話題の「タイミーおじさん」と沈むグロース市場――いま何が起きているのか

最近、「タイミー」というキーワードがニュースやSNSで頻繁に取り上げられています。

ひとつは、スキマバイトアプリ「タイミー」を活用して働く 40代の“タイミーおじさん” が体験した「ブラックすぎる」パチンコ店の実態を語る記事。

もうひとつは、株式市場において成長期待を集めていた「タイミー」関連銘柄やグロース(成長)市場全体が不調に陥り、「スター候補のタイミー沈む」「グロース市場の3割が弱気相場入り」といった見出しで報じられていることです。

この記事では、この2つのニュースを手がかりに、

  • スキマバイト現場で何が起きているのか
  • なぜ「タイミー」がスター候補から一転、市場で苦戦しているのか
  • 働き方と投資環境の変化から、私たちが何を読み取れるのか

を、できるだけやさしい言葉で整理していきます。

「もう働きたくない」40代タイミーおじさんが見たパチンコ店の裏側

まずは、多くの共感と反響を呼んだ「40代タイミーおじさん」の記事から見ていきます。

この記事は、ビジネス誌のオンライン版に掲載された連載の一つで、ライターのみやーんZZさんが、スキマバイトアプリを通じて様々な現場で働いた体験を綴ったものです。

スキマバイトで向かったのは「パチンコ店の早朝清掃」

今回の舞台は、とある繁華街にあるパチンコ店。

夜が明けたばかりの朝7時すぎ、筆者はスキマバイトでマッチングされた仕事のため、店の前に集合します。

そこには、

  • 掃除会社の社員
  • 常勤の清掃スタッフ
  • 主婦層のおばさま
  • 学生と思しき若者
  • そして40代のおじさんたち

と、様々な人たちが集まっていました。

この日、清掃に入るのは10人ほどで、そのうち3人がスキマバイトとして参加していたといいます。

指導係と2人1組で黙々と進む、時間との戦い

スキマバイトの人には、あらかじめ経験のある「指導係」のバイトが付き、2人1組で作業を進めていきます。

仕事内容は大きく分けて、

  • パチスロ・パチンコ台周りのゴミ回収
  • 灰皿の清掃と配置
  • 台の上部のランプやカメラの拭き上げ

など、いわゆる「開店前の店内清掃」です。

しかし、ここにはひとつ大きな制約があります。それは、開店時間である午前10時までに、すべての作業を終えなければならないということ。

そのため、現場の空気は最初からピリピリ気味で、指導係は常に早歩き、説明も早口。筆者は「とにかく時間との勝負だ」と感じたといいます。

「すぐその列から離れて!」強い口調で飛んできた注意

記事の中で特に印象的なのが、パチンコ店の従業員が近づいてきたときに、指導係から突然強い口調で注意された場面です。

筆者がパチスロ台の列のゴミをチェックしていると、店員が作業のために同じ列に入ってきました。その瞬間、指導係から、

「店員さんが来たら、すぐにその列から離れて!」

と、かなり強い調子で言われたといいます。

理由は、店員が行っていたのがパチスロ機の設定作業であり、その様子を清掃スタッフなど外部の人間に見られてはいけないためだと説明されました。

筆者は「そんなに強い口調で言わなくても…」と感じつつも、「たぶんそうしないといけない理由があるんでしょうね」と、パチンコ業界特有の“デリケートな裏側”を垣間見たと綴っています。

徹底した“見た目”のこだわりと、ブラックさを感じる瞬間

清掃の中で、筆者が驚いた点の一つが、灰皿の向きまで厳密に指定されていたことです。

パチスロ台の上に置く灰皿は、

  • 灰皿の文字が特定の位置とぴったり合うように置く
  • 少しでもズレていると指導係が黙って直す

といったレベルで、「そこまでやる必要あるの?」と感じるほどの細かさだったといいます。

また、開店時間が迫る中で作業を急かされ続けることや、

  • 体力的にはハードなのに給料はさほど高くない
  • 現場の空気が常に緊迫している

といった状況から、筆者はこのパチンコ店の仕事を「ブラックすぎる」と感じ、「正直もう働きたくない」とまで書いています。

それでもタイミーが選ばれる背景にあるもの

とはいえ、筆者はこの記事だけで「タイミー」そのものを否定しているわけではありません。

連載全体では、飲食店やカラオケ店、ファストフードチェーン、立ち食いそば店、回転寿司チェーンなど、さまざまな現場でのスキマバイト体験を紹介し、「ラクで面白い」現場もあれば、「二度と行きたくない」現場もあると率直に伝えています。

裏を返せば、

  • 自分の生活スタイルや体力に合う現場を選べる
  • 合わないと感じた仕事には、次から応募しなければいい

という、スキマバイトならではの「逃げ道」や「選択肢の広さ」があることも示しています。

スター候補「タイミー」も沈む――置き去りにされるグロース市場

一方で、株式市場や経済面のニュースでは、同じ「タイミー」というキーワードが、まったく別の文脈で語られています。

それが、

  • 「スター候補のタイミー沈む」
  • 「置き去りグロース市場、弱気相場入り3割」
  • 「〈スクランブル〉置き去りのグロース市場 スター候補タイミーも沈む 3割が弱気相場入り」

