中外製薬、早期開発5プロジェクトの自社開発を一括中止

2025年7月24日、中外製薬株式会社は同日開催した決算説明会の場で、早期臨床開発段階にある自社創製の医薬品候補5品目の開発を一括で中止することを発表しました。対象となるのは固形がんや子宮内膜症などを対象とした抗体医薬品の以下5品目です。

  • LUNA18(中分子のRAS阻害薬、固形がん対象)
  • SAIL66(CLDN6陽性固形がん対象のトリスペシフィック抗体)
  • SOF10(抗潜在型TGF-β1抗体、固形がん対象)
  • STA551(抗CD137アゴニストスイッチ抗体、固形がん対象)
  • AMY109(抗IL-8リサイクリング抗体、子宮内膜症対象)

これら5プロジェクトはいずれも臨床第1相(P1)から第2相(P2)にかけての早期開発段階にありましたが、社長である奥田修氏は「競合状況を踏まえた事業ポートフォリオの優先順位付けの結果」として、リソースの最適化と重点的な開発推進を目的に中止を決断したと説明しています。

また、中分子創薬の戦略においてはLUNA18から新たにAUBE00という候補物質へと切り替えを行い、効率的な製法開発と早期の価値証明に注力する方針です。これに伴い、中外製薬は研究開発機能の強化のため新たな研究棟(UKX)の建設も発表し、持続可能な環境対策も並行して進めることを明らかにしました。

2025年4〜6月期(第2四半期)決算は減益に―最終利益13%減少

同日に発表された2025年12月期第2四半期決算によると、中外製薬の4〜6月期の最終利益は前年同期比で約13%減少しました。主要因としては、開発投資の見直しに伴う研究開発費の増加や、競合製品の市場動向の影響が挙げられています。

中外製薬はこれまで自社創製の新薬開発に積極的に取り組んできましたが、今回の5品目の開発中止によってパイプラインの構造改革が進むことになるため、今後はより競争力のある製品に資源を集中し、事業の効率化を図る考えです。

中外製薬・奥田社長のコメント

奥田修社長CEOは決算説明会で、「多くのプロジェクトを抱える創薬開発においては、限られた資源を最も効果的に投じることが重要」と述べ、開発中止の判断は競合の動向や投資の優先順位を慎重に勘案した結果だと説明しました。

また、「中分子医薬品のプラットフォーム開発を強化し、医薬品の製法開発から臨床開発へと一気通貫で迅速に進めることで、革新的医薬品の提供を加速したい」と意欲を示しました。さらに、社会的課題の一つである環境負荷低減にも積極的に取り組み、「新研究棟の建設は環境対策の加速化にもつながる」と語っています。

今後の展望

中外製薬は今回の開発中止を経て、医薬品開発の選択と集中を図り、より絞り込んだパイプラインでの成功を目指します。特に中分子領域では、新たな候補物質AUBE00を軸に、製法研究の効率化と臨床開発のスピードアップに取り組む計画です。

また、研究基盤の強化を続けることで長期的には持続的成長を見据え、患者に革新的な治療薬を早期に届けることを重視しています。

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