ペップは「ポゼッション至上主義」を卒業? セメンヨ獲得が示すマンチェスター・シティ進化の行方
プレミアリーグの絶対的王者として君臨してきたマンチェスター・シティが、今冬の移籍市場で大きな一手を打ちました。
ボーンマスのガーナ代表FWアントワーヌ・セメンヨをクラブ史上でも高額の部類に入る移籍金で獲得し、その補強方針の変化から、「ペップ・グアルディオラはもはやポゼッションにはこだわっていないのではないか」という議論まで巻き起こっています。
本記事では、
- セメンヨ移籍の詳細
- ボーンマス側から見た「主力放出ドミノ」と売却額
- 英紙が指摘する「近年のシティらしくない補強」とスタイル変化
- セメンヨがシティで担う役割と、ペップのサッカーの次の段階
といったポイントを、やさしい言葉で丁寧に整理していきます。
マンチェスター・シティがセメンヨを獲得 契約内容と移籍金
マンチェスター・シティは、ボーンマスから26歳のガーナ代表FWアントワーヌ・セメンヨを完全移籍で獲得したと公式発表しました。
契約期間は2031年までの5年半契約とされており、長期的な戦力として期待されていることがうかがえます。
移籍金についてはメディアによって若干表現が異なりますが、
- 総額およそ6400万ポンド前後(約135~137億円)と報じられている
- イニシャルフィーが6250万ポンド+アドオン150万ポンドという構成とする報道もある
- 分割払い(24カ月にわたる支払い)や、将来的な売却時のセルオン条項も含まれているとされる
など、いずれにせよプレミアでもトップクラスの高額移籍であることは間違いありません。
シティのようなビッグクラブには、「世界屈指のテクニシャン」「創造性豊かな司令塔」といったタイプの選手が多く集まるイメージがありますが、セメンヨはどちらかと言えば縦への推進力とフィジカルで勝負するアタッカーです。
この点が、後述する「シティらしくない補強では?」という議論の背景になっています。
セメンヨとはどんな選手? ボーンマスでの成長とプレースタイル
セメンヨはロンドンのチェルシー出身で、若い頃は複数クラブのトライアルを受けながらも契約を勝ち取れない時期があり、順風満帆なキャリアではありませんでした。
ブリストル・シティでプロデビューを果たし、当初はセンターフォワードとして結果が出ず苦しむ時期もありましたが、ローン移籍先でのコンバートをきっかけにウイングとしてブレイクしています。
その後、2023年1月にボーンマスへ完全移籍。同クラブでは、
- 公式戦110試合で32ゴール13アシストという数字を残し
- 2023-24シーズンにはリーグ戦13ゴール7アシスト
- 今季も公式戦21試合で10ゴール3アシストと、安定して結果を出していた
と、プレミア屈指のアタッカーへと成長しました。
プレースタイルとしては、
- 縦へのスピードとドリブル突破
- 両足を使える器用さ
- 鋭いカットインからのシュート
- 仲間のために走れる献身的な守備
が大きな特徴で、「速攻の質を高めたい」というボーンマスの狙いに合致した選手でした。
ボーンマスでのラストマッチとなったトッテナム戦では、2-2の同点で迎えた後半アディショナルタイムに90+5分のスーパーミドルで決勝点を叩き込み、劇的な勝利をもたらしています。
この試合は、シティ移籍が決まる直前の「置き土産」のような一発として、サポーターの記憶に強く残る一戦となりました。
ボーンマスから見た「主力放出ラッシュ」と半年での売却額
今回のセメンヨ放出は、ボーンマスにとってクラブ史上最高額の売却となりました。
報道では、セメンヨだけで6400万ポンド(約135億円)を手にしたとされています。
ここ数年、ボーンマスは有望な攻撃的タレントを育てては売却する流れが続いており、今季も主力級の移籍が相次いだと指摘されています。
その中で、エース級の働きを見せていたセメンヨまでシティに引き抜かれたことで、「また主力が出ていってしまった」という嘆きと、「これだけの金額なら仕方ない」という現実的な受け止め方が、サポーターのあいだでも交錯している状況です。
クラブ経営の面から見れば、この半年ほどでのボーンマスの売却額は非常に大きく、セメンヨの移籍金がその中心をなしていると言えるでしょう。
ただし、売却益を今後どのように再投資し、チーム力を維持・向上させていくかが、クラブにとって大きな課題となります。
英紙が指摘「近年のシティらしくない補強」とは?
