田村智子委員長、衆院解散論の広がりをどう見るか ― 高市政権と与野党の思惑が交錯

通常国会の冒頭で衆議院が解散されるのではないかという見方が、自民党内をはじめ各党に急速に広がっています。そのなかで、日本共産党の田村智子委員長が、高市早苗政権による「冒頭解散」検討報道に厳しく異議を唱え、野党側の構えを明確に打ち出しました。本記事では、与党内で浮上する早期解散論の背景、日本維新の会による解散容認の姿勢、そして田村氏の発言の意味を、できるだけやさしい言葉で整理してお伝えします。

通常国会「冒頭解散」論とは何か

まず今回のニュースの出発点になっているのが、「通常国会の冒頭で衆議院を解散する」という案が、政権内で浮上しているという報道です。これは、通常国会が召集されてすぐ、所信表明演説や本格的な予算審議が始まる前に、衆議院を解散して総選挙に踏み切るというシナリオを指します。

報道によれば、高市早苗首相が1月23日召集予定の通常国会冒頭での解散を検討しているとされ、与党内では公示日や投開票日を具体的に想定した日程案まで取り沙汰されています。自民党内では、

  • 「支持率が比較的高いうちに選挙に踏み切った方が有利ではないか」
  • 「連立関係や党内基盤が不安定な中で、一気に政局を打開したい」

といった思惑から、早期解散論・通常国会冒頭解散論が浮上しているとされています。

一方で、通常国会では本来、来年度予算の審議や物価高対策など、暮らしに直結する重要な議論が行われるはずです。国会冒頭での解散は、こうした審議を事実上棚上げしたまま選挙に突入することになり、その是非をめぐって議論が起きています。

田村智子委員長「行き詰まりを上辺の支持率に頼って打開」

こうした報道を受け、日本共産党の田村智子委員長は1月10日、党本部で記者会見を行いました。田村氏は、高市首相が通常国会冒頭での衆院解散を検討しているとされることについて、次のような問題意識を示しています。

  • 「高市政権が相当に行き詰まっていることを示している」
  • 「(政権の)行き詰まりを、上辺の高い支持率に頼って打開することを狙った、党利党略の解散総選挙に打って出る危険性が強まっている」

田村氏は、内政・外交の双方で高市政権が難しい局面に立たされていると指摘します。外交面では、トランプ米政権が自国優先の行動を強め、ベネズエラへの攻撃など国際情勢が緊迫するなか、日本が日米同盟一辺倒の姿勢でいいのかが問われていると述べています。国内では、

  • 円安が進み、実質賃金が下がり続けていること
  • 物価高への有効な対策が打ち出せていないこと
  • 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係をめぐる新たな疑惑が取り沙汰されていること

などを挙げ、「政権が追い詰められている」との見方を示しました。田村氏は、こうした問題に正面から向き合わず、「上辺の支持率」に頼って一挙に政局を打開しようとする動きが、冒頭解散論の背景にあると批判しています。

「何の信を問うのか分からない冒頭解散は本来あり得ない」

田村氏が特に強調したのが、「解散とは何か」という基本的な問題です。衆議院の解散・総選挙は、本来、政府・与党の政策や政治姿勢について国民に『信』を問うために行われるものだとされています。

ところが今回の冒頭解散論について田村氏は、

  • 「国民に真を問うべき問題が何なのかがはっきりしていない」
  • 「何の信を問うのかもわからずに、冒頭解散というのは本来あり得ない」

と述べ、「首相が国会での論戦から逃げるために解散に踏み切るのではないか」とまで指摘しています。通常国会であれば、物価高対策、実質賃金の低下、外交問題、統一教会問題など、多くの論点で野党が政府を厳しく追及することが見込まれていました。田村氏は、そうした論戦を回避するかのように冒頭解散が検討されていること自体が問題だと訴えています。

