対米投融資第1号案件に旭ダイヤモンドらが名乗り、人工ダイヤモンド事業が急騰

日米関税合意に基づく約85兆円投資の行方

日本と米国の両政府が合意した約85兆円規模の対米投融資案件において、人工ダイヤモンドの米国内生産計画が第1号案件の有力候補として浮上しました。1月27日にこのニュースが報じられると、関連企業の株価が急騰するなど市場の注目が集まっています。

この投融資は、2025年7月に日本と米国が合意した日米関税交渉の一環です。日本の対米輸出品に課されるトランプ関税を25%(自動車は27.5%)から15%に引き下げる一方で、日本側が米国内に大規模な投資を実行することで合意したものです。

なぜ人工ダイヤモンドなのか

人工ダイヤモンドといえば、かつては宝飾用や切削工具としてのイメージが強かったかもしれません。しかし次世代半導体としての需要が急速に拡大しています。ダイヤモンド半導体は、シリコンに比べて放熱性が格段に高く、高電圧にも耐えられるという特性を持ちます。これは、AIデータセンター、電気自動車(EV)、宇宙・衛星・レーダーといった次世代のハイテク産業全般で活躍が期待されている技術です。

米国政府の思惑も明確です。人工ダイヤの生産で圧倒的シェアを握る中国への依存を脱却し、同盟国である日本企業を巻き込んで米国内に強固なサプライチェーンを築きたいという戦略があります。

旭ダイヤモンド工業が注目を集める

赤沢郁夫経済産業大臣が米国投資案件で人工ダイヤ事業への関心を示す中、旭ダイヤモンド工業とノリタケが約6億ドル規模の人工ダイヤモンド製造事業に関心を示していることが報じられました。旭ダイヤモンド工業は、半導体・シリコンウエハの切り出しに使うダイヤモンドワイヤで定評があり、業界でも指折りの技術企業として知られています。

このニュースが伝わると、旭ダイヤモンド工業の株価は急騰し、SNS上でも「逃したくないユーザーが歓喜の声」を上げるほどの反応となりました。市場では、この案件が本当に実現すれば、旭ダイヤモンド工業にとって大きなビジネス機会になるとの期待が高まっています。

関連する他の有力企業

人工ダイヤモンド関連銘柄としては、旭ダイヤモンド工業以外にも複数の企業が注目されています。

  • 住友電気工業:世界最高峰の人工ダイヤ「スミクリスタル」を開発した代表格
  • ディスコ:半導体製造装置の世界大手で、ダイヤ砥石を用いた研削・切断で圧倒的なシェアを誇る
  • 住石HD:グループ傘下の「ダイマテリアル」が工業用人工ダイヤモンドの製造・販売を主力事業としており、素材製造の技術を持つ
  • オキサイド:人工ダイヤなどの「単結晶」技術が注目されており、スタートアップの大熊ダイヤモンドデバイス社に出資
  • テクニスコ:新素材「シルバーダイヤ」を用いた高性能ヒートシンクの製造・開発で先行

実用化に向けた動き

国内では既に実用化への動きが進んでいます。2022年創業の大熊ダイヤモンドデバイスは、福島県大熊町で世界初のダイヤモンド半導体の商用量産工場を稼働させる予定です。同社は放射線センサー向けのダイヤモンド半導体デバイスを開発しており、福島第一原子力発電所の廃炉作業などでの活用が予定されています。

また、パワーエレ・高周波・高温向け次世代半導体デバイスメーカーの「Power Diamond Systems」も、福島県大熊町で世界初のダイヤモンド半導体量産工場の建設を進めており、2030年ごろの実用化を視野に入れています。

人工ダイヤモンドの製造方法

興味深いことに、ダイヤモンドは工場内でも製造することが可能です。HPHT法(高温高圧法)やCVD法(化学気相成長法)によって、工場内で炭素をダイヤモンド構造に結晶化させることができます。この技術が確立されたことで、ダイヤモンドは天然鉱物から産業素材へと変化しました。

市場の反応と課題

人工ダイヤモンド関連銘柄は大きな注目を集めていますが、一部では「材料出尽くし感」も指摘されています。赤沢経産相による具体的な発表後、EDP(エレクトリック・ダイヤモンド・パートナーズ)や住石HDの株価が高値掴みされたユーザーの売却圧力で上値が重くなるなど、市場心理が複雑化している側面もあります。

投資家の間では、短期的な材料相場と中期的な事業成長の見通しを見極める必要があると認識されており、各企業の実績発表や事業進捗の発表が注視される状況が続いています。

今後の展望

赤沢経産相は早ければ3月下旬をめどに検討している高市首相の訪米を待たずに、人工ダイヤモンド案件が発表される可能性があると報じられています。この案件が正式に決定すれば、関連企業にとって大型案件として機能し、業界全体の成長加速につながることが期待されています。

日米両政府が国策として人工ダイヤモンドの増産・活用に動く中で、旭ダイヤモンド工業をはじめとした関連企業の動向は、今後の市場注視の焦点となっていくでしょう。

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