S&P500への積立投資が話題に──23歳から年金生活まで、「新NISA時代」のリアルなお金の増やし方
ここ数年、「積立投資」という言葉を本当によく耳にするようになりました。中でも、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500にコツコツ投資する方法や、2024年から始まった新NISAをどう活用するかが、大きな関心を集めています。
今回は、
- 月3,000円からS&P500に積立投資を始めた23歳女性の2年目の成績
- 20〜30代が見落としがちな新NISA「成長投資枠」の活用術
- 「年金生活だからこそ配当が惜しい」と感じる高齢者の新NISAとの付き合い方
といったニュースをもとに、年代別に積立投資と新NISAをどう考えればよいかを、やさしく整理していきます。
23歳女性、月3,000円を「絶対に手をつけない覚悟」で積立
まず注目を集めているのが、「23歳女性がS&P500に毎月3,000円を積立投資して、2年目の成績がどうなったか」というニュースです。この女性は、決して高収入というわけではないなかで、
- あくまで無理のない金額で
- 「絶対に取り崩さない」という強いルールを自分に課し
- インデックスファンドを使ってS&P500に2年間コツコツ積立した
というケースが紹介されています。
S&P500は、アメリカの代表的な500社に分散投資する指数で、ここ数年は比較的好調な相場が続いてきました。2024年のS&P500は米ドルベースで年間+26.0%の上昇、円ベースでは+40.5%の上昇となっています。また、2025年も11月時点で年初来+16%台の上昇となっており、この数年は世界的に見ても高いリターンが出ている期間でした。
もちろん、この23歳女性の具体的な損益額は「投資を始めたタイミング」「どのファンドを選んだか」「為替の影響」などで変わりますが、2年間を通して見ればプラスの成績になっている可能性が高い相場環境だったと言えます。例えば、日本で人気の高い「S&P500インデックスファンド」の一つでは、3年騰落率がおよそ+98%と、2倍近い水準になっているものもあります。
このニュースが大きな反響を呼んでいる背景には、
- 少額でも早く始めることの大切さ
- 「手を付けない」というルールを決めることの重要性
- S&P500という分散されたインデックスへの長期投資の現実的な選択肢としての人気
といったポイントがあります。
「月3,000円なんて意味があるの?」と思う人もいるかもしれませんが、20代前半からの数千円の積立は、時間という最大の味方を得ている状態です。たとえ途中の相場が上下しても、「絶対に手をつけない」というルールを守り続けることで、長期的には大きな差になっていく可能性があります。
20〜30代が見落としがちな「新NISA・成長投資枠」
次に話題になっているのが、新NISAの「成長投資枠」をどう使いこなすかというニュースです。新NISAは、
- つみたて投資枠(主に長期・分散・低コストのファンド向け)
- 成長投資枠(個別株やアクティブファンド、ETFなども対象)
の2つの枠があり、合計で生涯1,800万円までの非課税枠が用意されています。
20〜30代は、
- とりあえず「つみたて投資枠」だけを使っている
- 「成長投資枠は難しそう」「リスクが高そう」と感じてほとんど使っていない
というケースが少なくありません。
しかし、専門家が指摘しているのは、長い時間を味方につけられる若い世代だからこそ、「成長投資枠」を計画的に使う価値があるという点です。プロが教える3つの視点として、例えば次のような考え方が紹介されています。
- 1. つみたて投資枠で「土台」を作る
まずは低コストなインデックスファンド(全世界株式やS&P500など)で、毎月の積立を自動化し、家計の中に「投資という習慣」を定着させる。 - 2. 成長投資枠で「上乗せリターン」を狙う
土台ができたうえで、成長投資枠では、- S&P500などのインデックスファンドの一括投資やスポット買い
- 将来性を感じるテーマ型・アクティブファンドの比率を抑えた活用
などを検討し、「家計全体の中で無理のない範囲」でリターンの上乗せを目指す。
- 3. 非課税メリットを「長く活かす」設計
新NISAは非課税期間が無期限です。売買を繰り返すよりも、- できるだけ長く非課税で保有する前提で商品を選ぶ
- 途中で生活状況が変わったときに備え、つみたて投資枠と成長投資枠のバランスを意識する
ことが大切です。
なお、日本でもS&P500に連動する投資信託は非常に人気が高く、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」などは、新NISAの主要な投資先の一つになっています。2024年1月からこのファンドに毎月2万円を積み立てたケースでは、2025年1月末時点で評価額が約29.3万円、含み益が約12%となっていたというデータもあり、新NISA開始後1年目としては比較的良好な成果となりました。
もちろん、これはあくまで特定期間の実績であり、将来も同じような成績になるとは限りません。それでも、
- S&P500インデックスという「軸」による積立
- 余力が出てきたら成長投資枠でも上乗せ投資
という組み合わせは、若い世代にとって現実的で考えやすい選択肢の一つと言えるでしょう。
「年金生活だからこそ配当を手放したくない」高齢者と新NISA
一方で、話題になっているもう一つのニュースが、「年金生活だからこそ配当を手ばなすのが惜しい」という高齢者の声です。新NISA時代に、高齢者は何歳まで投資を続けるべきかというテーマは、多くの人が関心を寄せる問題です。
年金生活に入った世代は、
- これまでコツコツ貯めてきた株式や投資信託からの配当金・分配金が、生活の支えになっている
- 新NISAへの乗り換えや、含み益のある銘柄を売却することで、その配当を失いたくないという心理的なハードルがある
