2025年、健康保険証の大転換と「マイナ保険証」~資格確認書・スマホ保険証の複雑化と現場の実情まで

はじめに:2025年問題、健康保険証が迎える歴史的な転換点

2025年12月1日、健康保険証(紙・プラスチック)が歴史的な役目を終えます。これまで多くの人が慣れ親しんできた健康保険証が、同日をもって完全に廃止され、翌日の12月2日からはマイナンバーカードによる「マイナ保険証」への一本化が全国で始まります。

この制度変更は、日本の社会保障制度の根幹を揺るがす重要な改革であり、厚生労働省とデジタル庁が旗振り役となって進めてきました。その目的は単なるカード変更ではなく、医療のデジタル化「医療DX」を本格推進し、高齢化の進展や多様化する医療現場の課題を解消することにあります。

マイナ保険証とは?仕組みと基本の使い方

  • マイナンバーカードの健康保険証機能を登録=マイナ保険証
  • 医療機関に設置された専用リーダーにカードをかざし、顔認証または暗証番号で本人確認
  • 保険資格がオンラインでリアルタイムに照合される
  • 院内・薬局の受付で、診療や薬の受け渡しが円滑に

従来の目視や紙台帳と違い、マイナ保険証では保険資格・本人確認が瞬時に完了します。転職や引越しで保険が切り替わる場合、従来のような待ち時間も大幅削減されます。

また、保険資格以外の診療情報(薬剤や健診など)は、本人が同意した場合に限りマイナポータルで確認・共有できます。個人情報はカード自体に記録されず、必要時のみ安全にアクセスできる形になっています。

「2025年問題」の最大の山場~どうして12月1日に注目が集まるのか

一連の制度変更の中でも、特に2025年12月1日は大きな節目です。この日で、会社員・公務員らが加入する協会けんぽ、健保組合、共済など、ほぼ全ての健康保険証の「有効期限」が一斉に切れます。以降は原則としてマイナンバーカードか「資格確認書」のみが使えるようになります。

この一斉切り替えのタイミングで、大量の人がマイナ保険証を使うことになりますが、まだ約3割の国民が移行できていないという現状があります。政府・自治体は、切れ目なく医療が受けられるよう、暫定措置や説明会の実施を急いでいます。

「資格確認書」とは?マイナ保険証を持っていない人への救済策

しかし、マイナンバーカードをまだ持っていない人や、何らかの理由で登録していない人もいます。こうした場合、医療機関で困らないように設けられたのが「資格確認書」です。

  • 資格確認書は、自治体または保険者が発行
  • マイナンバーの未登録、カード紛失時、一時的な対応として取得可能
  • 申請は郵送・窓口で(自治体によって異なる)

ただし、「資格確認書」は現状説明が十分とは言えず、不安や手続きの煩雑さから申請が遅れたり、医療機関側が制度に十分対応できていないケースも多々発生しています。

制度移行の混乱期では、こうした救済的な仕組みが注目を集めていますが、一方で現場の事務負担増や情報の錯綜も指摘されます。

スマホ保険証、本格導入も現場は「使えない」?

2025年9月19日からは「スマホ保険証」も開始されます。これは、スマートフォンに保険証機能付きマイナアプリを導入し、医療機関の端末にスマホをかざして本人確認する仕組みです。

  • スマホを使って保険資格を提示
  • 顔認証、マイナンバー認証など多様な手法
  • 一部対応カードリーダーが必要で、設置は任意

ただし、導入現場からは「使えない」「機器トラブル」「システムが複雑」といった声も出ています。特に、救急医療のような一刻を争う場面では、迅速な資格確認が難しく、数十秒の遅れが命にかかわることも。さらに導入コストが約20億円とも言われ、コストパフォーマンスへの疑問も根強いと報じられています。

現場の声~医療機関や患者が直面する課題と不安

  • 新しいシステムへのアクセスが困難な高齢者、IT弱者への対応
  • 資格確認書申請が煩雑:一部自治体では受付遅延や説明不足で混乱
  • 医療機関側もシステム準備や職員教育が追いつかないケース
  • 情報漏洩・セキュリティの不安:オンライン資格確認システムの運用に課題

医療DX推進により、健診・薬剤情報の共有や重複診療防止など、メリットも大きい一方、現場ではシステム過渡期特有の混乱・トラブル回避に向けた慎重な対応が求められています。

医療DXが高齢社会の課題解決につながる可能性

政府はこの変革の大義として、「IT活用によって医療現場の効率化、不必要な重複診療の防止、本人確認の徹底」による高齢社会の課題解消を狙っています。

  • 医療機関間で健診・薬剤情報がオンライン共有可能(本人同意制)
  • 顔認証・暗証番号による本人認証でなりすまし・不正防止
  • 診療情報はカードには保存されず、安全に管理
  • 国民の利便性・医療の質向上へ

今後は出生時からマイナンバーカードと保険資格が自動紐付けされる仕組みも一案となっています。社会の一層のデジタル化・負担軽減に向け、制度の一元化・簡素化が求められる状況です。

制度移行に向けて今できる準備とは

  • マイナンバーカードの申請・作成:未取得の場合は早めに申請
  • 健康保険証利用登録:マイナポータル等から登録手続き
  • 疑問・不安は自治体、保険者の説明会や相談窓口を活用
  • 高齢者、ITに不慣れな方などは家族・地域で丁寧なサポートが重要

移行まで半年を切っている今、多くの現場が慌ただしく制度の理解と適応に努めています。

まとめ:複雑さを越えて「切れ目のない医療」に

健康保険証廃止とマイナ保険証への完全移行には、制度の複雑さや現場の混乱も否めません。それでも、長期的には医療の効率化や質向上、国民の安心につながる可能性を秘めています。誰もが安心して医療を受けられるためには、行政と現場、そして国民一人ひとりが正しく理解し、協力して準備を進めることが欠かせません。

今後も制度の細部や運用は改良され続ける見込みです。自身の健康と医療現場の安全のため、少しずつでも新しい仕組みに理解を深めていくことが重要です。

参考元