湊かなえの禁断の傑作『人間標本』がドラマ化——市川染五郎×宮沢りえが語る、衝撃の撮影舞台裏

ベストセラー作家・湊かなえが10年来温めてきた禁断のテーマ「親の子殺し」に正面から挑んだ小説『人間標本』が、ついに実写ドラマ化されました。Prime Videoで2024年12月19日から全5話一挙配信されている本作は、歌舞伎界のプリンス・市川染五郎が初の現代劇ドラマに挑戦し、世界的アーティスト役の宮沢りえと共演することで、大きな話題を呼んでいます。今回は、このドラマの撮影舞台裏について、二人の俳優たちの貴重なインタビューを通じてご紹介します。

衝撃の物語——蝶の研究者が息子を「人間標本」に

本作の物語は、蝶の研究者である榊史朗教授(西島秀俊)が、息子・至(市川染五郎)を含む6人の若い芸術の才能のある少年たちを「人間標本」にしたと警察に自首することから始まります。美を永遠に留めたいという人間の利己的な愛情と、複雑な親子関係が絡み合う、極上のミステリーサスペンスです。

物語が進むにつれ、事件の真相は二転三転し、警察の刑事とのやり取りや他の登場人物による語りで、次々と違う風景が立ち上がってきます。廣木隆一監督のもとで制作された本作は、映像化は無理だと言われてきた禁断の題材に、見事に映像化という形で応えた作品となっています。

市川染五郎が語る、多層的なストーリーへのアプローチ

本作では、同じキャラクターが複数の視点から描かれるという複雑な構成になっています。市川染五郎が演じる至は、父の回想の中での顔、刑事に指摘されて出てくる顔、そして他の人物の回想で語られる顔と、シーンごとに異なる側面が表現されるのです。

市川染五郎は、この役について次のように語っています。「至は、自分の才能や父親から受け継いだもの、受け継いでいないもので悩んでいる。真っ直ぐでありながら若者らしい葛藤も抱えている人物」。役柄の複雑さと深さに向き合う彼の姿勢が伝わってきます。

宮沢りえが明かす、隠された感情の表現の難しさ

世界的アーティスト・一之瀬留美を演じた宮沢りえは、本作の撮影について、登場人物たちの複雑な心情について次のように語っています。

「登場人物の全員が感情と欲望を隠しているんですけど、ドラマの進行の過程でそれがちょっとずつ明かされていく。その分、演じる側が『この場面でこの本音を少し出す』とか、『ここは嘘を隠している切ない表情を見せないといけない』とか、細かい計算が必要とされたドラマでした」。

彼女の言葉から、単なるセリフの棒読みではなく、微細な表情の変化や目線によって、隠された真意を表現していく必要があったことが理解できます。

「擬態」というテーマ——蝶が象徴する変容

本作の重要なモチーフとなっているのが「蝶」です。蝶が自分の身を守るため周囲の環境に変体する「擬態」は、本作の裏テーマとなっています。登場人物たちが自分の本当の顔を隠し、環境に応じて姿を変えていく様は、まさにこの擬態という現象に例えられるのです。

また、本作の美術監修・アートディレクターを務めた清川あさみによる蝶の刺繍が施されたキービジュアルには、儚げな表情を浮かべる西島秀俊と市川染五郎演じる榊親子の姿が映し出されています。蝶の世界に魅了され、最愛の息子までも標本に変えてしまった史朗の、複雑な心境が象徴的に表現されているのです。

市川染五郎が明かす、「標本」を演じることの難しさ

本ドラマの最大の見どころの一つが、至が「人間標本」として姿を変えられた場面です。市川染五郎は、このシーンについて次のように語っています。

「ポージングに関しては湊先生の原作にある挿絵のとおりなのですが、廣木監督からは目の開き具合や首の角度などに細かく指示があって。標本として命はないけれども新たな芸術作品として生まれ変わった姿を見せる。もっと言うと、芸術作品として魂をまた入れられて存在しているという状態を表現するのは、とても難しかったです」。

死と芸術、命と美という相反する概念を身体で表現することの困難さが、彼の言葉から伝わってきます。

親子関係と母娘関係——本作の本質

宮沢りえは、本作の本質について次のように補足しています。「『人間標本』は親子の関係性の物語なんです。西島さんと染五郎さんの父と息子の関係性、そして私と伊東蒼さんが演じる母と娘の関係性」。

つまり、本作は単なるミステリーサスペンスではなく、親から子へ、子から親へ向けられた複雑な想い——愛情、支配、反発、理解——が交錯する、普遍的な人間関係の物語なのです。

湊かなえの創作世界——禁断のテーマへの向き合い方

『告白』『母性』『ユートピア』など数々の衝撃作を世に放ち続けてきた湊かなえ。彼女が「殺人鬼の女王」と呼ばれるゆえんは、社会的タブーや人間の黒い側面に正面から向き合う姿勢にあります。

『人間標本』は、そんな湊かなえが10年来温めてきた「親の子殺し」というセンセーショナルなテーマについて、初めて小説化した作品です。その作品が、廣木隆一監督による映像化によって、さらに深い層を持つドラマとして生まれ変わったのです。

最後に

本作『人間標本』は、単なるサスペンス作品ではなく、美と狂気、愛と支配、生と死といった根本的な人間のテーマを追求した、極上の作品です。市川染五郎の初の現代劇ドラマ出演、宮沢りえの深い表現力、そして廣木隆一監督による精緻な映像化が相まって、湊かなえの禁断の傑作は、新たな命を吹き込まれました。Prime Videoで配信中の本作を、ぜひご覧ください。

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