共産党として「攻勢的な構えで準備進める」

一方で田村氏は、「もし本当に解散となった場合、共産党としてどう臨むのか」という問いに対しても明確な姿勢を示しました。記者会見で田村氏は、

  • 「攻勢的な構えで準備を進める」
  • 「タイトな日程であっても、きっちりと候補者・政策の準備を進めていく」

と述べ、早期解散の可能性を見据えつつ、選挙に向けた準備を急ピッチで進めていることを明らかにしました。

共産党は、高市政権による「党利党略の解散」に反対すると同時に、万一解散となった場合には、

  • 日米同盟一辺倒でいいのかという安全保障・外交のあり方
  • 物価高と実質賃金低下の中で暮らしをどう守るのか
  • 旧統一教会問題など、政治とカネ・政治と宗教の問題

などを正面から訴え、「新しい政治」への転換を争点にして選挙戦をたたかう構えです。

維新・吉村代表は「解散容認」 連立の信を問うべきとの立場

一方、野党の中でも日本維新の会は、解散に対して比較的前向きな姿勢を示しています。報道では、維新の吉村洋文代表(大阪府知事)が、衆院解散について「首相の専権事項」であるとして容認する考えを示し、「連立政権の信を正面から問う」べきだとの趣旨の発言を行ったとされています。

同党の藤田文武共同代表も、金沢市での取材で「解散は首相の専権事項だ。いつでも戦える準備はしておく」と述べ、早期解散への備えを強調しました。維新としては、自民党・公明党による連立政権のあり方を問う選挙と位置づけ、自らの勢力拡大の好機ととらえている面もあると見られます。

このように、同じ野党であっても、

  • 共産党は「党利党略の解散」として批判しつつ、解散となれば政権批判と政策転換を前面に出して臨む姿勢
  • 維新は「解散自体は容認」し、連立政権への審判を歓迎するような構え

と、スタンスに大きな違いが見られます。

自民党内で高まる早期解散論の背景

自民党内で早期解散論が浮上している背景には、いくつかの要因が指摘されています。

  • 高市政権の支持率が、発足当初は比較的高い水準にあるとされること
  • しかし、物価高、実質賃金の低下、円安の進行など、生活実感が悪化していること
  • 統一教会問題など、新たな疑惑が生まれつつあり、今後の国会で追及が強まると予想されること
  • 連立与党内の関係や、党内基盤にも不安を抱えていること

こうした中で、「時間がたてばたつほど支持率が下がり、政権運営が難しくなるのではないか」という危機感から、「早めに総選挙で信を問うべきだ」という意見が力を増していると伝えられています。

しかし、その一方で、

  • 予算審議が遅れ、国民生活に影響が出るのではないか
  • 「何の信を問うのか」が示されないままの解散は、政治不信をさらに深めるのではないか

といった懸念も多く、与党内でも慎重論があるとされています。高市首相自身も、最終的な判断には慎重であると報じられており、国会冒頭解散が本当に実現するかどうかは、なお流動的な状況です。

衆院解散がもたらす影響と今後の焦点

もし通常国会冒頭で衆議院が解散されれば、国政は一気に選挙モードに突入します。具体的には、

  • 来年度予算案の審議が中断され、成立が遅れる可能性
  • 物価高対策や賃上げ策など、国民生活に直結する課題への対応が後回しになる懸念
  • 外交・安全保障政策についての国会論戦が深まらないまま選挙戦に入ること

などが想定されます。田村氏が「国会での論戦から逃げるしかなかったのではないか」と述べた背景には、こうした影響への危機感があります。

今後の焦点としては、

  • 高市首相が「何を国民に問う選挙」と位置づけて解散するのか、あるいは見送るのか
  • 野党各党が、解散をどう評価し、どんな争点を掲げて選挙に臨むのか
  • 国民が、物価高や賃金、外交、安全保障などの課題について、どのような判断を下すのか

といった点が挙げられます。

少なくとも、日本共産党の田村智子委員長は、「行き詰まった高市政権が、上辺の支持率に頼って打開を図ろうとしている」と厳しく批判しつつ、「攻勢的な構えで準備を進める」と、早期解散の可能性を見据えた姿勢を鮮明にしています。自民党内で広がる早期解散論、維新・吉村代表による解散容認の発言とあわせて、政局は一気に緊張感を増していると言えるでしょう。

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