精神障害者保健福祉手帳の所持者が154万人超に到達――5年連続増加で社会全体の受け入れが進む
厚生労働省の最新調査によると、精神障害者保健福祉手帳の所持者数が急速に増加しています。2024年度末時点で154万7433人に達し、前年比で10万9340人増加した実績が明らかになりました。この増加は単なる統計的な変化ではなく、日本の福祉制度と社会全体における精神障害者への対応姿勢が大きく変わっていることを象徴しています。
5年連続で増加し続ける所持者数
手帳の所持者数は2020年度から2024年度まで5年間連続で増加しており、毎年平均で約10万人のペースで増えています。この数字は、有効期限が切れていない有効な手帳を持つ人を集計したもので、手帳が2年ごとの更新制であることを考慮した実数です。
特に注目すべき点は、この増加傾向が安定的かつ着実に進んでいることです。2022年度末時点では134万5468人でしたが、わずか2年で20万人以上増加したことになります。この急速な増加の背景には、精神疾患に対する社会的認識の向上と、手帳制度を利用する人たちの増加が考えられます。
等級別では「2級」が過半数を占める
手帳は1級から3級までの等級に分かれており、2024年度末時点で2級が89万7292人と全体の過半数を占めている状況です。
等級の定義は以下の通りです:
- 1級:日常生活のほとんどにおいて自力で行うことが困難で、常時の介助や支援が必要な状態
- 2級:日常生活に著しい制限があり、日常の多くの場面で継続的な支援や配慮を必要とする状態
- 3級:社会生活での制限や配慮を必要とする状態
興味深いことに、前年比の増加率が最も高かったのは3級で、10.0%の増加率を示している。これは、比較的軽度の症状で手帳取得を検討する人が増えていることを意味しており、早期対応と予防的支援への関心が高まっていることを示唆しています。
他の障害者手帳との比較で見える精神障害者への支援拡大
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3つの手帳の最新データを比較すると、精神障害者への支援拡大の動きがより明確に見えてきます。
2024年度の前年比増加率では、精神障害者が15.7%増と最も高い成長率を記録しているのに対し、身体障害者は2.4%増、知的障害者は4.0%増となっています。この数字は、精神障害に対する社会的関心の高まりと、支援ニーズへの対応が加速していることを強く示唆しています。
手帳所持者が受けられる支援とは
精神障害者保健福祉手帳を持つことで、様々な支援を受けることができます。主な支援内容は以下の通りです:
- 雇用の場における配慮と支援
- 就労支援サービスの利用
- 福祉制度の対象となることによる経済的支援
- 医療関係での割引制度
- 公共交通機関での割引
- 税制上の優遇措置
- 生活保護などの福祉給付
これらの支援は、精神障害者が社会生活を営む上で必要な配慮と実質的なサポートを提供するものです。手帳を取得することで、これらの支援を受ける権利が生まれます。
障がい者雇用での飛躍的な拡大
精神障害者保健福祉手帳の増加の背景には、雇用環境の改善と社会全体での受け入れの進展があると指摘されています。特に企業における障害者雇用への理解が深まり、精神障害者の雇用機会が大幅に増えています。
手帳と就労支援サービスが組み合わさることで、障害を持つ人たちが働く環境がより整備されてきました。就労移行支援事業や就労継続支援事業など、段階的なキャリア構築が可能になり、多くの精神障害者が職場での自分の役割を見つけられるようになってきたのです。
地域ごとでも広がる福祉支援
全国的な増加傾向は、地域レベルでも確認できます。例えば、東広島市では2023年の精神障害者保健福祉手帳所持者が2,229人であり、2級が1,232人(全体の55.3%)を占めるなど、各地域でも同様の傾向が見られています。
このことは、精神障害への対応が国レベルの施策に留まらず、市町村などの地域福祉の現場でも積極的に取り組まれていることを示しています。
制度の正しい理解と活用が「将来の安心」につながる
精神障害者保健福祉手帳の急速な増加は、単に数字の上での変化ではなく、日本の福祉制度がより多くの人に活用されるようになった証拠と言えます。
手帳を所持することで得られる支援の幅広さと、それに伴う雇用機会の拡大は、精神障害を持つ人たちが自分らしい人生を営むための大切な基盤となっています。制度の正しい理解と適切な活用を通じて、個人の将来への安心感が生まれ、社会全体としての包括的な支援の体制が整備されつつあるのです。
今後も、この増加傾向がどのように推移するか、そして社会全体での精神障害者への受け入れがさらに進むのか、注視していく必要があります。



