カボベルデでマラリア56人感染、近年の世界的課題と最新の対策

はじめに ― 西アフリカ・カボベルデでのマラリア感染発生

2025年10月、西アフリカの島国カボベルデでマラリア感染症の発生が確認されました。現地保健当局によると、56人のマラリア感染者が報告され、そのうち23人は国外で感染していたことが分かっています。最も被害が深刻なのは首都プライアの住民であり、保健当局は地域住民に対して警戒を強く呼びかけています。このニュースは、これまでマラリア制圧や排除宣言が進んできたアフリカでも油断のできない現実を示しています。

世界的なマラリアの現状

マラリアは、いまだ世界で最も深刻な感染症のひとつです。2023年には全世界で2億6,300万人の感染者と、59万7,000人の死亡者が発生したと推定されています。そのうちアフリカ地域は全感染発症例の94%、死亡者の95%を占めており、依然として最大のリスク地域です。

特に熱帯・亜熱帯地域で流行が続き、貧困や医療インフラの課題、気候変動など、様々な要因でマラリア撲滅の取り組みは難航しています。ただし、カンボジアなど一部の地域では、薬剤耐性の脅威を乗り越えた上で、原虫由来の感染症例が激減し、撲滅への道が見えつつある国も出てきています。

カボベルデにおける現状と課題

カボベルデは2024年1月にWHO(世界保健機関)からマラリアフリーの認定を受けたばかりの国です。しかし、近年の国際的な移動や気象条件の変化により、輸入症例や局所的な再発生のリスクが高まり、今回のような感染集団発生に繋がっています。

  • 感染の確認日:2025年10月9日
  • 感染者数:56人(うち23人が国外感染)
  • 影響の大きい地域:首都プライア
  • 季節条件:依然として感染拡大が起きやすい状態

現地の保健当局は「マラリア関連の困難な状況が年内続く可能性がある」とし、全関係機関への連携強化およびさらなる感染拡大防止策が求められています。

国内外のマラリア流入とリスク

近年はグローバル化により、人やものの越境移動が活発になっています。これは、マラリアの「輸入症例」が先進国や以前に制圧した国々でも散発的に発生する要因となっています。また気候変動による降雨量や気温の変化も、蚊が生息・繁殖しやすくなるため、パンデミックを招くリスクとされています。カボベルデも例外ではなく、早期発見・即時対応・多機関連携が国の安全保障と公衆衛生レベルで不可欠です。

先進技術によるマラリア撲滅への挑戦~SORA Technologyの取り組み

近年、アフリカを含む世界各国でドローンやAI(人工知能)を使ったマラリア対策が急速に進められています。その代表的な例がSORA Technologyです。同社は、「病気が拡がる前に、現場で情報を集め即時対応する」ための技術を開発しています。

  • ドローンによる広域監視や蚊の生息環境データの収集
  • AIによる感染リスク予測と感染パターンの解析
  • 感染拡大地域のピンポイント特定と、防虫・医薬品の迅速な配布

これらの先端技術による予防ソリューションは、従来の人手や紙ベースの監視網に比べて「スピード」「正確性」「コスト効率」に優れ、特に広大なアフリカの草原や島嶼部で大きな可能性を発揮しています。地域住民のスマートフォンやIoTデバイスも活用しながら、一元的なモニタリングが徹底されつつあります。

WHOや国際社会の努力―「マラリア撲滅」というゴールに向けて

現在、WHO認定の「マラリアフリー国」は47カ国・1地域まで増加しました。また、マラリア制圧には国際連携・地域コミュニティと政府のパートナーシップが不可欠です。日本など各国も、アフリカへの医療支援や技術協力を展開し、「感染ゼロ社会」をめざして資金・ノウハウ提供、現地研修などを強化しています。

患者の早期発見・治療を行うためには、リアルタイムのデータ収集と医療従事者の連携が重要です。さらに、蚊を媒介する病気対策としてのワクチン普及や衛生習慣の啓発活動、子どもの予防教育など、複合的な取り組みが世界中で加速しています。

おわりに ― いま私たちにできること

カボベルデでのマラリア再発は、「完全な制圧」がいかに難しく、また地球規模の課題であるかを示しています。一人ひとりが最新の情報を知り、予防策を実行することと、医療や科学技術など社会全体の力を合わせて感染症と闘うという意識が、これまで以上に求められています。

  • 海外渡航時は現地の感染情報やワクチン接種状況を確認
  • 現地での衛生・防蚊を意識した生活習慣
  • 万一の発熱症状などは速やかに現地医療機関に相談する

感染症との闘いは、世界のどこかの「遠い話」ではありません。技術革新や国際社会のパートナーシップに支えられながら、一人ひとりの具体的な行動が、持続可能な社会をつくる基盤となるのです。

参考元