寺島実郎が読み解く「力こそ正義」の幻想と2026年世界経済――ベネズエラ攻撃と投資環境、そして高まる地政学リスク
2026年の年明け、世界は大きな衝撃に揺れています。米国によるベネズエラ攻撃という軍事行動が現実となり、国際秩序と世界経済、そして日本の進路に改めて厳しい問いが突きつけられています。寺島実郎は、こうした動きを「力こそ正義」という発想がもたらす危うさとして捉えつつ、同時に世界経済の“底堅さ”と市場の“細分化”という二つの流れを冷静に読み解く必要性を強調しています。
本記事では、ベネズエラ攻撃が象徴する「全能の幻想」とは何か、2026年の投資環境をどう見るべきか、そして高まる地政学リスクに対して企業や投資家はどう備えるべきかを、寺島実郎の視点や専門家の分析を交えながら、やさしい言葉で整理していきます。
「力こそ正義」の誘惑――ベネズエラ攻撃が示した危うい発想
2026年1月、米軍はベネズエラの首都カラカスとその周辺の軍事施設やインフラに対する大規模な攻撃作戦を実行し、民間地域にも被害が及んだと報じられています。ベネズエラ政府は、これは「ベネズエラの領土と国民」に対する重大な軍事侵略であり、同国の主権と戦略的資源を奪うことを目的とした植民地戦争の試みだと強く非難しました。
米国側は、ベネズエラを「テロ組織」と位置づけることで、議会の関与を迂回した一方的な軍事行動に踏み切ったとの指摘もあります。その背後には、軍事力と制裁を梃子に、他国の政治体制や資源配分にまで深く干渉しようとする、「自らは何でもできる」という全能の幻想があると多くの専門家は見ています。
寺島実郎は、第二次トランプ政権が始動したことで、米国が自ら主導してきた20世紀型の多国間協調的秩序を「ひっくり返し始めている」と指摘してきました。国連を中心とした国際ルールよりも「自国第一」を前面に押し出し、軍事力や経済力に依存して問題を解決しようとする姿勢は、「力こそ正義」という危うい発想と表裏一体です。
ベネズエラ攻撃を巡っては、キューバやイランなどが即座に強い非難声明を出し、「地域の平和地帯に対する国家テロ」だと表現しています。こうした反発は、単に米・ベネズエラの二国間問題ではなく、広く「覇権国が武力を背景にどこまで行動を正当化できるのか」という、国際社会全体への問いとなっています。
日本に突きつけられる日米同盟と外交戦略の再設計
「トランプ2.0」と呼ばれる第二次トランプ政権の下で、米国は世界秩序の根幹を揺るがすような行動を次々と取り始めています。寺島実郎は、こうした流れの中で日米同盟の再設計こそが、日本が避けて通れないテーマだと強調しています。
これまで日本は、安全保障の多くを米国に依存し、米国の軍事行動に対しても一定の距離を保ちながら追随する形をとってきました。しかし、ベネズエラ攻撃のように、国際法上も議論の余地が大きい軍事行動が相次ぐとき、日本は「同盟国としてどう向き合うのか」という難しい判断を迫られます。
- 国際法と国連中心主義を重視するのか
- 日米同盟の結束を優先して米国の立場に寄り添うのか
- 欧州やアジアの他国と連携し、多国間の対話と調停役をめざすのか
寺島は、米国の「自国第一」の論理に無批判に巻き込まれるのではなく、日本としての価値観と戦略を冷静に組み立て直す必要があると語っています。それは、単に安全保障だけではなく、エネルギー政策や通貨・金融政策、さらには産業構造にもつながる、大きな国家戦略の再構築を意味します。
世界経済は「底堅い」――しかし市場は「細分化」へ
一方で、軍事的緊張が高まる中でも、2026年の世界経済そのものは、すぐに崩壊するというイメージではなく、むしろ一定の底堅さを保っているとの見方が有力です。米国経済はなお消費と雇用が支えとなり、欧州も景気減速の中で政策対応を続けています。中国やインドを含むアジア新興国も、成長率は鈍化しつつもプラス成長を維持している地域が少なくありません。
しかし、その裏側で進んでいるのが市場の「細分化」です。これは、世界が一つの巨大市場として動くのではなく、
- 米国を中心とした陣営
- 中国やロシアを含むユーラシア圏
- 中東やグローバルサウスと呼ばれる資源国・新興国グループ
といった形で、政治・安全保障の枠組みに沿って市場が分かれ、それぞれが異なるルールや通貨、サプライチェーンを持ち始めているという現象です。
投資信託の世界でも、こうした細分化の流れを意識した商品設計や運用戦略が進んでいます。たとえば、
- 特定地域(アジア、インド、中東など)に特化した地域型ファンド
- エネルギー安全保障や防衛関連、脱炭素などテーマ別のセクター特化型ファンド
- 地政学リスクを織り込んだ、複数通貨・複数市場への分散投資
といったアプローチが重視されています。全世界の株を一括で買えばよい、という時代から、「どの地域・どの通貨・どの産業に、どの程度配分するか」を丁寧に設計する時代へと移行していると言えるでしょう。
2026年投資見通し:リスクを直視しつつ「広く・薄く」から「選んで・守る」へ
2026年の投資環境を考えるうえで、押さえておきたいポイントを、やさしく整理してみます。
世界経済の「底堅さ」が意味するもの
世界全体としてみれば、急激な世界恐慌のような事態ではなく、緩やかな成長を続けている地域が多いと考えられています。その理由としては、
