アステモがSDV時代をリードする新型モーター技術を発表
自動車業界は今、急速な電動化とソフトウェア重視の「SDV(Software Defined Vehicle)」時代に突入しています。この転換期の中、Astemo(アステモ)は、東京ビッグサイトで開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2025」や「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」など国内有数の技術展示会で、最新の電動化ソリューションを披露しました。新開発インホイールモーターおよびレアアース非使用の新型EVモーターは、この業界の大きな注目を集めています。
SDV時代の定義と今求められている自動車技術
- SDV(Software Defined Vehicle)とは、ハードウェアとソフトウェアが協調することで、安全性や利便性・快適性を高め、ユーザーが求める機能やデザイン・操作性を柔軟に進化させられる新しい車両像です。
- 電動化や自動運転、そしてクラウド連携やOTA更新(無線での車両ソフト更新)など、高度なデジタル技術がSDVの核となっています。
- 環境負荷の低減、高度な安全性能、持続可能な資源利用も大きな課題です。
Astemoの新開発インホイールモーター、その仕組みと特徴
Astemoは2025年、従来より小型化・高効率化が求められていたEV用インホイールモーター技術に大きな革新をもたらしました。特に12インチサイズ空冷ダイレクト駆動インホイールモーターは、軽自動車や二輪車など幅広い車種への展開を可能にします。
- 「ロータリーフィン構造」:モーターの回転部全面に放熱フィンを実装し、車輪の回転による空気の流れで効率よく熱処理。これにより、油冷や水冷など複雑な冷却機構が不要になりました。
- 最大出力:13kW(1輪あたり)
- 連続定格出力:5.5kWと同サイズでトップクラス
- 最大トルク:370Nm。4輪搭載で軽自動車EVの必要駆動力を満たします。
- インバーターは車両側搭載式とし、ホイールの薄型化、小型化を実現
- 「易解体集中巻コイル」:廃車時の部品リサイクル性を大幅向上。
- 従来(16インチ/19インチ)は油冷方式だったが、今回は空冷方式で簡素化
この「インホイールモーター」は2030年ごろの本格量産・社会実装を目指し、国の「グリーンイノベーション基金事業」など官民連携でも開発が加速されています。
レアアースを使わない新型EVモーターの開発背景と意義
近年のEV用モーターの多くでは高性能磁石(ネオジムなど)にレアアースを使用しています。しかし「資源リスク」として中国依存度の高さ、そして価格高騰、地政学リスクが深刻さを増しています。
- Astemoはレアアースフリーの新型モーターを開発・展示しました。これは磁石や構造、巻線技術の工夫によってレアアース不使用でも高効率・高出力を実現できるものです。
- この新型モーターは、資源の偏在や全体的な入手リスク、コスト上昇への耐性を持ち、安定したサプライチェーンを構築する上で非常に重要な技術といえます。
- 日本は資源小国であり、脱炭素社会の実現やEV推進には国産技術による資源利用の多様化が不可欠です。
アステモは、多様化するEV市場・SDV時代の要求に対し、持続可能性と環境負荷軽減、さらには地政学リスクの克服という視点で企業価値の強化を図っています。
展示された技術の具体的なポイント
- 軽量・小型インホイールモーターのラインナップ拡充によるEVプラットフォーム設計の新たな可能性(12インチ、16インチ、19インチタイプ)。
- 易解体集中巻コイルによるリサイクル性の向上。従来型のヘアピンコイルと比べ、分解や再利用が簡便で環境に優しい設計。
- 脱レアアース化により調達リスクの軽減。EV普及に伴う国際市場・資源リスクに対応しやすい体制構築。
- クラウド連携・高性能インバータ技術(PHEVインバータ)の紹介もあり、SDV基盤となるデジタル・電動化技術の総合提案。
技術発展がもたらす業界・社会へのインパクト
AstemoのインホイールモーターとレアアースフリーEVモーターが業界にもたらすインパクトは非常に大きいです。
- 車両設計の自由度拡大:ホイール内駆動方式の量産化により、バッテリー配置や車体レイアウトを柔軟に設計可能。
- 二輪車から軽自動車、商用車まで幅広いEV化への対応。
- 地球環境への配慮と持続可能な社会実現(資源循環・リサイクル性、大幅な省エネ性能)。
- 技術の現実課題であったコスト増・資源供給リスク解消で、EVシフトを加速。
Astemoトップが語る、SDV時代を見据えた未来像
代表取締役 社長&CEOの竹内弘平氏は、これからの自動車は単なるハードウェア進化ではなく、
「ソフトウェアとハードウェアの連携が新しい価値を創造する時代」と語っています。
デジタル化・電動化・安全性・環境対応が三位一体となり、
Astemoはそれらを支える基盤技術をこれからも発表し、SDV時代の「知能モビリティ」のリーディングカンパニーとなることを目指すとの方針です。
まとめ:Astemoの技術展示は「持続可能・安心・快適」のSDV社会の実現に直結
2025年、大小さまざまな課題が渦巻くEVおよびSDV市場でAstemoは、電動化の「進化形」となるインホイールモーター、
そして地政学リスクを確実に低減するレアアースフリーのモーターという「未来型」技術を示しました。
環境負荷削減・資源循環・リサイクル性・安定供給を軸に、ユーザーの本質的ニーズである「利便性・安全性・快適性」も高いレベルで両立しています。
今後もAstemoの技術開発は、日本発EV・SDV時代の世界スタンダードを生み出していく可能性を秘めています。
参考展示技術一覧(2025年秋 発表・展示内容抜粋)
- 12インチ空冷ダイレクト駆動式インホイールモーター
- 16インチ・19インチ インホイールモーター(油冷式/インバーター内蔵)
- レアアースフリーEVモーター
- 易解体集中巻コイル
- PHEVインバーター・高電力密度小型インバーター
- クラウド連携IoV基盤
今後の展望
AstemoはSDV時代の到来に合わせ、持続可能な社会実現を目指して最先端技術の開発に挑戦し続けています。
インホイールモーターによるEV革命、レアアースフリー技術を通じて、環境×利便性×安全性の新たなバランスを日本から世界へ発信していくでしょう。




