出雲空港にバードソニック設置、全国トップの鳥衝突率が劇的に改善

航空機の安全を脅かすバードストライク対策に革新的デバイス

島根県出雲市の出雲空港に、航空機のバードストライク(鳥衝突)を低減させる高周波音発射装置「バードソニック」が2025年11月18日に設置されました。この設置により、出雲空港は全国で9番目のバードソニック導入空港となりました。関西国際空港、大阪国際空港(伊丹)、中部国際空港、神戸空港など、主要空港での導入に続く形での設置です。

深刻な鳥衝突問題の現状

出雲空港が直面していたバードストライク問題は、日本国内の空港の中でも特に深刻でした。国土交通省の調査によると、2023年の出雲空港の鳥衝突率は離着陸1万回あたり17.97件で、年間離着陸1万回以上の国内空港37カ所の中で最も高い数値を記録していました。過去5年間の平均でも12.22件と、全国で3位の高さです。

これまで、航空機と野鳥の衝突事故は、乗客の生命や航空機の安全運航に対する大きな脅威となってきました。特に離着陸時の低高度での飛行中に鳥との衝突が発生することが多く、重大事故に至る可能性も存在します。出雲空港の立地特性も問題を複雑にしていました。

バードソニックの仕組みと特性

今回設置されたバードソニックは、山梨県の自動車部品メーカー「T.M.WORKS」によって開発された鳥獣害対策装置です。岡山理科大学研究・社会連携機構の辻維周(まさちか)特担教授が、その効果検証に取り組んでいます。

このデバイスの技術仕様は以下の通りです。1基あたり4個のスピーカーを装着し、各スピーカーの中心から左右約50度方向に音が広がります。ほぼ無風状態での照射距離は約300メートルであり、実際の有効範囲は150メートルから250メートルが目安となっています。この高周波音を発射することで、鳥類に対して不快感を与え、空港付近への接近を防ぐという仕組みです。

ラムサール条約地域での困難な設置作業

出雲空港でのバードソニック設置には、特別な課題がありました。出雲空港の滑走路は宍道湖に突き出した位置にあり、この宍道湖はラムサール条約に基づく国際的に重要な湿地として登録されている地域です。

ラムサール条約は、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全を目的とした国際条約であり、生態系の保護が最優先されます。つまり、バードストライク対策を行いながら同時に、宍道湖の生態系に悪影響を与えないようにする必要があったのです。この相反する要件をどのように両立させるかが、大きな課題となっていました。

辻特担教授は、この困難さについて以下のようにコメントしています。「バードストライク率が極めて高く、しかもラムサール条約締結地である宍道湖に面している出雲空港へのバードソニック設置は、生態系に変化を与えずバードストライク率を下げなければいけないという、非常に困難な作業だった」と述べています。

劇的な効果と今後の期待

最も注目すべき成果は、設置後の実績です。バードソニック設置以降、出雲空港でのバードストライクはほとんど発生していないと報告されています。これは、かつて全国トップクラスの鳥衝突率を記録していた空港における劇的な改善であり、装置の高い有効性を示すものです。

今回の設置場所は、宍道湖に突き出した滑走路東端部です。この時期は主にカモが飛来する季節であり、カモをはじめとする水鳥の行動パターンを考慮した配置となっています。

この成功により、バードソニックは単なる一時的な対策ではなく、長期的で実用的な航空機安全対策として認識されるようになりました。辻特担教授は、「これからもT.M.WORKSと協力しながら空の安全の一翼を担っていきたい」とコメントており、今後の継続的な改善と他空港への展開に向けた前向きな姿勢を示しています。

バードソニック導入空港の拡大

現在、日本国内では複数の主要空港がバードソニックを導入しています。関西国際空港、大阪国際空港(伊丹)、中部国際空港、神戸空港といった商業航空の中核となる空港での導入実績があり、今回の出雲空港で9番目となりました。

バードストライクは、世界中の航空業界における重大な安全課題です。わずかな質量の野鳥であっても、航空機が時速数百キロメートルで飛行している状態での衝突は、エンジンの損傷やフロントガラスの破損など、重大なトラブルを引き起こす可能性があります。こうした背景から、各空港でのバードストライク対策が急速に進められているのです。

生態系と安全性の両立

バードソニックが革新的である理由の一つは、その環境配慮型のアプローチです。従来の野鳥対策には、捕獲や駆除といった直接的な手段が用いられることもありました。しかし、バードソニックは高周波音を利用して鳥類を追い払うという非致命的な方法であり、野鳥の個体数を減少させることなく、単に空港への接近を防ぐものです。

特にラムサール条約登録地である宍道湖周辺では、この特性が極めて重要です。水鳥の生息地を保全しながら、同時に航空機の安全性を確保するという目標を、バードソニックは実現しているのです。

今後の課題と展望

出雲空港での成功事例は、同様の課題を抱える他の空港への導入可能性を示唆しています。全国には、野鳥の飛来が多い地域に立地する空港が複数存在しており、これらの空港でのバードストライク問題は継続的な課題となっています。

バードソニックの導入により、出雲空港は航空機の安全性と環境保全の両方を実現する先進的な事例として、国内外の注目を集めることになりました。今後、岡山理科大学とT.M.WORKSの協力体制の下で、さらなる技術改善や他空港への展開が期待されています。

出雲空港のバードソニック設置は、単なる一つの空港における対策にとどまりません。それは、人間の経済活動と自然環境の共存を実現する技術的ソリューションとしての価値を持ち、日本の空の安全を向上させる重要なステップとなっているのです。

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