英アーム、決算好調で株価に小幅高―AI関連需要に強気姿勢を見せた2025年11月の動向

2025年11月、英国の半導体設計大手アーム・ホールディングス(Arm Holdings PLC)が発表した最新決算が市場予想を上回ったことを受け、同社株価が一時的に上昇し注目を集めました。AIや自動運転分野など広範な産業での半導体需要増加が、アームの好調な業績につながっています。本記事では、アームの最新決算内容、株価の動き、AIや自動運転関連の事業展開、日本市場でのコミュニケーション、そして今後の課題について、丁寧に解説します。

アームの2025年7-9月期決算と株価の反応

  • アームは2025年7-9月期決算で、総収入が前年同期比34.5%増の11.35億ドル、1株当たり利益(EPS)は30.0%増の0.39ドルを記録しました。この両指標とも市場予想を上回る結果となり、投資家から高く評価されました。
  • AIブームを背景に幅広い分野で半導体への需要拡大が進んでおり、その波に乗る形でアームの業績も好調を維持しています。特に、省電力技術の強みがAIや自動運転用途で高く評価されています。
  • 決算発表直後の米国市場でアーム株価(ARM)は一時8.66%高の174.07ドルに急騰しましたが、その後は上昇幅を縮め、166ドル程度で落ち着いています。
  • ただし、その後の株価推移では利益確定売りなどが強まり、日を追って下落傾向も見られました。特に、全体の米ハイテク株安の流れを受け、アームも含み益が減少したことが影響しています。

ロイヤルティ収入とライセンス収入の好調さ

  • 決算説明によると、AI関連やIoT(モノのインターネット)向けの需要増を背景に、アームの主要ビジネスであるロイヤルティ収入、ライセンス収入ともに市場予想を上回る成長を見せています。
  • アームが提供するCPUやGPU設計の技術は、スマートフォンからサーバー、車載用半導体まで幅広く利用されており、世界中の大手テクノロジー企業や自動車メーカーが採用しています。

新たな成長ドライバー:AI関連需要が支える強気の売上予想

  • 注目すべきは、アームの今後の売上高や利益見通しです。2025年10-12月期の総収入予想は12.25億ドル(前年同期比24.6%増)、1株当たり利益は0.42ドル(7.7%増)と、いずれも市場予想を超える強気の内容となっています。
  • これはAIの進展に伴う半導体需要の急拡大が背景にあり、アームの設計する省電力プロセッサはAIチップの中核として期待されています。顧客からの引き合いに応えるべく、研究開発への投資も積極的に行われています。
  • 特にAIを活用した画像認識、自然言語処理、ロボティクス分野、自動運転技術などで使われる演算資源として、アームのIP(知的財産)設計に再評価の声が高まっています。今後もAI需要の拡大がアーム業績を支える重要な柱となりそうです。

事業内容と主要製品群の説明

  • アームは省電力・高性能なCPUやGPU、NPU(ニューラルプロセッシングユニット)を中心とするコンピューティングプラットフォームを設計・開発。これらはスマートフォン、タブレット、ノートPC、データセンター、家電、自動車、さらにIoT機器など幅広く採用されています。
  • ビジネスモデルは、製品ごとにライセンスを供与する「ライセンス収入」と、顧客が製品にアームの設計を組み込んだ際に発生する「ロイヤルティ収入」に支えられています。これが収益安定化や高い利益率を下支えしています。

アーム日本での顧客向けイベントと技術発信

  • アームは2025年11月、日本で顧客向けイベントを開催しました。イベントでは自動運転分野やロボティクス分野におけるアーム技術の活用事例や今後の展望が紹介されました。
  • 特に「自動運転とロボットには類似点が多い」という観点から、両分野に共通する技術課題や開発トレンドについて解説。AIと省電力、高集積化を両立する設計が重要とされています。
  • なぜ日本市場が重視されるかというと、国内自動車メーカーやロボット開発企業との連携強化、及び次世代車載半導体や産業用機器への展開拡大を目指しているためです。

直近の株価推移と市場評価

  • アーム株価は2025年11月4日時点で終値160.73ドル、5日は160.19ドルで取引を終えました。その後、直近では安値146.29ドル、高値155.23ドルと変動が大きい展開となりました。
  • 株価掲示板など投資家の心理を見ると、「強く売りたい」が64.71%と大半を占めており、目先の利益確定売りや全体相場の逆風を強く感じていることも分かります。
  • アームはソフトバンクグループ(SBG)の傘下企業であるため、SBG株もアーム株価に連動しやすく、日本市場にも間接的な影響を与えています。2025年11月初旬にはSBG株も急落し、日経平均の押し下げ要因となりました。

半導体業界のトレンドとアームへの今後の期待・課題

  • 2025年現在、世界的なAIブームとともに高性能かつ省電力な半導体設計へのニーズが高まっています。アームはこのニーズに応えるプラットフォームとして、設計ソリューションやIP提供で引き続き存在感を示しています。
  • 一方、決算では10-12月期の成長率がやや鈍化する予想も明かされており、研究開発費増加によるコスト圧力、米中対立など地政学的リスク、競争激化などの課題も残ります。
  • 今後の投資判断には、アームの新たな技術進化と世界中で広がるAI・自動運転市場の動向、さらに半導体業界全体のサイクルを見極めることが重要です。

まとめ

2025年11月のアームは、AIや自動運転、ロボティクスといった成長産業への強い関わりを示しながら、ビジネスモデルの強みを活かした決算内容で投資家から注目を集めました。AI需要という巨大な追い風もあり今後の成長が期待されますが、一方で株価は全体市場の影響も受けやすいなど、不安定さも見せています。世界中の半導体・AI産業で重要な地位を占め続けるアームの新たなチャレンジと日本市場での取り組みを、引き続き注視していく必要がありそうです。

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