中国の台湾包囲軍事演習が示す「戦争準備」の衝撃
中国人民解放軍が12月29日に開始した大規模軍事演習「正義使命-2025」は、台湾周辺での軍事的緊張を急速に高めています。この演習では、台湾を周囲5カ所から取り囲み、実弾射撃や海上・陸上目標への模擬攻撃、主要港湾の封鎖などを実行できる能力を示したものとされています。オーストラリア公共放送(ABC)の分析によれば、「北京が発しているシグナルは極めて明確であり、中国人民解放軍はこれまでになく台湾への軍事行動に近い状態にある」と指摘されています。
習近平指導部の権力基盤強化と軍事的強硬姿勢
2025年10月に開催された中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)は、東アジアの今後の情勢を大きく左右する決定をもたらしました。この会議では、習近平総書記が2027年秋の第21回中国共産党大会で4期目の続投を果たすことが明確になったのです。これにより、習近平指導部は権力闘争での勝利を確定させ、周囲のイエスマンのみで構成された体制が完成しました。
この権力基盤の盤石化に伴い、中国は2023年3月に掲げた「総体国家安全観」(あらゆる分野で安全を最優先する政策)を完全復活させています。少なくとも2027年秋の第21回党大会までは、「経済よりも安全」の大方針のもとで進むことが確実視されています。この方針転換により、人民解放軍による周辺国・地域への軍事挑発や、外交部による「戦狼外交」(狼のように戦う外交)が活発化することは不可避と言えるでしょう。
米国の対応能力の制約と中国の戦略的計算
今回の軍事演習の実施時期が「偶然ではない」との見方が強まっています。複数の分析によれば、アメリカのトランプ大統領は現在、他の国際問題に注意を奪われているという状況があります。具体的には、ウクライナのゼレンスキー大統領やイスラエルのネタニヤフ首相との首脳協議、発展途上国との対立激化、さらにナイジェリアやシリアへの軍事行動などが挙げられます。
ABCが取材した専門家の指摘では、中国が「アメリカは現在、中国の軍事行動に即応できない」と踏んでいる可能性があるとされています。さらに興味深いことに、中国はこの演習を通じて、アメリカにとって台湾防衛がどの程度優先順位の高い問題なのか、その「意思」と「能力」を測っている可能性も指摘されています。これは単なる軍事演習ではなく、国際的パワーバランスを探る戦略的な動きとも言えるのです。
日本への牽制と地域的影響力の誇示
中国の軍事挑発の対象は台湾だけではありません。日本との関係も重要な要素として浮かび上がっています。近年の日中関係悪化に加え、日本の高市早苗首相が「中国が台湾に侵攻した場合、日本が軍事的に対応する可能性がある」と示唆したことを受けて、中国は日本に対しても強硬な姿勢を崩していないのです。
中国は、台湾をめぐる軍事演習を通じて、日本に対しても圧力をかけ、自国の地域的・国際的影響力を誇示しているとみられています。これは日本の防衛体制の整備が急ピッチで進む中での牽制行動となっており、東アジア全体の安全保障環境を一層複雑にしています。
経済と安全保障のトレードオフ
中国の政策転換には、深刻な経済的代償が伴う可能性があります。2026年の中国経済の「V字回復」は期待薄だとの見方が広がっています。経済よりも安全を優先する大方針の下では、市場改革よりも統制が強化され、外資の流出も懸念されます。
2027年秋の党大会までは、中国の強硬路線は確実に続くと予測されています。習近平総書記の周囲はもはやイエスマンばかりであり、政策を諫める幹部も存在しないという状況では、この傾向を止める要因は限定的です。
日中関係の「新しい常態」
2026年、日中関係は「戦略的互恵関係」という建前の裏側で、安全保障上の緊張が常態化する局面を迎えます。中国の台湾周辺での軍事活動の活発化と、それに対する日本の防衛費増額による防衛力強化が並行して進むことになるでしょう。
東アジアの安全保障情勢は、今後数年間で歴史的な転換点を迎える可能性があります。中国の「戦争準備」が本当にどの段階にあるのか、そして2027年にどのような決定がなされるのかについては、継続的な注視が必要な状況が続きます。日本としても、防衛態勢の整備と外交努力の両立が求められる時代へと突入しているのです。



