ガソリン暫定税率廃止をめぐる最新動向――財源問題と地方への影響を考える

はじめに

ガソリン暫定税率の廃止問題が、2025年の秋、社会的にも大きな議論となっています。高騰が続くガソリン価格を背景に、家計や事業者の負担を軽減する政策として廃止が論じられる一方、地方自治体の財源や政策財源がどう確保されるべきか、課題も浮き彫りとなっています。本稿では、ガソリン暫定税率の成り立ちから、現在の政策動向、地域経済への影響、そして広がる議論について、やさしく解説します。

ガソリン暫定税率とは?その成り立ちと現在の仕組み

  • ガソリン暫定税率は、1974年のオイルショックを契機に、緊急的な財源確保を目的として導入された「臨時」上乗せ税率です。
  • 本則税率は1リットルあたり28.7円ですが、これに25.1円が暫定的に上乗せされ、現在は合計53.8円となっています。
  • 当初「時限的」措置のはずが、オイルショック収束後も財政需要を理由に、およそ半世紀にわたり維持されてきました。

なぜ暫定税率廃止が議論されているのか

近年、資源価格の高騰や円安の影響で、ガソリン価格は全国平均でリッター180円台を超える高止まりが続いています。家計や流通コストへの影響が社会問題化し、「もう負担を減らしてほしい」という国民世論が高まっています。こうした中、2025年11月1日からの暫定税率廃止法案が野党7党から提出され、国会でも本格的に議論される流れとなりました。

暫定税率廃止までのスケジュールと現行のガソリン価格対策

  • 2025年11月1日からの暫定税率廃止法案が、国会で審議されています。
  • 現行では、政府の価格抑制策として、リッターあたり約10円の補助金が2025年5月以降も継続されています。
  • 暫定税率廃止が実現すると、補助金も同時に終了する見通しです。

これにより、ガソリン価格は一時的に25円安くなる一方、補助金終了による実質的な値下げ幅は15円程度にとどまる、との指摘もあります。

地方財政への影響――慎重な議論を求める声

暫定税率廃止が持つ最大の課題のひとつが地方財源の確保問題です。ガソリン税の一部は地方交付税や道路整備特別会計など、国から地方自治体に配分されてきました。

  • 村上誠一郎総務相は「廃止は地方にとって重たい課題」と発言し、拙速な議論を避け、十分な財源措置を伴うべきだと呼び掛けています。
  • ガソリン税減税の財源がはっきりしないとの指摘も広がり、さらに「軽油」への拡張案が持ち上がると、税収減が約1.5兆円規模に膨らむ恐れも報じられています。

これにより、道路インフラや地域交通の維持、医療や教育への地方交付税減額が懸念されています。地方自治体は、ガソリンに代わる安定的な新たな歳入確保策を模索しています。

補助金終了後の見通しと国民生活への影響

2025年5月から実施されている燃料油価格抑制策(リッター約10円引き下げ)は、暫定税率廃止と同時に終了する見込みです。補助金の終了は、一部消費者にとっては値上げ要因となり得るため、家計や物流コストへの事前の備えも重要になります。

軽油税への拡大案と予算へのインパクト

高市早苗氏など一部与党議員からは、「軽油」も減税対象にすべきとの意見も出ています。しかし、これを実施した場合、ガソリン税・軽油税合わせての減収が年間1.5兆円規模となるとされ、ますます財源問題は深刻になります。

「石油の日」に再認識される石油の意義と暫定税率問題

10月6日は「石油の日」。「第二次オイルショック」を契機に我々の暮らしとエネルギー安全保障の問題が大きく問われるようになりました。今なお、石油製品は「社会の血液」とも呼ばれ、消費者生活や地方経済に広く関与しています。
社会全体で石油税制やエネルギー政策のあり方を見直し、将来の安定供給と環境配慮、家計負担軽減のバランスが求められていると言えるでしょう。

市民・事業者はどう備えるべきか?

  • 今後のガソリン価格変動や政策変更に備え、日常の予算計画を柔軟に調整することが重要です。
  • 運送業やサービス業では、燃料費変動への転嫁や省エネ化、多様なエネルギー源の活用が求められます。
  • ガソリン暫定税率廃止の影響が現実となる前に、政府や自治体が示す情報もこまめに確認しましょう。

今後の国会審議と社会的な論点

野党提出の暫定税率廃止法案が今後どのように審議され、与党・政府がどんな補正予算措置や代替財源案を打ち出すか、注目が集まっています。エネルギー安全保障、カーボンニュートラル政策、地方の自立的な社会経済基盤など、複数の課題を織り込みながら、多角的な議論が続くことでしょう。

まとめ

ガソリン暫定税率の廃止は、国民生活の負担軽減を実現しうる一方で、地方財政や政策財源に大きな影響を及ぼします。国や地方、消費者・事業者一人ひとりが、エネルギー政策の転換期をどう乗り越えていくのか、今後の議論の行方に引き続き注視が必要です。

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