柳ヶ浦と神村学園、九州勢対決へ――第34回全日本高等学校女子サッカー選手権大会 決勝を前に
兵庫県を舞台に行われている第34回全日本高等学校女子サッカー選手権大会で、決勝戦のカードが柳ヶ浦高校(大分)対神村学園高等部(鹿児島)という九州勢同士の対決となり、大きな注目を集めています。
大会は2025年12月29日から2026年1月11日まで、兵庫県内の三木総合防災公園や淡路佐野運動公園などを会場に開催されており、高校女子サッカー日本一をかけて全国各地の代表校が熱戦を繰り広げてきました。
史上初の決勝進出を果たした柳ヶ浦高校女子サッカー部
大分県代表の柳ヶ浦高校は、今大会で初の快進撃を見せ、ついに史上初の決勝進出を成し遂げました。学校の公式発表によると、チームは準決勝で千葉県代表の暁星国際高校に3-1で勝利し、決勝への切符を手にしています。
ここに至るまでの道のりも、決して平坦なものではありませんでした。
- 2回戦 vs 尚志高校(福島) 0-0(PK 5-3)
- 3回戦 vs 作陽高校(岡山) 0-0(PK 6-5)
- 準々決勝 vs 聖和学園高校(宮城) 4-0
- 準決勝 vs 暁星国際高校(千葉) 3-1
大会序盤はスコアレスドローからのPK戦を2試合連続で制するという、緊張感の続く戦いでした。しかし準々決勝からは一転、攻撃陣が爆発し、聖和学園戦では4得点、暁星国際戦でも3得点を挙げるなど、攻守にかみ合った試合運びで勝ち上がってきました。
準々決勝で対戦した聖和学園高校は、東北を代表する強豪校であり、宮城県予選を制して今大会に臨んでいたチームです。その聖和学園を4-0で破った柳ヶ浦の戦いぶりは、大会関係者や観客に強いインパクトを与えました。
「日本一を取って終わる」――柳ヶ浦、県勢初の頂点を目指して
柳ヶ浦高校は、大分県勢としてもこれが初の決勝進出であり、「日本一」をかけた大一番を前に、選手たちは現地で最終調整に取り組んでいます。地元大分のメディアでは、「『日本一を取って終わる』県勢初の栄冠へ」という力強い言葉とともに、その意気込みが伝えられています。
大会の長い期間を戦い抜いてきた選手たちは、コンディション調整や戦術確認に余念がありません。特に、序盤の接戦を乗り越え、準々決勝以降で得点力を大きく伸ばしたことからも、チームとしての成長がうかがえます。
柳ヶ浦の戦い方の特徴としては、粘り強い守備と、チャンスを確実にものにする決定力が挙げられます。2回戦、3回戦でスコアレスながらもPK戦を制した精神的な強さに加え、聖和学園戦・暁星国際戦で見せた攻撃の厚みは、決勝戦でも大きな武器となりそうです。
神村学園とぶつかる九州対決の意味
決勝の相手となる神村学園高等部は、これまでも全国の舞台で上位進出を続けてきた女子サッカーの名門です。九州から二校が決勝の舞台に立つこと自体、地域としてのレベル向上を示す象徴的なカードであり、九州女子サッカーにとって歴史的な一戦になるとみられています。
決勝戦は、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で行われ、TBS系列のテレビ中継や、配信サービスでのライブ配信も予定されています。これにより、会場に足を運べない人たちも、画面越しに選手たちの熱いプレーを見守ることができます。
全国を沸かせた聖和学園・佐野美尋さんの“二つの夢”
今大会では、結果だけでなく、選手一人ひとりの物語にも大きな注目が集まりました。その中でも、多くの人の心を打ったのが、宮城県代表聖和学園高校女子サッカー部のキャプテン、佐野美尋さんの取り組みです。
佐野さんは、高校女子サッカーで「全国制覇」を目指しながら、同時に「医学部合格」という大きな目標にも挑戦している17歳の高校生です。地元メディアの取材では、「夢を現実に」という言葉とともに、サッカーと勉強の両方に全力で向き合う日々が紹介されています。
