「らい予防法」廃止30年を迎える2026年 ハンセン病患者への偏見差別が依然として深刻な状況

ハンセン病患者を強制隔離した「らい予防法」が廃止されて、2026年で30年という節目の年を迎えています。しかし、医学的には既に治癒可能な病気となって久しいにもかかわらず、患者や元患者、その家族に対する偏見・差別は依然として根強く残っているという深刻な現実が明らかになってきました。

国の調査で浮き彫りになった「深刻な偏見差別」

岡山県が実施したハンセン病対策協議会では、国が行った意識調査の結果が報告されました。その結果は衝撃的でした。「ハンセン病問題に関する知識は、社会に十分には浸透しておらず、ハンセン病に係る偏見差別は現存し、依然として深刻な状況にある」という診断が下されたのです。

この調査は、ウェブによる実態調査と郵送によるアンケートの両方で同じ結果となっており、国や県が長年にわたって実施してきた啓発活動が、国民にほとんど届いていないことが浮き彫りになりました。ハンセン病は戦後間もなく、アメリカで開発されたプロミンという薬により治る病気となりましたが、その事実が社会に浸透していないのが実情です。

高齢化する入所者、急務となる将来構想の策定

現在、全国13か所の国立ハンセン病療養所には多くの患者が入所していますが、その実態は極めて深刻です。2025年5月1日現在、入所者数は639人で、平均年齢は88.8歳に達しており、皆が高齢化の一途をたどっています。

日本では約90年にわたり、国の隔離政策の下で患者が療養所に強制的に隔離収容され、断種や堕胎を強制されるなど、重大な人権侵害が行われてきました。こうした過酷な環境を生き抜いてきた患者たちの療養生活を保障することは、国の法的責任です。

しかし現状は、医師の定員割れが続き、入所者の高齢化に伴う介護等のケアの必要性がより一層高まっているにもかかわらず、看護師及び介護員の定員が継続的に減少し、看護及び介護の深刻な質の低下が招かれている状況にあります。入所者の現在及び将来における療養生活を保障するには程遠い状況が続いているのです。

入所者から上がる怒りと切実な願い

こうした中、全国の入所者自治会の代表を務める岡山県の邑久光明園入所者自治会長・屋猛司さん(83歳)は、国の対応に強い怒りを表明しています。

誤った情報を国が流した、それを正当化するために法律まで作った。国民をだましたことになる。もう少し厳しくしてほしい」という屋さんの言葉には、70年以上にわたって隔離され続けた患者たちの深い悔しさと、現在の政策に対する強い不信感が込められています。

屋さんを含む全国の入所者たちは、入所者がいなくなった後も施設を残してほしいという切実な願いを抱いており、そのための将来構想の策定を目指して国との交渉を続けています。これは、ハンセン病問題の歴史を後世に伝え、二度と同じような人権侵害を繰り返さないようにという、患者たちの強い思いなのです。

強化が急務の啓発活動と歴史的保存

ハンセン病患者に対する偏見・差別の解消は、医学的な知見の周知だけでは十分ではないことが明らかになっています。岡山県の担当者も、「正しい知識をきちんと皆さんに届けるのが一番重要」と述べつつ、「なかなか届かない部分もあるが、工夫をしながら若い人に向けて、アニメを使ったり工夫しながら届けていきたい」とコメントしており、より効果的な啓発方法の模索が続いています。

一方、日本弁護士連合会も2025年3月に声明を発表し、国に対して療養所の具体的な将来構想を速やかに策定・実行するよう求めるとともに、歴史的建造物等を一体として永続的に保存・管理していくための具体的な立法や行政上の対策を速やかに講じるよう求めている状況です。

社会全体で向き合うべき課題

ハンセン病の強制隔離政策の出発点は明治時代にさかのぼり、1907年の「癩(らい)予防に関する件」から始まり、1931年の「癩予防法」成立により本格化、そして1996年の「らい予防法」廃止までの長い間続きました。実に90年近くにわたって、国家による人権侵害が継続されていたのです。

ハンセン病は確かに医学的には治癒可能な病気です。しかし、「ハンセン病は治癒されましたが、最大の障害は偏見です」という認識のもと、患者や元患者、その家族が直面する偏見や差別という目に見えない病との戦いは、今なお続いています。

「らい予防法」廃止30年という節目の2026年は、ハンセン病問題を社会全体で改めて向き合う重要な契機となります。療養所の入所者たちの尊厳を守り、その歴史を後世に伝え、真の意味でのハンセン病問題の解決を実現することは、日本社会全体に課せられた急務の課題なのです。

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