アップル、Mac miniを米国で初製造へ テキサス州ヒューストンで年内開始
アップルが、Mac miniの一部製造を米国内で初めて開始することを発表しました。テキサス州ヒューストンにあるフォックスコン工場で、2026年後半にMac miniの製造がスタートする予定です。これは、同社が米国での製造拡大を進める重要な施策の一つとなります。
米国内製造への転換背景
Mac miniは現在、ベトナムと中国で製造されています。アップルがこの製造工程を米国に移管することで、製造拠点は3カ所に増えることになります。アップルのサビ・カーン最高執行責任者(COO)は、ヒューストンの施設ツアー中に「今年後半、まさにこの場所でMac miniの製造を開始することに、私たちは非常に興奮している」と述べています。
同社は、毎週数千台を製造する計画を立てており、初期段階では主に米国市場向けの供給を想定しています。新しく設置される22万平方メートルのスペースが、Mac miniの生産に充てられる見通しです。
サプライチェーン多元化と地政学的リスク対策
アップルがこのような決断を下した背景には、半導体産業に関わるサプライチェーンの地政学的リスクに対する懸念があります。世界の先端半導体の大半は台湾で生産されており、中国による台湾封鎖や侵攻が起きた場合、米国のテクノロジー産業と世界経済に深刻な打撃を与える可能性があると指摘されています。
米国政府は近年、国内での半導体生産拡大を後押ししており、アップルを含む大手テクノロジー企業に対して国内調達の拡大を要請してきました。アップルは昨年8月、トランプ政権の関税政策への対応として、米国内で4年間に総額6000億ドル(約93兆円)を投資し、国内生産を強化する方針を表明していました。今回のMac miniの国内製造は、その具体策の一つに位置付けられます。
雇用創出と製造能力の強化
アップルは、高度な自動化設備と熟練労働力を活用して、米国内のサプライヤー網を拡大する計画です。この取り組みにより、雇用創出と研究開発との連携強化が期待されています。
同社はMac miniに加えて、ヒューストン工場におけるAIサーバーの製造も拡大する予定です。さらに、延べ床面積2万平方フィート(約1858平方メートル)の「Advanced Manufacturing Center」を年内に開設し、学生やサプライヤーの従業員、あらゆる規模の米国企業に対して先進的な製造技術の実地訓練を提供する計画も発表されています。
過去の取り組みとの違い
アップルは過去にも、2013年と2019年にMac ProをFlexsolutions社のオースティン工場で少量製造し、米国内の雇用創出をアピールしていました。しかし販売不振と人手不足により、その後生産は中国に移管されてしまいました。
今回のMac miniは、Mac Proよりも出荷規模が大きくなることが確実です。そのため、雇用創出のインパクトは相対的に大きくなることが期待されています。また、新製品導入や開発作業は、当面の間ベトナムか中国で行われることが予想されていますが、半導体レベルからの米国内製化を進める戦略が明確に示されています。
将来への展望
2026年後半に製造開始予定のMac miniは、M5およびM5 Proチップを搭載する新型モデルになる可能性があります。将来的には、Mac miniに搭載されるアップルのMシリーズチップについても、米国内でIntelが製造を担う可能性があるという見方も出ています。
アップルがどこまで米国内生産を拡大できるかは、今後の注目ポイントとなります。半導体の多元化が進む中、同社の国内製造戦略が米国経済と技術産業にもたらす影響に、業界関係者の期待が高まっています。



