「ブラックサンダー頼み」からの脱却――有楽製菓「ミルクマニア」誕生の舞台裏

有楽製菓といえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのがチョコレート菓子「ブラックサンダー」です。コンビニやスーパーで見かける定番商品として、長年にわたり愛されてきました。
その一方で、同社は長らく「ブラックサンダー頼み」とも言える状況が続いており、次の主力商品づくりが大きな課題となっていました。
そうした中で誕生したのが、新商品「ミルクマニア」です。発売からわずか4カ月で600万本を売り上げ、「ブラックサンダーに続く第二の柱」として急速に存在感を高めています。

4カ月で600万本、「ミルクマニア」快進撃のインパクト

「ミルクマニア」は、有楽製菓が新たな成長の軸として送り出したチョコレート菓子です。発売開始から約4カ月という短い期間で、累計販売本数は600万本に達しました。これは、新ブランドとしては極めて好調な滑り出しと言えます。

ブラックサンダーは、ザクザクとした食感と濃厚なチョコレート感が特徴で、「おいしさイナズマ級」のキャッチコピーとともに、若年層を中心に人気を得てきました。一方で、「ミルクマニア」は、その名の通りミルクのコクとまろやかさを前面に打ち出した商品です。ブラックサンダーで培った知名度や販売網を活かしつつ、味わいやターゲット層を広げることで、新たな需要を掘り起こしています。

この600万本という数字は、単に「話題になった」というレベルではなく、メーカーにとって第2の柱と呼べるだけのポテンシャルがあることを示すものです。背景には、商品コンセプトの明確さ、これまでの企業課題への正面からの向き合い方、そして販売戦略の緻密さがあります。

「ブラックサンダー頼み」から脱却したい――有楽製菓が抱えていた課題

ヒット商品に支えられた成長と、その裏側のリスク

有楽製菓は、ブラックサンダーの大ヒットによって大きく成長してきました。コンビニやスーパー、ドラッグストアなど、さまざまな販路で広く取り扱われており、期間限定フレーバーやコラボ商品も多数展開されてきました。
しかし、その一方で、売り上げの多くをブラックサンダーに依存している状態が続いていたことも事実です。

特定の看板商品に依存するビジネスモデルは、ヒットしている間は安定的な収益をもたらしますが、

  • 市場の嗜好変化や健康志向の高まり
  • 競合商品の台頭
  • 原材料価格の高騰や調達リスク

といった外部環境の変化の影響を受けやすいというリスクも抱えています。
「ブラックサンダー頼み」という構造をそのままにしておくことは、長期的な企業の安定成長という観点から見ると、大きな課題でした。

次のヒットをなかなか生み出せないジレンマ

有楽製菓はこれまでも、ブラックサンダーの派生商品や、新たなブランドの開発に取り組んできました。しかし、ブラックサンダーほどの「第2の柱」と呼べる商品を育てることは容易ではありません。
消費者の頭の中には「有楽製菓=ブラックサンダー」というイメージが強く定着しており、新商品を発売しても、どうしても比較されたり、埋もれてしまったりしがちでした。

また、社内においても、主力商品の存在感が強いほど、「その成功パターンをなぞる」開発になってしまうというジレンマがあります。ブラックサンダーのブランド力は頼もしい一方で、それに過度に寄りかかる体質から抜け出すことが、同社にとっての中長期的なテーマとなっていました。

なぜ「ミルクマニア」は“第二の柱”に浮上したのか

「ミルクのコク」に焦点を当てた明確なコンセプト

「ミルクマニア」が注目を集めた大きな理由の1つが、コンセプトのわかりやすさです。商品名からして「ミルク好きのためのチョコ菓子」であることが一目で伝わり、「どんな味なのか」を直感的にイメージしやすくなっています。

ブラックサンダーが「ザクザク食感」と「チョコの濃さ」で勝負していたのに対し、ミルクマニアはまろやかな甘さと、ミルクの風味をしっかり感じられる味わいに焦点を当てています。これにより、ブラックサンダーのコアファンとは少し違う層、たとえば

  • 甘すぎるものではなく、ミルク感のあるやさしい味が好きな人
  • 子どもから大人まで一緒に楽しめるおやつを求める家庭層
  • 「ごつい」パッケージより、少しやわらかいイメージの商品を選びたい人

といった新たなニーズを取り込むことに成功しています。

ブラックサンダーとは違う“キャラクター”づくり

「ブラックサンダー頼み」から脱却するには、新商品を単なるバリエーションではなく、ブラックサンダーとは別の「柱」として育てていくことが欠かせません。「ミルクマニア」は、この点を意識して、味や見た目だけでなく、ブランドのキャラクターづくりにも工夫が凝らされています。

ブラックサンダーが、力強くて少し“攻めた”印象のコピーやパッケージデザインで知られているのに対し、ミルクマニアは、やわらかく親しみやすい世界観を重視した展開が行われています。これにより、店頭で並んだときにも互いに食い合うのではなく、異なる気分やシーンで選ばれる選択肢として棲み分けがしやすくなっています。

