ビットコイン急落、記録的高値から一転-年初来の上昇分がほぼ消失
暗号資産市場は11月に入り、大きな転換期を迎えています。かつて126,000ドルを超える史上最高値を更新したビットコインが、わずか数週間で約30%も下落し、90,000ドルを割り込む水準まで値を下げてしまいました。今年一年で積み重ねてきた上昇分がほぼ帳消しになる中、投資家の間では不安と混乱が広がっています。
11月中旬の1週間で、ビットコインは約10%という大きな下落を記録しました。ほぼ毎日が安値を更新し続け、一時は88,000ドル台まで値を下げています。この急速な値下がりの背景には、複数の要因が絡み合っています。
なぜ今、ビットコインは下落し続けているのか
ビットコイン価格の下落要因を一つに特定することは難しく、様々な要因が複合的に作用しています。まず目立つのが、これまでビットコイン市場を支えてきたトランプ政権への支持率が低下していることです。企業がビットコインを積み増す動きも一時的に停止し、マーケットの成長期待が減速しています。
さらに深刻なのが、取引所へのビットコイン流入が加速しているという現象です。バイナンス取引所のデータを見ると、10月には1日あたり6,000BTCを超える流入が記録され、先月の54万BTCだった準備金が11月には58万2,000BTC以上に増加しました。この動きは、多くの投資者がさらなる下落を懸念してビットコインを売却ポイントに置いている証拠です。
米国の現物ビットコインETFからも大きな資金流出が続いており、11月だけで25億7,000万ドルが流出しています。個人投資家が損切りを余儀なくされる「降伏売り」が増える一方で、機関投資家はこの下落局面を買い増しの好機と判断し、大量にビットコインを買い集めています。
また、米国のAIバブルへの懸念や金利引き下げ観測の後退も、市場全体の重しになっています。暗号資産市場を後押ししてきた経済環境の好転期待が薄れ、より安定的な資産への資金移動が加速しているのです。
市場の需給バランスが大きく変動
オンチェーンデータを分析するアナリストたちは、現在の下落が本当の底ではない可能性を警告しています。通常、市場が底をつく場面では強い需要の流入が見られるはずですが、現在は売り圧力が増大し続ける一方で、買い圧力は極めて弱いままです。買いボリュームなどの需要指標も底を示しておらず、さらなる下落の可能性が懸念されています。
テクニカル分析の観点からも、ビットコインが200日移動平均線を下回り、反発できない状態が続いています。この水準は2023年から始まった上昇相場のトレンド転換を示唆する重要なポイントとなっており、市場参加者の間で警戒感が高まっています。
注目されるサポートレベルと下値の目安
現在のビットコイン相場では、複数の重要なサポートレベルが意識されています。最初の注目水準は89,400ドルで、これはオンチェーン活動に基づくすべてのビットコインの実現価値を表す「アクティブ実現価格」です。この水準は過去のサイクルで強いサポートとして機能してきました。
さらに下値を探る場合、注目されるのが82,400ドルという市場の真の平均価格です。この水準は2021年7月に価格が完全に均衡した場所であり、市場の実質的な中心値を示しています。
最悪のシナリオとしては、本格的なベアマーケットが訪れた場合、ビットコインが45,500ドル付近まで下落する可能性も指摘されています。この推定は累積価値日数破壊(CVDD)モデルに基づいており、この指標は歴史的にビットコインの主要な底をかなり正確に予測してきた実績があります。
底値から反発への期待も浮上
ただし、悲観的なシナリオばかりではありません。スタンダードチャータード銀行のストラテジスト分析によると、主要な市場指標がゼロ水準まで下落しており、これは売り手の疲弊を示唆しています。市場参加者の売却圧力が極限に達しつつあることは、底打ちが近づいている可能性を示しているのです。
多くのアナリストは、ビットコインが80,000ドル付近で底をつく可能性が高いと見ています。また、米政府の流動性対策が加速するようなことがあれば、年末に向けた反発が期待できるというのが基本シナリオとなっています。
2017年や2021年のサイクルでは、大きなピークアウトの後も、実際には反発機会があったという歴史的事実も忘れてはなりません。トレジャリー企業(現金をビットコインで保有する企業)も、株主の意向を受けながらも、しばらくは投資方針を継続する可能性が高いと予想されています。
市場の行方を見守る重要な時期
現在のビットコイン市場は、単なる調整局面から本格的なトレンド転換へと向かおうとしている瀬戸際にあります。個人投資家による損切りと機関投資家による買い集めが並行して起こるという、極めて興味深い相場展開になっているのです。
今後、ビットコインが底値を固めて反転するか、さらなる下落を続けるかは、以下の点にかかっています。まずは金融政策の動向、特に12月の利下げ方向性です。また、米政府閉鎖の解除に伴う経済指標の再開も、相場転換のきっかけになる可能性があります。
投資家にとってこれは、市場心理が最も揺らぎやすい時期です。しかし、オンチェーンデータが示す機関投資家の買い行動や、底値付近での価格抵抗性といった要素を踏まえると、年末に向けた反発シナリオへの準備を始める投資家も増えてきています。ビットコインが過去のサイクルの中で何度も絶望からの復活を遂行してきた歴史を踏まえると、現在の局面も転換のチャンスとなる可能性を秘めているのです。



