あおぞら銀行に注目集まる理由とは?業績予想と大和証券との連携をやさしく解説
あおぞら銀行をめぐって、投資家や金融業界の関係者からの注目が一段と高まっています。背景には、2026年3月期の業績予想の変化と、大和証券グループとの連携強化による協業効果の拡大があります。本記事では、この2つのポイントを中心に、あおぞら銀行の現状と今後の方向性を、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
2026年3月期の経常利益予想が前週比3%下方修正
まず、投資家の間で話題になっているのが、民間のアナリスト予想における2026年3月期の経常利益予想の下方修正です。アイフィス株予報によると、あおぞら銀行の2026年3月期の経常利益見通しが、直近1週間で前週比約3%低下したと報じられています。これは、複数の証券会社や調査機関が出しているコンセンサス(市場予想の平均値)が、やや慎重な方向に見直されたことを意味します。
アナリスト予想の下方修正は、一般的には「今期の収益環境に多少の逆風があるのではないか」という見方が強まったサインと受け止められやすく、市場心理に影響を与えることがあります。一方で、今回の修正幅は3%程度と比較的限定的である点も押さえておきたいところです。大幅な下方修正ではなく、「慎重さを少し強めた」程度のニュアンスと見ることもできます。
また、あおぞら銀行は2024年2月、米国のオフィス向け融資の悪化を背景に15年ぶりの最終赤字を計上したことを発表しており、その後の経営再建や収益モデルの見直しが進められている最中です。こうした過去の損失の影響や、金利環境・不動産市況などの不確実性が、アナリスト予想にも織り込まれていると考えられます。
大和証券との資本業務提携で「証・銀連携モデル」が本格始動
一方で、中長期的な収益拡大の柱として期待されているのが、大和証券グループとの資本業務提携です。大和証券グループ本社は、2024年5月にあおぞら銀行との資本業務提携を発表し、第三者割当増資を通じて約519億円を出資、持株比率15%超の筆頭株主となりました。その後、旧村上ファンド系の投資会社などからの株式追加取得も行い、議決権ベースでは約23.95%を保有するに至っています。
この提携は、単なる出資にとどまらず、証券と銀行が連携してビジネスを展開する「証・銀連携モデル」の中核として位置付けられています。大和証券グループ本社の荻野明彦社長は、「あおぞら銀行との協業によるシナジーは着実に具現化しており、2027年度に100億円の提携効果を実現できると自信を深めている」と述べており、連携の成果に手応えを示しています。
協業効果は「計画を上回るペース」で進展
実際、あおぞら銀行と大和証券の協業は、いくつかの具体的な事業で計画を上回るペースで成果を挙げています。大和証券側の説明によると、両社の連携によって生まれたビジネスの成果は、すでにあおぞら銀行の業務純益を押し上げる効果として数字に表れ始めています。
2024年以降、両社のネットワークを通じて紹介に同意した企業顧客は700社超に達し、累計の投融資実行額は74件・1240億円となりました。その結果、あおぞら銀行の今期の業務純益には約21億円のプラス効果が出ているとされます。これは、提携効果が単なる「将来構想」ではなく、すでに具体的な収益として現れていることを示す重要なポイントです。
こうした実績を踏まえ、あおぞら銀行は2027年度に業務純益ベースで100億円規模の提携効果を目標として掲げており、その達成に向けて「計画を上回るペースで進んでいる」との見方が伝えられています。足元でアナリスト予想の一部に慎重さが出ている一方で、提携ビジネスという中長期の収益源は着実に育ってきていると言えます。
目に見える形で進む3つの連携分野
あおぞら銀行と大和証券の連携は、すでにいくつかの具体的な事業として動き出しています。代表的な取り組みを3つに整理してみましょう。
-
1.大和・あおぞらチャレンジファンド
2025年8月、両社は共同出資による「大和・あおぞらチャレンジファンド」をスタートさせました。このファンドは、業績悪化などで再生が必要となった中堅・中小企業を主な対象としています。不良債権化した融資を金融機関から買い取りつつ、対象企業の株式も取得し、経営再建を支援するスキームです。
銀行が持つ与信・再生ノウハウと、証券が持つ資本政策・M&Aなどの知見を組み合わせることで、地域企業の再生と投資収益の両立を狙う取り組みと言えます。 -
2.投資一任サービス「みらい彩りラップ」の販売
2025年10月1日から、あおぞら銀行は大和証券の投資一任サービスである「みらい彩りラップ」(あおぞら銀行での愛称は「あおぞらみらい彩りラップ」)の取り扱いを開始しました。同行の公式発表によると、大和証券を販売委託元とし、あおぞら銀行が窓口となって顧客に提供する形です。