聖和学園は宮城県予選を制して今大会に出場し、全国の舞台でベスト8進出を果たしました。準々決勝で柳ヶ浦高校と対戦し、残念ながら敗退となりましたが、その戦いぶりと、キャプテンとしてチームを引っ張る佐野さんの姿は、多くのサッカーファンの胸に刻まれました。
佐野さんは、部活動のハードな練習に加えて、受験勉強にも真剣に取り組んでいます。長時間に及ぶ練習後も、時間を見つけて机に向かい、周囲の仲間や家族、指導者の支えを力に変えながら努力を重ねてきました。「文武両道」を掲げて二つの夢に挑む姿は、同年代の高校生だけでなく、大人たちにも大きな勇気を与えています。
女子高校サッカーが広げる「夢」のかたち
第34回大会は、技術や戦術の高さだけでなく、選手たちの人間的な成長や夢への挑戦が色濃く映し出された大会でもあります。柳ヶ浦高校のように、全国の舞台で初めて決勝に進むチームが現れたことは、地方の高校やこれからサッカーを始める女子中高生にとって、大きな励みとなる出来事です。
また、聖和学園の佐野美尋さんのように、サッカーと勉強の両立に挑む姿は、「サッカーを頑張るか、勉強を頑張るか」の二者択一ではなく、「どちらも本気で取り組む選択肢」があることを示してくれています。
大会の趣旨として、日本サッカー協会は「女子サッカーの技術向上と健全な心身の育成、そして普及・振興」を掲げています。全国から集まった高校生たちは、その理念のもとで日々の練習に励み、仲間とともに全国の舞台を目指してきました。その集大成としての全国大会では、勝敗を超えた多くのドラマが生まれています。
兵庫の地で育まれる、次の世代へのバトン
大会は、兵庫県の三木総合防災公園、五色台運動公園、いぶきの森球技場、淡路佐野運動公園、そして神戸総合運動公園ユニバー記念競技場など、複数の会場で行われています。自然豊かな環境と整備されたピッチの中で、全国から集結した選手たちが全力プレーを披露してきました。
こうした大会の舞台は、単に試合の場であるだけでなく、選手たちが他校の仲間たちと出会い、自分自身の可能性を広げる「学びの場」にもなっています。試合後には、互いの健闘をたたえ合い、SNSなどを通じて交流が続いていくことも珍しくありません。
今回決勝に進んだ柳ヶ浦高校、神村学園高等部だけでなく、各都道府県の予選を勝ち抜き、全国の舞台に立ったすべてのチームが、それぞれの地域に戻ってからも、後輩たちに刺激を与える存在となっていきます。こうした循環が、女子高校サッカー全体の底上げにつながっていると言えるでしょう。
決勝の舞台へ――選手たちに向けられる期待とエール
柳ヶ浦高校にとって、決勝の相手である神村学園高等部は、全国でも指折りの強豪です。その一方で、今大会で見せてきた柳ヶ浦の粘り強さと成長力は、決して引けを取らないものがあります。
「日本一を取って終わる」という強い思いでここまで戦ってきた柳ヶ浦の選手たちは、県勢初の栄冠という重みも背負いながら、最後の90分、あるいはそれ以上の時間をピッチで過ごすことになります。一方の神村学園も、九州代表としての誇りを胸に、女王の座を懸けた戦いに臨みます。
決勝戦の結果がどう転んだとしても、この大会を通じて選手たちが手にした経験や出会いは、これからの人生にとって大きな財産になるはずです。スタンドから、テレビ越しから、そして各地域から、多くの人たちが彼女たちにエールを送っています。
全国の女子高校生たちがそれぞれの場所で抱いている「サッカーの夢」が、今回の大会をきっかけにさらに広がり、次の世代へバトンのように受け継がれていくことが期待されます。
おわりに
第34回全日本高等学校女子サッカー選手権大会は、柳ヶ浦高校と神村学園高等部による九州勢対決という魅力的な決勝カードを迎えました。その背景には、県勢初の快挙に挑む柳ヶ浦の姿、全国制覇と医学部合格という二つの夢に向き合う聖和学園・佐野美尋さんの挑戦など、数えきれないドラマが広がっています。
この大会での一つひとつのプレー、一つひとつの涙や笑顔が、女子サッカーの未来を少しずつ形作っていきます。画面の向こう、あるいはスタジアムのスタンドから、その瞬間を見届ける私たちも、彼女たちの物語の証人です。




