びわ湖放送が伝える「最低賃金」大幅引き上げの波紋――滋賀・鳥取・群馬で何が起きているのか
はじめに
2025年8月、全国で最低賃金の大幅な引き上げが話題となっています。滋賀県を拠点とするびわ湖放送が今注目しているのは、最低賃金の見直しがもたらす社会や地域経済への影響です。
本記事では、滋賀県をはじめとした各地の動向や経済界、労働者の声、専門家の見方を幅広く紹介し、最低賃金引き上げが私たちの暮らしや地域にどんな影響を及ぼすのか、やさしい言葉で丁寧に解説します。
最低賃金の改定、いま何が起きているのか
2025年8月4日、中央最低賃金審議会は全国の最低賃金改定の目安を発表しました。これにより、各都道府県ごとに引き上げ幅が示され、10月から新しい最低賃金が適用される見通しとなっています。滋賀県では時給が+63円引き上げられ、1,080円となります。上昇率は6.0%と全国的にも高い水準です。鳥取県では引き上げ幅が+73円で過去最大のアップとなり、最低賃金が1,030円になります。群馬県でも大きな改定となっています。
- 滋賀県: 1,017円 → 1,080円(+63円)
- 鳥取県: 957円 → 1,030円(+73円、過去最大)
- 群馬県: 詳細な新時給は記載ありませんが、全国でも大幅な引き上げ
賃上げに期待と不安が交錯――社会や経済界の声
最低賃金の引き上げは、「賃金が上がることで生活が楽になる」「地域格差が縮まる」といった歓迎の声がある一方、経営者や中小企業働く人たちからは新たな悩みや課題も聞かれます。
- 労働団体: 「生活水準向上のために、さらなる引き上げを」と評価。働く人の賃金向上は地域全体の活力アップにもつながる。
- 中小企業経営者: 「人件費負担が大きすぎて、雇用維持や経営が困難に」「価格転嫁も難しい」と困惑する声が多数。
- 地方自治体・住民: 若者の県外流出が止まる期待や、バイト・パートの収入増を喜ぶ声も。
それぞれの立場で期待と不安が入り交じる状況です。特にびわ湖放送の取材では、地場の製造業やサービス業など影響が広範囲にわたることがわかりました。
「大幅引き上げ」の“3つの副作用”とは?
びわ湖放送では、今回の大幅賃上げがもたらす「3つの副作用」として、以下の問題が指摘されています。
- 労働強化: 企業が人件費上昇のために、人を減らして1人あたりの仕事量を増やす事情も。負担感やワークライフバランス悪化を訴える人が増えています。
- 中小企業・個人商店の倒産増加: 十分な売上増や価格転嫁が見込めず、人件費増加についていけない小さな会社や店舗が経営難となる例が目立ち始めています。
- 若年・未経験者の雇用機会減少: 賃金負担を抑えるため、求人が減ったり、経験豊富な人材のみを採用する傾向になっているとの声もあります。本来助けたいはずの層の雇用機会が狭まる副作用も
このように「誰も得しない」状況を懸念する議論が続いています。特に地方では、観光・飲食・福祉など、もともと収益構造が厳しい業界で影響が大きいとされています。
地域別――滋賀・鳥取・群馬の現場では
滋賀県の現状と反応
びわ湖放送の報道によれば、滋賀県でも2025年10月から最低賃金が「1,080円」に上昇します。製造業・小売業・介護事業所と、どの現場でも「現実的にどうやって人件費を工面すべきか」模索が続いています。滋賀県は「Bランク」に位置付けられており、京都や大阪の大都市圏と異なり、中小規模の事業者が多いのが特徴です。
- 小規模企業から「値上げ難しく経営圧迫」の切実な声
- 一部の企業では、パートの雇用削減や新規採用見送りといった動きも
- 一方、求職者やアルバイトは「収入増」を前向きに評価する傾向
びわ湖放送スタッフも「地域経済や文化を支える仕事が続けられるよう何ができるか」率直な声を取材しています。
鳥取県、驚きの「過去最大」賃上げ
鳥取県では「+73円」という過去例のない大きな引き上げが実施され、「県市中小企業への打撃を危惧する」と地元メディアは伝えています。行政も「企業支援策の見直しや人材確保のあり方などを早急に検討」と強調しました。
群馬県――経済界の反発と労働団体の高評価
群馬県では「経済界」「労働界」で意見が真っ二つに割れました。労働側は「賃上げ幅最大は評価すべき」と大きく歓迎。これに対し、経営側からは「一気の負担増は現場感覚とかけ離れている。今後の雇用や会社存続への不安がつきまとう」との見解です。
最低賃金アップ、他にも出てくる課題
- 価格転嫁の難しさ: 商品やサービスの値上げがすんなりと受け入れられるとは限りません。消費者の購買意欲に影響し、物価高と賃金上昇のバランスが大きな課題になっています。
- 非正規雇用への影響: 時給が底上げされても、契約更新の抑制や働ける時間の制限、新しい求人停止など、「見えにくい副作用」も。生活保護等、他のセーフティネットにも影響しそうです。
- 「地域間格差」解消の道筋は: 都市部と地方部の最低賃金差は、今回の改定でやや縮まります。ただし、県境をまたいで通勤する人や産業特性による「実質生活費」の差など、依然として課題も残ります。
びわ湖放送が考える「今後」のポイント
びわ湖放送は、今後も最低賃金の議論を社会にわかりやすく伝えることを使命と考えています。特に中小事業者の現場や、働く人それぞれの悩みにも寄り添い、地域全体がより良い方向へ歩めるよう、深く丁寧な報道を継続する方針です。
- 最低賃金の変更は、単に数字だけの議論ではなく「生活」「雇用」「地域経済」へ広く影響する重要テーマ
- 中小企業や働く人、子育て世代など多様な立場の声を丁寧にすくいあげる意義
- 「誰も得しない」状況とならぬよう、社会的な配慮や制度対応の必要性
まとめ
2025年、びわ湖放送が取材する滋賀県やその周辺地域では、最低賃金引き上げの足音が確かに近づいています。賃上げは長年待望された面もある一方、地域経済や企業の実情をふまえた複合的な課題も山積みです。「大幅引き上げの3つの副作用」をはじめ、今後の動向を注視し、現場の声に寄り添った報道を届けていきます。
びわ湖放送は引き続き、皆さんの生活や働き方がより良いものとなるよう、社会的な対話の橋渡し役としての責任を果たしてまいります。