三菱自動車、中国でのエンジン生産を終了し完全撤退へ
三菱自動車は2025年7月22日、中国におけるエンジン生産事業を終了し、現地の合弁会社との関係を解消すると発表しました。これにより、三菱自動車は中国市場での自動車の生産から完全に撤退することとなります。
中国からの撤退背景と経緯
三菱自動車は1997年に中国の現地企業と合弁会社「瀋陽航天三菱汽車発動機製造」を設立し、中国国内でエンジンの生産と供給を行ってきました。合弁会社では、自社向けだけでなく、他の中国メーカーへのエンジン供給も担っていました。
しかし、2023年には中国国内での三菱自動車の車両生産事業が終了。その後もエンジン事業は継続されていましたが、近年の中国市場における電気自動車(EV)の普及拡大により、内燃機関車向けエンジンの需要が急激に減少しました。この市場環境の変化を踏まえ、三菱自動車はエンジン事業の合弁を解消し、生産を終了、完全撤退を決断しました。
EVシフトがもたらした影響
中国は世界最大の自動車市場であり、政府主導のEV推進政策もあって電気自動車の普及が急速に進んでいます。内燃機関搭載のガソリン車やディーゼル車の需要は大幅に縮小し、三菱自動車が展開してきたエンジン生産ビジネスに直接的な影響が及びました。
こうした背景から、従来型の自動車エンジン生産に固執することは採算面で見合わず、EVや次世代技術に経営資源を集中させるための戦略的な決断と位置付けられています。
撤退後の現地事業と従業員の対応
合弁解消に伴い三菱自動車は現地企業との提携を終了しますが、工場自体は引き続き操業し、従業員の雇用維持も見込まれています。三菱自動車は生産から撤退するものの、中国市場に対する販売やサービスは輸入車を中心に継続するとしています。
日系ブランドの中国市場での苦戦
三菱自動車は今回の撤退により、中国市場から完全に退く格好となり、スズキに続く日系自動車ブランドの苦境が浮き彫りとなりました。中国の消費者のニーズの変化や現地競合の激化、EVシフトのスピードに対応できず、日系ブランドの「黄昏」と評される動きに拍車がかかっています。
今後の三菱自動車の重点市場
三菱自動車は中国撤退の一方で、成長が期待される東南アジア市場への経営資源の再配分を進めています。特にタイ、インドネシア、フィリピンなどの国々での展開強化を目指し、EVやハイブリッド車の投入を加速させる計画です。
まとめ
- 三菱自動車は中国のエンジン生産事業を2025年7月に終了、合弁を解消し完全撤退を決定。
- 1997年に設立した合弁会社でエンジンを生産、23年に車両生産撤退後も事業を継続していたが、EV普及による内燃機関需要の減少で撤退に至った。
- 工場は引き続き操業し、従業員の雇用も継続見込み。販売やサービスは輸入車中心で継続される。
- 日系ブランドの中国市場での苦戦が鮮明となり、三菱自動車もスズキに続き中国事業からの撤退となった。
- 今後は成長市場である東南アジア諸国に注力し、EVや次世代自動車技術の展開を加速させる方針。
三菱自動車の今回の中国市場撤退は、自動車産業のEVシフトの激しさを象徴するとともに、グローバルな事業戦略の見直しを促す重要な動きといえます。