隈研吾氏デザイン監修の33億円新庁舎計画が白紙に 1億9000万円の設計費無駄に、北海道八雲町で住民説明会

北海道南部の八雲町は、世界的建築家・隈研吾氏がデザインを監修した新庁舎の建設計画を白紙に戻す方針を明らかにしました。この決定に対し、すでに投じられた1億9000万円の設計費が無駄になることに、住民から強い怒りの声が上がっています

計画の概要と白紙撤回の理由

隈研吾氏が監修した新庁舎は、大きな屋根が特徴の鉄骨3階建てで、木をふんだんに使った設計が施されていました。当初の建設予定価格は約33億円で、2025年11月に着工し、2027年11月末の完成を予定していました。八雲町は老朽化が進む現庁舎(築64年)の建て替えが急務として、国立病院の跡地に新庁舎の建設を進めていたのです

しかし、計画を進める過程でいくつかの深刻な問題が浮上しました。資材高騰などにより建設費が当初より約9億円も増加する見込みとなったほか、2度にわたって行われた入札では応札業者が現れず、入札が不調に終わるという状況が続きました。これらの理由から、1月19日の町議会で萬谷俊美町長は計画を白紙に戻す方針を表明したのです

住民説明会で相次ぐ怒りの声

1月23日、八雲町で開かれた町民向けの説明会には約100人が参加しました。ここで最も争点となったのが、すでに設計費などで投じられた1億9000万円の扱いについてです

参加した住民からは、計画白紙化への理解と、金銭面での憤りが同時に表出しました。計画を白紙に戻すこと自体には理解を示す意見もある一方で、無駄になった費用に対しては厳しい批判が向けられました。

「1億9000万円丸々持っていかれるのは腹立たしいです」「指くわえて見ているんですか?」といった直接的な不満の声が次々と上がりました。さらに「謝れば済んだということではない。議会にも責任あると思いますけど」「議員が賛成したからこういうことになってるんでしょ?」と、町長だけでなく議会の責任を問う意見も多く聞かれました

中には「第2の夕張ですよ!」と、地方自治体の財政危機を連想させるような懸念も表現されました。「返してほしい」「その1億9000万円があれば別の政策に使えたのではないか」といった声も上がり、町民の血税が無駄に終わったことへの失望感が強く感じられました

町長の対応と今後の方針

説明会で萬谷俊美町長は、住民の怒りを正面から受け止める姿勢を見せました。町長は「町民の血税で支払われたものであり、『返してほしい』『その1億9000万円があれば別の政策に使えたのではないか』というご意見もいただいています。そういった観点から本当に申し訳ないと感じています」とコメントしました

一方で、町長は庁舎建設の必要性を強調し、「庁舎を建てなければいけない状況でございますので、いかにコンパクトに安価に立てていくかということで頑張ってまいりたい」と述べ、設計を見直した上での建設継続を宣言しました

設計を一からやり直した場合、新庁舎の完成は2030年ごろにずれ込む見通しです。設計内容をより実用的でコンパクトなものに変更することで、建設費を抑える方針が示されています。

隈研吾デザインが見直しに

今回の白紙撤回により、世界的に有名な建築家・隈研吾氏の設計監修による新庁舎は建設されないこととなりました。木と大屋根を特徴とした独特のデザインは、公民館機能なども備えた「町のシンボル」として計画されていましたが、その構想は実現には至りませんでした

町長は説明会で「庁舎は役場職員が行政事務のために執務する事務所であり、機能性と快適な執務環境は求められていますが、芸術ホールや美術館などの文化施設のようなデザイン性は必要ない施設であると考えております」とも述べており、より実用性重視の設計への転換を示唆しています

住民の複雑な心情

説明会では、白紙撤回そのものには賛成する意見も見られました。「非常に僕は賛成」「ランニングコストを抑えたならば財政負担の軽減も図ることができる」「調査建設を進めることは大賛成」という肯定的な意見もありました

しかし、そうした理解の一方で、すでに失われた1億9000万円という莫大な設計費に対する納得がいかない感情は強く残されています。住民の怒りは、計画変更そのものというより、その過程での判断や責任体制に向けられているという側面も少なくありません。

地方自治体の課題を浮き彫りに

八雲町の新庁舎計画をめぐる一連の出来事は、地方自治体が直面する複数の課題を浮き彫りにしています。資材高騰への対応、入札不調への対策、そして一度決定した大型プロジェクトの見直しに伴う費用損失という問題です

築64年で老朽化が進む現庁舎への対応は急務ですが、今後は慎重に計画を立て直す必要があります。八雲町の今後の対応と、住民との信頼関係の構築が注視されます。

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