さらに、大和証券側の説明では、あおぞら銀行での「みらい彩りラップ」は、サービス開始直後の2025年10月の契約額だけで、今期計画していた150億円を達成したとされています。貯蓄から投資への流れが強まる中で、預金中心だった顧客の資産を投資運用へつなげる有力な商品として、想定以上のペースで伸びているとされています。 -
3.企業MBOや投融資案件での共同支援
企業のMBO(経営陣による買収)を通じた非公開化案件などでも、両社の連携は進んでいます。大和証券がファイナンシャルアドバイザー(FA)として企業側をサポートし、あおぞら銀行が買収資金などのファイナンスを提供する役割を担う形が整いつつあると報じられています。
また、前述のとおり、2024年以降の紹介顧客700社超・投融資実行74件・1240億円という数字は、こうした法人向けビジネスの連携が着実に成果を上げていることの表れでもあります。
「証券と銀行の融合モデル」が持つ意味
大和証券はかつて、三井住友銀行と法人ビジネスで合弁会社「大和証券SMBC」を運営していたものの、約10年で解消した経緯があります。その経験を踏まえ、今回はあおぞら銀行との提携を通じて、長年の課題だった「銀行との本格連携」を改めて形にしようとしている段階です。
一方、証券と銀行の連携を重視する動きは、業界全体の流れでもあります。野村ホールディングスは2025年4月に「バンキング部門」を新設し、グループ内で銀行機能を強化していると伝えられています。こうしたライバルの動きもあり、大和証券としても、あおぞら銀行との相乗効果をできるだけ早く最大化することが重要な経営テーマになっています。
また、大和証券グループには大和ネクスト銀行というネット専業銀行も存在しており、今後このネット銀行とあおぞら銀行との間で、どのような分業・連携が形成されていくのかも注目されています。リアル店舗を持つあおぞら銀行と、オンラインに強みを持つ大和ネクスト銀行という組み合わせは、顧客接点の多様化という点で可能性を秘めています。
収益面ではなお課題も、提携効果はプラス要因として着実に寄与
ここまで見てきたように、あおぞら銀行は米国オフィス向け融資での損失という大きな痛手を負った一方で、大和証券との提携をテコに、新たな収益源づくりに取り組んでいます。2026年3月期のアナリスト経常利益予想が前週比3%下方修正されたことは、足元の収益環境に一定の慎重さがあることを物語っていますが、提携事業は中長期的な回復・成長ストーリーの中核と位置付けられます。
とくに、業務純益にすでに約21億円の上乗せ効果が出ている点、そして2027年度に100億円規模の提携効果を見込むという目標に対して「計画を上回るペース」で進捗しているとの評価は、投資家にとっても重要な判断材料です。短期的な業績変動に加え、こうした提携による構造的な収益改善のポテンシャルをどう評価するかが、今後の株価や市場の見方にも影響していくと考えられます。
個人・法人双方に広がるあおぞら銀行の役割
あおぞら銀行は、個人向けには「定期預金」や「外国預金」などで知られる存在ですが、大和証券との連携を通じて、資産運用サービスにも力を入れ始めています。2025年10月に始まった「あおぞらみらい彩りラップ」は、その象徴的な取り組みです。こうしたサービスは、これまで投資に踏み出せなかった預金者が、専門家に運用を任せながら少しずつ投資を始める入り口としても機能します。
また、法人向けには、チャレンジファンドやMBO支援などを通じて、企業再生や事業承継、非公開化といったニーズにこたえる役割を担いつつあります。銀行が持つ貸出機能と、証券が持つ資本市場のノウハウを組み合わせることで、中堅・中小企業の成長と再編を後押しする体制が整いつつあると言えるでしょう。
今後の焦点:業績回復と提携深化の両立
あおぞら銀行をめぐる今後の焦点は、大きく2つに整理できます。
-
1.本業収益の安定化・回復
米国オフィス向け融資での損失からの立て直しに加え、金利環境の変化や与信コストの管理など、銀行としての基礎体力をどう回復・強化していくかが引き続き問われます。2026年3月期のアナリスト予想の動きは、その評価がまだ過渡期にあることを示しているとも言えます。 -
2.大和証券との提携効果の最大化
すでに業務純益へのプラス効果が出ている中で、どこまで連携領域を広げられるかがカギになります。個人向け資産運用ビジネスの拡大、法人向けファンドやMBO支援、さらにはスタートアップ支援などへの展開も含め、証券と銀行の強みをどれだけ組み合わせられるかが注目されます。
このように、あおぞら銀行は「短期的な業績懸念」と「中長期の提携シナジー拡大」という、相反するように見える2つの要素を同時に抱えているのが現状です。だからこそ、ニュースや決算発表、提携の進捗に関する情報をバランスよく追うことが、同社の今を理解するうえで重要になってきます。



