TSMCの米国製半導体コスト、台湾製より高いとAMDが指摘
2025年7月24日、半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)が米アリゾナ州に展開している工場で製造される半導体のコストが、台湾で製造される製品よりも5〜20%高くなるとの発表がありました。この発表は、米半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の最高経営責任者(CEO)、リサ・スー氏によって行われました。
供給の多様化の重要性を強調
リサ・スーCEOは、米国アリゾナのTSMC工場で生産される半導体のコストが台湾の工場より高いことを認めた上で、供給元を多角化するためのコスト増は十分に価値があると説明しています。これは、新型コロナウイルス禍で経験した世界的な半導体不足といった混乱を抑えるために重要な戦略だと述べました。
AMDは2025年内に最初の製品をアリゾナ工場から受け取る予定であり、今後も米国での半導体生産を活用しつつ、リスク管理をしっかり行う方針であることがわかりました。
TSMCアリゾナ工場のコストが台湾より高い背景
TSMCは、2025年後半にアリゾナ工場で先端プロセスの「4nm」半導体の生産を開始する計画です。報道によれば、アリゾナ工場での生産コストは台湾工場に比べて最大30%高くなるとも言われています。
このコスト差の背景には、以下のような要因が考えられます。
- 労働力コストの違い:米国は台湾に比べて労働者の賃金が高いことが多く、生産経費に反映されやすい。
- 資材および設備費:米国内での製造に伴う設備投資や資材調達コストの増加。
- 運営コストの違い:規制遵守や環境保護への対応コスト、税制面での影響も加味される。
これらの要素が組み合わさり、アリゾナでの生産単価が台湾に比べて上昇していると報告されています。
業界への影響と今後の展望
TSMCは世界の先端半導体製造において重要な位置を占めており、その米国での生産はCHIPS法の支援も受けつつ、米国内の半導体自給率向上の鍵を握っています。
コスト面での差はあるものの、供給の多様化と地政学リスクの軽減を目的に、顧客企業は米国製半導体の利用を続ける見込みです。
また、TSMCは最新のプロセス技術向上により、一枚のウェハーあたりのトランジスタ数を増やすことで、単体のコスト効率を改善する努力も進めています。例えば、2nmから1.4nmプロセスへの進展によりトランジスタ単価が下がる事例もあり、こうした技術革新がコスト問題に対処する可能性も注目されています。
まとめ
- AMDのリサ・スーCEOの発表により、TSMCの米国工場で作られる半導体のコストが台湾工場より5~20%高いことが明らかになった。
- 米国製生産のコスト増は供給リスク分散というメリットと引き換えであり、業界全体で受け入れられている。
- アリゾナ工場は2025年後半に4nmプロセスの生産を開始予定で、台湾に比べて最大30%高いコストが想定されている。
- 労働賃金や設備投資、運営コストの違いがコスト差の主な要因とされている。
- TSMCの技術革新によるトランジスタ単位コスト低減も期待されており、長期的にはコスト問題を軽減する動きが見込まれる。
今回の発表は、半導体業界のサプライチェーン再構築の難しさと重要性を示すものであり、今後も注目されるトピックとなるでしょう。