博報堂とDAZN、AIで「スポーツ感情スコア」を開発 視聴者の感動を数値化する新時代へ

博報堂とスポーツ動画配信サービス「DAZN」を運営するDAZN Japan Investmentは、AIを活用してスポーツ観戦時の感情を可視化する独自の「スポーツ感情スコア」を開発しました。この革新的な技術は、視聴者がスポーツ観戦中に感じる感動や興奮を数値化し、マーケティングや広告配信の新たな指標として活用される見込みです。

「スポーツ感情スコア」とは何か

スポーツ感情スコアは、AIを用いた独自のアルゴリズムにより、1試合単位で視聴者の感情を定量的に算出する仕組みです。従来のテレビ視聴率とは異なり、観客がどの瞬間に、どの程度の感動や興奮を感じたかを数値で表します。

このスコアを算出する際に活用されるデータは多岐にわたります。試合映像と音声のほか、スタジアムでの歓声の大きさ、選手のアクション内容、プレー位置などの詳細なスタッツデータを組み合わせています。さらに、単なる勝敗や得点シーンだけでなく、試合展開のドラマ性、ゴールまでの距離、緊迫した局面での細かなプレー内容なども加味されるため、より深い感情の動きを捉えることができます。

鹿島アントラーズの2025年全試合で実施

この新技術は、2025年明治安田J1リーグで優勝した鹿島アントラーズの全38試合を対象に、第一弾として実装されました。博報堂とDAZNは、鹿島の全試合データを分析し、ファンダム全体(熱心なファンを含む視聴者全体)の心の動きを数値化しました。

分析結果として注目されるのが、2025年5月11日に国立競技場で行われた川崎フロンターレ戦で、スポーツ感情スコアが「390.0」と最も高い値を記録したという点です。この試合では、素早い試合展開によって多くのシュートが発生し、観客の感動が最高潮に達しました。さらに、瞬間最高スコアは、鹿島の田川選手がゴールキーパーとの1対1を制して決めた逆転ゴールの瞬間だったと報告されています。国立競技場という特別な会場の雰囲気が、選手のパフォーマンスを高める要因となり、結果的に視聴者の感情スコアも大きく上昇したと考えられます。

マーケティングと広告戦略への応用

このスポーツ感情スコアは、単なる分析ツールにとどまりません。企業のマーケティング戦略に大きな影響を与える可能性を秘めています。

具体的な活用方法としては、試合の展開に応じて変化する視聴者の感情に合わせて、最適な商品や広告表現を出し分けるという手法が考えられます。例えば、感情スコアが高い興奮度の高い局面では、エネルギッシュな広告を配信し、落ち着いた局面では静かで落ち着いた広告を配信するなど、きめ細かい広告戦略が実現可能になります。

また、視聴率とは異なる新しい評価軸として、スポーツコンテンツの価値を測定する指標としても期待されています。これまで数字では捉えられなかった「感動」や「興奮」といった定性的な価値が、定量的に測定できるようになることで、スポーツメディアのビジネス価値評価が大きく変わる可能性があります。

博報堂とDAZNの戦略的提携

博報堂とDAZNは、2025年5月に戦略的提携契約を締結し、AIを活用した新たな視聴体験の創出に向けた取り組みを進めてきました。今回のスポーツ感情スコア開発は、この提携の具体的な成果の一つとなっています。

両社の協力により、AIを活用した新たな視聴体験の創出と、感情を起点とした広告クリエイティブ開発に向けた取り組みが加速することが予想されます。博報堂は広告やマーケティングの知見を、DAZNはスポーツ動画配信の技術やコンテンツを持ち寄ることで、相乗効果を生み出す体制が整備されました。

スポーツ業界における新たな可能性

スポーツ感情スコアの開発は、スポーツ業界全体に新たな可能性をもたらします。これまで、スポーツの価値や魅力は、視聴数や観客数という限定的な指標でしか測定されてきませんでした。しかし、このスコアにより、ファンがどれだけ感動し、どの試合や瞬間に心を揺さぶられたのかが、具体的な数字で示されるようになります。

今後、このスコアが他のスポーツやリーグにも拡大されれば、スポーツ関連企業の広告投資判断やスポンサーシップ戦略にも大きな影響を与えることになるでしょう。選手やチームの価値評価、コンテンツ制作の方針なども、従来の視聴率中心の考え方から、より多角的な「感動」の指標を中心とした戦略へとシフトしていく可能性があります。

博報堂とDAZNが開発したスポーツ感情スコアは、デジタル時代におけるスポーツメディアの新たな地平を切り開く、画期的な試みとなるでしょう。

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