既存の強みを活かしつつ、依存体質から抜け出す戦略

有楽製菓にとって、「ミルクマニア」はまったくゼロからのチャレンジではありません。ブラックサンダーで培った

  • 全国の小売店との取引関係
  • コンビニ・量販店での棚確保のノウハウ
  • チョコレート菓子の製造技術や品質管理

といったビジネス上の強みを最大限活用できるジャンルでの商品だからです。

つまり、「ブラックサンダー頼み」から脱却するといっても、ブラックサンダーの存在を否定したり、まったく異なる分野に進出するのではなく、既存の強みを軸にしながら、多角化を図るアプローチが取られています。その中で、ミルクという味の方向性を前面に押し出したことが、結果として「第二の柱」としての地位をつかみつつある要因だと言えるでしょう。

「ブラックサンダー頼み」からの脱却の経緯

なぜ今、“第二の柱”が必要だったのか

有楽製菓が「ブラックサンダー頼み」からの脱却を本格的に進めた背景には、社会や市場の変化があります。チョコレート菓子を取り巻く環境は、この数年で大きく様変わりしました。

  • 健康志向・低糖質志向の高まり
  • コンビニスイーツの高品質化による競争激化
  • SNSを通じた「映え」やストーリー性への関心の高まり

こうした変化の中で、1つのヒット商品だけに依存していると、消費者ニーズの変化に対応しきれなくなるリスクがあります。企業として持続的に成長していくためには、複数のブランドや商品カテゴリーをバランスよく育てていくことが求められます。

そのため、有楽製菓はブラックサンダーのブランド強化と並行して、「次の主力候補」となり得る商品の開発を模索してきました。その中で、「ミルクマニア」は、ミルクのコクややさしさを軸にした新路線として企画され、実際に市場で大きな反響を得ることに成功しました。

「第二の柱」を育てるという発想への転換

「売れる新商品をつくる」のと「第二の柱を育てる」のでは、企業の姿勢や時間軸が大きく異なります。前者が短期的なヒットを狙う発想だとすれば、後者は中長期的にブランドを育成する考え方です。
ミルクマニアは後者の考え方で位置づけられており、単発の商品ではなく、継続的にシリーズ展開していくことを前提にしたブランドとして捉えられています。

ブラックサンダーの経験から、有楽製菓は「継続的な改良や限定フレーバー」「コラボ企画」「販路ごとの特徴を活かした展開」など、ブランドを長く育てるためのノウハウを蓄積してきました。ミルクマニアは、まさにそのノウハウを活かす対象として選ばれたと言えます。

「ミルクマニア」がもたらす有楽製菓の新しい姿

商品ポートフォリオのバランスが改善

4カ月で600万本という実績を上げたミルクマニアは、ブラックサンダー偏重だった売上構成を徐々に変えつつあります。もちろん、現時点ではブラックサンダーの存在感が圧倒的に大きいことに変わりはありませんが、「第2の売上の柱候補」が明確に見えたことの意味は大きいと言えるでしょう。

今後、ミルクマニアの販売が安定的に伸びることで、

  • 収益源の分散による経営の安定化
  • 新たな顧客層の開拓
  • ブランド全体としての発信力強化

といった効果が期待されます。ブラックサンダーとミルクマニアの2本柱体制が確立すれば、有楽製菓はより柔軟に市場変化に対応できる体制に近づくことになります。

消費者にとっての選択肢が広がる

有楽製菓の挑戦は、消費者側から見てもメリットがあります。ブラックサンダーが好きな人にとっては、同じメーカーが手がける別の味わいのチョコ菓子が選べるようになり、気分やシーンによって商品を選び分ける楽しみが増えます。

また、「ブラックサンダーはちょっと濃いかな」「ザクザク食感が得意ではない」という人にとっても、ミルクマニアは新たな選択肢になります。ミルクのコクを活かしたやさしい味わいであれば、子どもから大人まで、幅広い世代で分け合って楽しめるおやつとして受け入れられやすいでしょう。

これからの「ミルクマニア」と有楽製菓に注目

「ブラックサンダー頼み」からの脱却を掲げ、有楽製菓が送り出した「ミルクマニア」。発売4カ月で600万本という販売実績は、単なる話題づくりを超え、第二の柱として育ちうるブランドであることを強く印象づけました。

ブラックサンダーで得た成功体験と、そこから生まれた課題意識を踏まえつつ、ミルクマニアは「ミルクのコクとやさしさ」という新たな価値軸を打ち出しています。これにより、有楽製菓は「ブラックサンダーの会社」から、複数の魅力的なブランドを持つ菓子メーカーへと、一歩ずつ歩みを進めていると言えるでしょう。

今後、ミルクマニアがどのようなバリエーション展開を見せるのか、ブラックサンダーとの関係性をどう育てていくのか。
「第2の柱」を本当の意味で定着させていけるかどうかは、これからの取り組みにかかっています。コンビニやスーパーの棚で、ブラックサンダーと肩を並べるミルクマニアの姿は、有楽製菓の戦略転換とチャレンジの象徴でもあります。
これからの動きにも、引き続き注目が集まりそうです。

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