回発表された複合機の脆弱性は、日々高度化・複雑化するITインフラ運用に警鐘を鳴らす重要な事例となりました。オフィス機器という一見地味に思われがちな分野でも、サイバー攻撃の対象となるリスクと、その影響の甚大さが高まっていることを再認識させられます。

同時に、富士フイルムの技術開発が持つ今後の社会的価値も、光学系特許出願のニュースから見て取れます。利用者・管理者・開発者それぞれが最新動向を注視し、柔軟かつ迅速に対応していくことが、今後の安心・安全で便利な社会形成の鍵となるでしょう。

利用者の皆様へのアドバイス

  • ご利用中の複合機が対象製品であるか公式情報で確認しましょう。
  • メーカー公式の最新ファームウェアを必ず適用し、定期点検を怠らないようにしましょう。
  • サイバーセキュリティを”自分ごと”として考え、日頃から対策意識を高く持ちましょう。

これからも富士フイルムによる安全・安心な製品提供と、ユーザーによる継続的なメンテナンス・運用の両面が、健全なIT社会の維持・発展に不可欠です。

参考情報

  • Japan Vulnerability Notes(JVN)による脆弱性勧告
  • Rapid7等による複数機種への脆弱性調査結果
  • 富士フイルム製品に関する最新技術情報

参考元