といった見出しで象徴される、グロース市場全体の低迷です。

グロース市場とは何か――タイミーはその“スター候補”

ここでいう「グロース市場」とは、東京証券取引所の成長企業向け市場(グロース市場)を指していると考えられます。

この市場には、

  • まだ利益は小さいが成長性が高いベンチャー企業
  • 新しいビジネスモデルで急成長を狙うスタートアップ

などが多く上場しており、「タイミー」もそのスター候補のひとつとして注目されていました。

スキマバイトアプリを通じて、新しい働き方をひろげるビジネスモデルは、

  • 人手不足に悩む企業の即戦力確保
  • 個人が自分の都合に合わせて働ける柔軟な働き方

を実現するものとして、高い評価を受けていたからです。

それでも株価は沈む――3割が「弱気相場入り」という現実

しかし、こうした“物語”とは裏腹に、市場の数字は厳しさを増しています。

報道では、

  • グロース市場に上場する銘柄のうち、約3割が「弱気相場入り」している
  • 成長期待で持ち上げられていたスター候補の企業の株価も下落している
  • その代表例として「タイミー」も含まれて語られている

といった状況が伝えられています。

「弱気相場入り」とは、ざっくり言えば株価がピークから2割以上下がった状態を指すことが多く、投資家心理が冷え込んでいるシグナルとも言えます。

なぜグロース市場が「置き去り」にされているのか

グロース市場が「置き去り」と表現される背景には、いくつかの要因が考えられます。

  • 金利の上昇や金融環境の変化
    世界的に金利が上昇した場面では、将来の成長を織り込んだグロース株よりも、目先の利益が安定しているバリュー株(割安株)が選好されやすくなります。
  • 実績と期待のギャップ
    上場時に描かれた成長シナリオに対して、足元の業績が伸び悩んだり、利益が出るまで時間がかかったりすると、「期待先行」と見なされて株価が調整されることがあります。
  • 市場全体のリスク回避姿勢
    景気減速や世界情勢の不透明感が強まると、投資家はリスクの高い資産を避ける傾向があり、その影響を真っ先に受けるのがグロース市場です。

こうした要因が重なり、「期待されていたスター候補」だったタイミーも、市場全体の波に飲み込まれる形で株価が下がっている、という構図が浮かび上がります。

「現場」と「株価」という二つの顔を持つタイミー

ここまで見てきたように、「タイミー」をめぐって今語られているのは、

  • 現場の一人ひとりの働き方のリアル(タイミーおじさん)
  • 企業としてのタイミーを取り巻く市場評価(グロース市場の低迷)

という、二つの異なるレイヤーの話です。

スキマバイトは「働き方の受け皿」になりつつある

40代のタイミーおじさんの記事が注目を集めているのは、単に面白い体験談だからではありません。

そこには、

  • 正社員として安定した職に就くことが難しかった世代(氷河期世代)
  • フルタイムで働くのが難しい事情を抱えた人
  • 副業やお小遣い稼ぎとして短時間だけ働きたい人

といった人たちが、スキマバイトを通じて「なんとか生活をつないでいる」現実がにじみ出ています。

と同時に、パチンコ店のような現場での過酷さや、指導のきつさ、時間との戦いといった「ブラックさ」に触れることで、読者は「こんな働き方でいいのだろうか」という問いを突きつけられます。

投資家の視線は「成長物語」の先を見始めている

一方、株式市場におけるタイミーは、「新しい働き方をつくるプラットフォーム」として高く評価されつつも、

  • 実際にどれだけマネタイズ(収益化)できているのか
  • 競合サービスとの競争に勝ち続けられるのか
  • 景気や規制の変化にどこまで耐えられるのか

といった、よりシビアな視点で見られる段階に入っています。

その意味で、

  • メディアでは「スター候補」ともてはやされる
  • しかし市場では「弱気相場入り」の一角として売り込まれる

というギャップは、「物語」と「数字」の間に横たわるズレを象徴しているとも言えます。

私たちはこのニュースから何を受け取るのか

40代タイミーおじさんの体験談と、グロース市場でのタイミーの株価下落――。

一見まったく別のニュースですが、どちらも「働き方の変化」と「その価値をどう評価するか」という、大きなテーマでつながっています。

  • スキマバイトは、たしかに新しい選択肢を与えてくれるが、「ブラックな現場」を可視化もしてしまう
  • 成長企業は、社会課題の解決役として期待される一方で、市場の冷静な評価にさらされる

そんな二つの現実を、タイミーという一つのキーワードが映し出しています。

今後、

  • スキマバイトを使う人がどのような条件や環境を求めていくのか
  • 企業と投資家が、その価値とリスクをどうバランスさせていくのか

は、タイミーだけでなく、日本の働き方や市場全体にとっても重要なテーマとなっていきそうです。

参考元