今冬のセメンヨ獲得、そしてここ数シーズンの補強傾向を踏まえて、英メディアの一部は「近年のシティらしくない補強が続いている」と指摘しています。
その背景には、かつてのペップ・シティが掲げていたイメージ――
- ボールを長時間保持する極端なポゼッション志向
- 高いテクニックと判断力を持つインサイドハーフや偽9番タイプの起用
- ポジショナルプレーを徹底し、相手を押し込むスタイル
から、近年は少しずつ変化し、
- 縦への速さやカウンターの威力
- フィジカルや空中戦の強さ
- ボール非保持時の強度とトランジション
といった要素をより重視した補強が目立ち始めているからです。
セメンヨもまさにその象徴的な存在で、ドリブルで前進し、守備にも走れる「プレミアらしい」アタッカーです。
テクニカルな中盤のレフティではなく、ダイナミックなウインガーを高額で獲るという選択は、少し前のシティであれば考えにくかった、という見方も成り立ちます。
「ポゼッションにこだわらない」シティ? プレースタイルの変化を整理
では、本当にペップは「ポゼッションを捨てた」のでしょうか。
ここは少し整理しておきたいポイントです。
まず前提として、グアルディオラがボール保持をまったく重視しなくなったわけではありません。
シティは依然として多くの試合でボール支配率を高く保ち、ポジショナルプレーの原則も生きています。
一方で、近年の変化として、
- 「ボールを持つために守る」から、「勝つために最適な手段を選ぶ」志向が強まっている
- 相手や試合展開によっては、あえてポゼッションを少し譲り、カウンターの脅威で揺さぶるシーンが増えた
- 高さのあるストライカーや、走力に優れたウインガーの起用で「別の出口」を用意している
といった変化は、確かに感じられます。
セメンヨのような選手は、まさにトランジション局面(攻守の切り替え)で輝くタイプです。
ボールを奪った瞬間に一気に前へ運び、カウンターのフィニッシュまで持っていける選手が増えれば、シティは「ボールを持つチーム」であると同時に、「奪った瞬間に一撃で仕留めるチーム」にもなれるわけです。
つまり、ペップは「ポゼッションをやめた」のではなく、ポゼッションだけに頼らないチームへの進化を進めている、と見るほうが自然でしょう。
セメンヨはシティでどんな役割を担う?
具体的に、セメンヨはシティでどのような役割を託される可能性が高いのでしょうか。プレースタイルとチーム事情から、いくつかのポイントが見えてきます。
- ワイドでの1対1突破役
サイドで縦に仕掛け、相手の最終ラインを押し下げる役割が期待されます。ドリブルでの推進力は、深いブロックを敷く相手に対して有効な武器になります。 - カウンターのフィニッシャー
シティがプレスでボールを奪った瞬間、すぐさま前線へ走り出してカウンターを完結させる役目も重要です。足が速く、シュートも強力なため、トランジション局面で大きな脅威となるでしょう。 - 守備のスイッチ役
セメンヨは献身的な守備も高く評価されており、最前線からのプレッシングのスイッチ役としても機能できます。
ペップは前線の守備強度を非常に重視する指揮官であり、その意味でもシステムにフィットしやすいタイプです。
もちろん、シティではポジショニングや細かな判断基準など、これまで以上に高い戦術理解が求められます。
しかし、セメンヨ本人も「マンチェスター・シティに加わることを誇りに思う」と語り、ワールドクラスの選手たちやペップの存在が移籍の決め手になったと明かしています。
本人のモチベーションと成長意欲を考えれば、ペップの指導のもとでプレーモデルに順応していく可能性は十分にあると言えそうです。
「シティらしくない補強」は、次の時代への布石かもしれない
英紙が「シティらしくない補強」と表現する背景には、これまでの技巧派中心の補強路線とのギャップがあります。
しかし見方を変えれば、プレミア全体で強度とスピードが高まり、対策も進んでいく中で、シティが次の時代を見据えたアップデートを進めているとも受け取れます。
・ボール保持で相手を支配する力
・切り替えの速さとカウンターの破壊力
・セットプレーやロングボールにも対応できるフィジカル
こうした複数の武器をバランスよく備えたチームであれば、長いシーズンを戦い抜くうえでの「引き出し」が格段に増えます。
セメンヨは、その中でも特にスピードとダイナミズムの部分を底上げする存在として、非常に重要なピースになり得ます。
シティのスタイル変化を象徴する一人として、今後のプレーