アストロスケールが拓く宇宙の持続可能性と新たな事業機会 —— 民間・防衛・国際連携の最前線

はじめに:宇宙ごみ除去で世界をリードするアストロスケールの躍進

株式会社アストロスケールホールディングス(以下、アストロスケール)は、東京に拠点を置く宇宙スタートアップ企業です。近年、地球周回軌道上に漂う「スペースデブリ(宇宙ごみ)」の増加が世界的課題となっており、アストロスケールはこの解決を牽引する存在として国内外から注目されています。
2025年10月現在、同社は宇宙ごみの捕獲・除去だけでなく、防衛関連や民間需要に向けた新たなビジネスチャンスを大きく拡大しています。今回は、こうした最前線で活躍するアストロスケールの最新動向と革新的な取り組みについて、わかりやすくご紹介します。

アストロスケール×HEO——同盟国の宇宙監視能力向上へ

アストロスケールは2025年9月、オーストラリアの宇宙テクノロジー企業HEOと、宇宙物体観測・解析の分野で3年間の覚書(MOU)を締結しました。この提携は、防衛や政府衛星の運用が集中する静止軌道(GEO)や静止トランスファー軌道を中心に、同盟国の衛星資産および民間資産を対象とした宇宙空間監視機能の開発を加速させるものです。

  • HEOが得意とするNEI(Non-Earth Imaging)技術は、宇宙空間にある人工衛星やスペースデブリを、地球外から高精度で撮影・分析できます。これにより、常に変化する軌道環境の安全確保やリスク分析が飛躍的に向上します。
  • アストロスケールとのパートナーシップによって、複数の軌道をカバーする国家安全保障・商用衛星の運用がさらに安全かつ効率的になりました。両社は持つ技術や知見、データを共有し、新たなサービス基盤の構築に邁進しています。

HEO共同創設者・CTOのHiranya Jayakody氏は、「アストロスケールと連携することでNEIの能力を最大化し、宇宙の持続可能性への道筋をつけられた」とコメントしています。

拡大する防衛・民間事業の事業機会——戦略的パートナーと『黒字化』への挑戦

同時にアストロスケールは政府・防衛分野でも存在感を強めています
2025年2月には、防衛省から「自律的かつ機動的に動く衛星」のプロトタイプ受注額66億円を獲得し、国家機密衛星や民間重要衛星を守る事業の一翼を担っています。

  • 宇宙空間での防衛力強化の流れを受け、「宇宙領域把握(SDA)衛星」「自律・機動衛星」「防護衛星」の三層体制の整備が進む中、アストロスケールはRPO(近接運用技術)や接近捕獲技術を活かして新サービス提供を進めています。
  • 政府単独の運用から、「民間企業の技術投資と活用」へのシフトが明確にアナウンスされており、国際的連携でアストロスケールのようなグローバルベンチャーへの期待と事業機会は格段に増大しています。

加えて、アストロスケールは黒字化に向けた内部体制や経営努力も継続しています。これまで研究開発や実証試験に多額の資本が必要でしたが、政府受注増や民間連携の進展で黒字化も視野に入りつつあります。これにより、一過性ではなく継続性のある宇宙事業モデルを打ち立てようとしています。

日本企業として世界初の快挙:宇宙ごみを捕獲・除去する最先端プロジェクト

アストロスケールが世界で初めて実現したのは、宇宙空間でデブリ(宇宙ごみ)の捕獲・除去を本格的に手掛けるプロジェクトです。デブリは使われなくなった衛星やロケット片などを指し、現在数十万規模の物体が地球周回軌道上に存在——現役衛星や有人宇宙船の安全運用を脅かしています。

  • アストロスケールは、小型衛星を用いてデブリを実際に捕まえ、軌道離脱まで導く実証成功など、国際宇宙機関や大手衛星オペレータとの連携をさらに拡大させており、地球周回軌道の持続可能性確保に文字通り世界で初めて「実効的なシステム構築」に踏み出した企業となりました。

このプロジェクトは日本企業発の快挙としてGizmodo Japanなど国内外メディアに大きく取り上げられ、「宇宙を次世代へつなぐ基盤づくり」として教育・行政・研究機関からも絶大な期待が寄せられています。

宇宙開発の最前線:民間企業主導の意義と課題

宇宙空間の持続可能性を守ることは、“人類共通の責任”となっています。従来、宇宙政策・安全保障分野は国家主導でしたが、今日では資本力と技術革新を武器とする民間企業の参入が世界的トレンドです。
アストロスケールはその代表格として、次の点で大きな意義を持っています。

  • 革新的技術によるアクセス向上:近接運用(RPO)、非地球観測(NEI)、衛星追跡・捕獲ノウハウ、遠隔監視インフラ
  • グローバル協調:HEOなど海外企業とのオープンパートナーシップや技術連携
  • 政府 × 防衛 × 民間三位一体のビジネス拡大:防衛省や同盟国からの大型受注・協調、政府主導による枠組み見直しと民活推進、国際学会への積極的発信

一方で、「継続的な技術投資」と「宇宙環境監視の法制度整備」、「各国間での競争と協調の両立」といった新たな課題も現実のものとなっています。それでもアストロスケールは、黒字化を目指す実業構想と同時に、産学官をつないだエコシステム形成にも積極的にコミットしています。

おわりに:宇宙の未来を守る日本発イノベーション

アストロスケールの挑戦は、単なる技術革新やビジネス成功にとどまりません。「宇宙ごみのない、安全で誰もが活用できる宇宙」の未来像を掲げ、次世代への責任あるプラットフォーム構築へとまい進しています。

今後は、同盟国各国との連携強化や国際標準づくり、民間市場でのソリューション展開など、さらなる成長の可能性が見込まれています。アストロスケールの足跡は、日本発の“宇宙ベンチャー”の枠を超え、地球規模での未来志向型企業として、20世紀型の産業構造から21世紀型のサステナブル社会への変革を力強くリードしています。

持続可能な宇宙開発・利用時代を切り拓くアストロスケールの今後に、私たちも引き続き大いなる期待を寄せましょう。

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