アクセルスペースとWHERE、宇宙技術で挑む「登記と現況が一致しない不動産問題」衛星画像×AIで業界の常識を変える
不動産業界で長年課題となってきた「登記と現況が一致しない問題」。この悩みを、宇宙からの視点とAI技術で解決しようとする先進的なプロジェクトが動き出しました。
2025年9月、〈株式会社アクセルスペース〉と〈株式会社WHERE〉が、不動産登記情報の高精度化に挑む共同のPoC(概念実証)を開始。その概要と実現しようとしている社会、期待される変化について、わかりやすく解説します。
なぜ「登記と現況が一致しない問題」が起こるのか
- 不動産の「登記情報」は土地や建物の所有者、面積、用途などを公的に記録したものですが、現実の土地や建物の状況とはしばしばズレがあります。
- 例えば、土地の分筆や建物の増改築、解体などが登記情報に反映されていなければ「現況」と「登記」が違ってしまうことになります。
- このズレは、売買や相続、公共事業などで誰にどれだけの権利があるのか分かりにくくし、トラブルや取引遅延の原因となっています。
宇宙から「現況」を高速・頻繁に観測する技術とは?
- アクセルスペース社は、小型地球観測衛星「GRUS(グルース)」を自社で開発・運用。地表の状況を広範囲かつ高頻度に撮影できる最先端の衛星画像を提供しています。
- これにより、「どこで・どんな土地や建物の変化が起きているか」を、いつでも宇宙から把握できるようになりました。
- 衛星から取得した画像は、従来の航空写真に比べて更新頻度が高く、気象条件の影響も受けにくいため、最新の現地情報を迅速に手に入れることができます。
AIによる画像解析が変える現地調査と不動産管理
- WHERE社が開発する不動産AIツール『WHERE』は、写真や地図情報をもとに現地の最新情報を「自動的に解析」する技術を備えています。
- 登記情報と現況のズレや変化を、AIが高速・高精度に「差異抽出」。従来は人手と時間をかけて行っていた「現況確認」作業が大きく効率化されます。
- 衛星画像によって「見えなかった」土地や建物の変化(解体・新築・造成・用途変更など)を、リアルタイムかつ客観的に把握できるようになるのです。
高精度化PoC(概念実証)の具体的な内容と狙い
アクセルスペースとWHEREが共同でスタートした今回のPoCは、「見えない不動産を、誰もが見えるようにする」ことを目指した初の大規模な挑戦です。
主なポイントは、以下の3点です。
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1. GRUS衛星による広範囲・高頻度な現況画像の提供
都市開発、都市部の細かな土地利用変化までタイムリーに捉えます。 -
2. 登記情報とリアルな現況情報との自動比較・差異抽出
AIで画像と登記データを付き合わせ、変化やズレを自動認識します。 -
3. 透明性のある不動産管理・権利情報の「見える化」
誰でもいつでも、正確な空間情報を参照できるソリューションを提案します。
代表コメント:「宇宙から地球の不動産市場を変える」
WHEREの代表取締役・阿久津岳生氏は、次のようにコメントしています。
「私たちWHEREは『宇宙から地球の不動産市場を変える』というビジョンを掲げ、不動産業界の情報格差をなくし、誰もが簡単にグローバルに価値ある不動産にアクセスできる社会を目指しています。本PoCを通じて、衛星画像とAIを組み合わせることで、従来は『見えなかった』不動産情報をこれまでにないスピードで可視化し活用できる新しい可能性が拓けます。衛星とAIの力を合わせることで、タイムリーかつスピーディーに地球上の変化を捉え、不動産市場の意思決定がより早く的確に行える時代になります」
登記と現況の自動比較――どんなメリットが生まれる?
- 取引の透明性向上:買い手や売り手、仲介業者にとって、情報の正確性は信頼の土台です。ズレが可視化されることで、トラブルのない取引がしやすくなります。
- 現地調査と業務コストの削減:これまでは多数の現地調査員による作業が欠かせませんでしたが、AIと衛星画像による「半自動化」で、大幅な効率化が期待されます。
- 行政サービスの高度化:自治体や公共機関が土地や家屋の把握を常に最新化しやすく、税金や補助金のミス案内・不正利用も防ぎやすくなります。
- 都市開発・インフラ整備の加速:変化の早い都市環境にもリアルタイムで対応しやすく、開発や老朽化対策もスムーズに企画できます。
衛星画像×AIで社会はどう変わる?今後の展望
- 今回のPoCは始まりに過ぎませんが、「所有と利用の現状把握」を宇宙技術で民主化する第一歩です。
- データの更新速度と精度が上がることで、個人・事業者・行政すべてが「誰でも・いつでも・簡単」に土地や建物の本当の姿を知ることができる社会を目指せます。
- 将来的には、日本だけでなく世界中の不動産情報の透明化や、国境を越えた取引の円滑化にも貢献することが期待されています。
まとめ:宇宙とAIで「不動産の見える化」が加速――安心・安全な取引・まちづくりの実現へ
アクセルスペースとWHEREの技術連携は、「登記と現況が一致しない問題」という不動産業界の根幹課題に、宇宙そしてAIという強大なツールで挑戦しています。
これによって、不動産の透明性が格段に上がり、誰もが安心して取引や相続、開発に関わることのできる新しい時代の扉が、いよいよ開きます。
今後の両社の取り組みに、大きな注目が集まっています。