という声が多く聞かれます。
新NISAは、従来の一般NISA・つみたてNISAよりも非課税枠が拡大し、制度もシンプルになった一方で、「すでに保有している課税口座の株や投信をどう扱うか」は個々人の判断が必要になります。
高齢者が新NISAとどう向き合うかを考えるうえで、大切な視点としては、例えば次のようなものがあります。
- 1. 投資の目的を「増やす」から「守る+取り崩す」へ
現役時代は「長期で資産を増やす」ことが主目的でも、年金生活に入ると、目的は- 資産を大きく減らさないこと
- 必要な生活費を無理なく取り崩すこと
に変わっていきます。「何歳まで投資を続けるか」というより、「どの程度リスク資産を持ち続けるか」というバランスの問題になってきます。
- 2. 配当・分配金を「どう受け取るか」
年金生活では、配当や分配金が心理的な安心材料になる一方、- 高配当株・毎月分配型ファンドに偏りすぎると、元本毀損や値下がりリスクが大きくなる
- 必要以上に配当を重視しすぎると、本来は成長重視のインデックスや分散投資のメリットを活かしにくくなる
という側面もあります。「生活費に必要な分だけを配当で賄い、あとは成長重視のファンドで運用する」といったバランスの取り方が重要です。
- 3. 「やめどき」を年齢で決めすぎない
「何歳で投資をやめるべきか」という問いに、画一的な正解はありません。- 資産額や年金額、家族構成
- 健康状態や介護の可能性
- 投資経験やリスク許容度
などによって、適切なリスクの取り方は人それぞれです。
一つの考え方としては、リスク資産の割合を段階的に減らしていく方法があります。例えば、- 70代前半までは、全体のうち一定割合を株式・投信で運用
- 80代に向けて、少しずつ現金・預貯金の比率を高める
といった形です。
新NISAを利用するかどうかは、高齢者にとっても重要なテーマですが、「せっかくの配当を失いたくない」という気持ちと、「非課税メリットを活かしたい」という合理性のバランスを、家族や専門家と相談しながら考えていくことが大切です。
世代別に見た「積立投資」と「新NISA」のポイント
ここまでのニュースを踏まえて、20代・30代・高齢世代それぞれにとってのポイントを整理してみます。
20代:とにかく「早く・小さく・長く」
- 少額でも早くスタート
23歳女性の「月3,000円」のように、まずは続けられる金額で始めることが大切です。S&P500のようなインデックスファンドを活用すれば、世界的な大企業にまとめて投資することができます。 - 「絶対に手をつけない」ルール作り
途中で相場が下がって不安になっても、すぐにやめない・売らないためのマイルールを決めておくと、感情に振り回されにくくなります。 - 新NISAの枠を少しずつ埋める
最初から1,800万円の枠を意識する必要はありません。まずは、毎月の積立でつみたて投資枠を活用し、余裕が出てきたら成長投資枠も検討する、という段階的な使い方で十分です。
30代:ライフイベントと「リスクの取り方」のバランス
- 住宅購入・子育てとの両立
30代は、結婚・出産・住宅購入など、まとまったお金が必要になる時期でもあります。「全部投資に回す」のではなく、「いつ、どのくらい現金が必要になるか」を逆算してリスク資産の割合を調整することがポイントです。 - 成長投資枠の戦略的活用
安定的な積立が続けられるようになったら、成長投資枠で一括投資やスポット買いを行うことで、相場のチャンスを取りに行くことも検討できます。ただし、「一気に増やそう」とリスクを取りすぎないよう注意が必要です。 - 教育資金・老後資金を分けて考える
教育資金はおおよその「使う時期」が決まっていますが、老後資金はより長期で運用できます。目的別に口座やファンドを分けることで、取り崩し時期に合わせた設計がしやすくなります。
高齢世代:安心して暮らすための「守りと取り崩し」
- 生活費の何割を配当・分配金に頼るか
「年金+配当」で生活する場合、どの程度を投資からの収入に頼るかで、適切なリスクの取り方は変わります。「ギリギリまで投資収入に頼る」のではなく、余裕を持った設計を心がけたいところです。 - 銘柄の整理とシンプル化
長年投資を続けてきた人ほど、保有銘柄が多く複雑になりがちです。- 似たような投資信託がいくつもある
- 昔買ったままの銘柄が、そのまま放置されている
といった場合は、全体を整理してシンプルにすることも大切です。
- 家族・専門家との共有
年齢が上がるほど、「自分に何かあったとき」に備えて、保有資産や運用方針を家族や専門家と共有しておくことが重要になります。特に新NISA口座は、相続の観点でも整理が必要です。
「積立投資」は、相場が良いときも悪いときも続けられる仕組みづくり
今回のニュースで取り上げられた、
- 23歳女性の月3,000円のS&P500積立
- 20〜30代の新NISA・成長投資枠の使いこなし
- 年金生活者の配当へのこだわりと、新NISA時代の悩み
という3つの話題は、いずれも「自分の年代・状況に合ったリスクの取り方を考える」という共通点を持っています。
S&P500は、ここ数年の実績だけを見れば非常に高いリターンを上げてきましたが、当然ながら、将来も同じように上がり続ける保証はありません。日本で人気のS&P500連動ファンドも、「過去の成績は将来の成果を保証するものではない」と明記しています。
だからこそ、
- 少額から長く続けること
- 生活に無理のない範囲で積立額を決めること
- 相場に一喜一憂しすぎず、自分なりのルールを持つこと
が、どの世代にも共通して大切になってきます。
新NISAという大きな非課税の器ができたことで、20代から年金生活者まで、幅広い世代が投資をより身近に感じる時代になりました。今回紹介したニュースをきっかけに、ご自身の年代やライフプランに照らして、「自分にとってちょうどよい積立投資との距離感」を、改めて考えてみてはいかがでしょうか。




