Anthropic、一般ユーザー向けPC自動化ツール「Cowork」を発表——プログラミング不要で日常業務をAIに委ねる時代へ

米AI企業Anthropicは2026年1月12日(現地時間)、新機能「Cowork」を発表しました。これは開発者向けに提供されていた「Claude Code」の自律的な実行能力を、プログラミング経験のない一般ユーザーが日常業務で使えるよう再設計した革新的なツールです。まずはClaudeのmacOSアプリにおいて、Claude Max(月額100ドル~)の契約者向けに研究プレビューとしての提供が開始されています。

Coworkとは——AIが「同僚」として機能するツール

Coworkの最大の特徴は、ユーザーがClaudeに特定のフォルダへのアクセス権を付与することで、AIが自律的にファイルを読み取り、編集、作成できるようになる点です。従来のチャットベースのAIとは異なり、ユーザーが一度タスクを指示すると、Claudeが自ら計画を立てて作業を進め、途中経過を報告しながら完了させます。これは、同僚に仕事を任せる感覚に近い体験を目指して設計されたものです。

Anthropicは、この機能を「会話型AIからエージェントへのシフト」と位置付けています。つまり、単なるチャット相手から、実際にデジタル環境で作業を遂行する「デジタルな同僚」へと進化したということを意味しています。

実現できる具体的な業務タスク

Coworkを活用することで、以下のような日常業務が自動化可能になります:

  • ダウンロードフォルダ内のファイルを自動で分類・整理・リネーム
  • 複数のスクリーンショットから支出情報を抽出し、新規スプレッドシートを自動作成
  • 散らばったメモやノートをまとめて、レポートの初稿を自動生成
  • ファイルの一括編集や形式変換

これらのタスクは、人手で行うと数時間かかることも珍しくありません。しかしCoworkなら、指示を与えるだけでClaudeが自動的に計画を立て、効率的に完了させることが可能です。

複数タスクの並列処理で生産性が大幅向上

Coworkのもう一つの強力な特徴が、複数のタスクをキューに入れて並列処理できる機能です。従来のAIチャットでは、一つの指示に対して応答を待ち、次の指示を出すという逐一のやり取りが必要でした。しかしCoworkでは、複数の業務指示を同時にキューイングし、AIが同時進行で処理することができます。これにより、ユーザーはレスポンスを待つことなく、次々と業務を任せることができるのです。

この仕様は、まさに同僚にメッセージを残すような感覚で業務を委ねられることを実現しています。

セキュリティと安全性への配慮

Anthropicは、セキュリティ面でも慎重な設計を採用しています。Claudeがアクセスできるフォルダとコネクタについては、ユーザーが明示的に許可する必要があります。また、重要なアクション(ファイルの削除や大幅な編集など)を実行する前に、Claudeが確認を求めるため、ユーザーが必要に応じて軌道修正することが可能です。このアプローチにより、AIの自律性と人間による制御のバランスが取られています。

他のサービスとの連携で可能性が無限に

Coworkの真価は、Anthropicの他のサービスとの連携によってさらに発揮されます。すでに設定済みのコネクタ(GmailやCanvaなど)とシームレスに連携でき、例えば、作成したレポートを自動でメール送信することも可能です。さらに、Chrome版Claudeと組み合わせれば、ブラウザ操作を伴うタスク(Webサイトからのデータ収集など)もClaudeに委ねることができます。

また、新たに追加された文書やプレゼン資料作成向けのスキルも利用でき、より複雑で多様な業務が自動化の対象となっていきます。

Claude Code との関係——コーディング領域での強化も継続

今回のCowork発表と同時に、Anthropicは「Claude Opus 4.5」という新しいフラグシップモデルもリリースしました。このモデルはコーディングやエージェント機能を強化し、これまで数日かかっていた開発プロジェクトを数時間で完了させる能力を持つとされています。

また、Claude Codeにも「checkpointing」という新機能が追加されました。これはコードの状態を自動保存・巻き戻しできる機能で、より自律的で安全なタスク実行を可能にしています。ネイティブなVS Code拡張機能(β版)や開発者向けSDKも提供され、開発者にとっての使い勝手がさらに向上しています。

エンタープライズユーザーへの訴求

Coworkの発表は、Anthropicが単なる開発者ツールの企業から、エンタープライズ市場における生産性向上ツールの提供企業へとシフトしていることを示しています。非技術系のナレッジワーカー(営業事務、人事、マーケティング支援など)の業務効率化を目指すものであり、導入対象企業の層が大幅に広がることが予想されます。

月額100ドル以上のClaudeプロフェッショナルプランユーザーが対象となることで、ある程度のコミットメントのあるユーザー層から段階的に展開していく戦略が見えます。

今後の展開と期待

Coworkは現在、macOSアプリでのリサーチプレビューとして提供されていますが、Anthropicは「その後順次拡大していく」とコメントしています。Windows版の提供やWeb版への展開、さらには他のAIプラットフォームとの統合なども期待される領域です。

この発表により、AIの活用が「生成」から「実行」へとシフトしていく様子が明確に見えてきました。Coworkは、AIが人間のデジタル業務の相当な部分を自動化・効率化する時代の到来を象徴するツールとなるでしょう。今後、オフィスワーカーの業務形態や生産性の定義そのものが大きく変わる可能性があります。

参考元