- コロナ禍後の需要の戻りと、デジタル化・脱炭素など新たな投資需要の存在
- 各国中央銀行による慎重な金融・財政運営
- 企業のサプライチェーン再構築による新たな投資・雇用
などが挙げられます。寺島実郎が、日本経済についても「金融緩和と円安だけに頼る時代からの転換が必要」としつつ、実体経済の再構築の重要性を強調しているのも、この文脈の中にあります。
株式市場が一方向に上がり続けるとは限りませんが、世界全体の資本蓄積やイノベーションの流れが途切れているわけではなく、長期的には「世界経済は底堅い」と見る立場には、一定の合理性があります。
市場の「細分化」が投資信託に与える影響
他方で、市場の細分化は、投資家にとって新たなリスクとチャンスを同時にもたらします。
- 米国中心のハイテク・消費市場:依然として世界最大の規模を持つが、政治の不確実性と対外政策の強硬さがリスク要因
- 中国・アジア新興国市場:成長余地は大きいが、規制や統治の問題、対米関係の悪化など不透明要因も多い
- 資源国・中東・グローバルサウス:エネルギー・資源価格の変動や政情不安のリスクがある一方、インフラ投資など成長余地も大きい
投資信託を通じてこれらの市場にアクセスする場合、「どこもかしこも満遍なく」という発想ではなく、「自分がどのリスクをどこまで許容できるか」を意識しながら、地域やテーマを選び取る姿勢が大切になります。
地政学リスクに「先手」を打つという発想
ベネズエラ攻撃をはじめ、ウクライナや中東、東アジアなど、地政学リスクは2020年代半ば以降、常態化しつつあります。国際法律事務所のトップや安全保障の専門家は、企業や投資家に対して「地政学リスクに先手を打つ」重要性を繰り返し訴えています。
ここでいう「先手」とは、単にリスクが顕在化したときに慌てて対応するのではなく、あらかじめシナリオを描き、契約、サプライチェーン、資金調達の手当てを行っておくことを意味します。
- 契約面:制裁発動や輸出規制が起きた場合の条項(フォースマジュールや管轄裁判所の定め)を明確にしておく
- サプライチェーン:特定地域への過度な依存を避け、複数の調達先・生産拠点を確保する
- 金融・投資:特定通貨・特定国への集中投資を避け、複数通貨・複数地域に分散する
国際法律事務所のトップは、紛争や制裁のリスクが高まる中で、企業法務の役割が単なる「事後処理」から「事前のリスク設計」へと変わりつつあると指摘しています。これは、個人投資家の世界にも通じる考え方です。
日本の個人投資家と企業が意識したいポイント
では、日本の個人投資家や企業は、2026年の世界をどう受け止めればよいのでしょうか。寺島実郎の議論と、投資・法律の専門家の視点を踏まえると、次のようなポイントが見えてきます。
- 「力こそ正義」に飲み込まれない視点:軍事力や制裁だけで問題を解決しようとする発想には、必ず反動と副作用が伴います。短期的な市場の動きに一喜一憂するよりも、その行動が国際秩序や地域情勢にどんな長期的影響を与えるかを意識することが重要です。
- 日米同盟を前提としつつ、自国の戦略を持つ:米国との同盟を維持しながらも、日本としての価値観と利益を明確にし、多国間の対話や調停に積極的に関与する姿勢が求められます。これは、日本企業が事業展開や投資先を選ぶ際の判断軸にもなります。
- 世界経済の底堅さを信頼しつつ、細分化への備えを:世界全体としての成長ポテンシャルが消えたわけではありません。しかし、市場が政治ブロックごとに分かれつつある以上、「どのブロックにどの程度関わるか」を慎重に考える必要があります。
- 地政学リスクを「見ないふり」しない:戦争や制裁は、自分と遠い世界の出来事ではなく、為替、資源価格、株価、雇用に直結します。ニュースをチェックしながら、自分のポートフォリオやビジネスがどこにどの程度さらされているかを定期的に確認する習慣が大切です。
- 法的な視点とガバナンスを強化する:国際法律事務所の助言を受けながら、契約・コンプライアンス・情報開示などの体制を整えることは、企業価値を守るうえで欠かせません。個人にとっても、商品説明書や目論見書を丁寧に読み、リスクの所在を理解したうえで投資判断を行う姿勢が求められます。
寺島実郎のメッセージにどう向き合うか
寺島実郎は、『21世紀未来圏 日本再生の構想』の中で、日本人が避けて通れないテーマとして、
- 日米同盟の再設計
- アベノミクス的な金融依存からの決別
- 実体経済と生活基盤の再構築
を挙げています。ベネズエラ攻撃というショッキングな出来事は、こうしたテーマがもはや抽象的な議論ではなく、目の前の現実として突きつけられていることを示しています。
「力こそ正義」の誘惑に流され、短期的な強さや利得だけを追い求めれば、長期的には国際社会の信頼を失い、紛争の連鎖を招きかねません。逆に、法の支配や多国間協調を重んじつつ、経済と安全保障を冷静に組み立て直すことができれば、日本と世界はより持続可能な進路を選ぶことができます。
2026年という節目の年に、私たち一人ひとりが、ニュースの背後にある構造と長期的な意味を考え、投資や仕事、暮らしの選択に反映させていくことが、静かでしかし確かな「先手」となるのではないでしょうか。寺島実郎が繰り返し語る「日本再生」のビジョンも、そうした市民一人ひとりの主体的な判断と行動の積み重ねの上にしか成り立たないものです。




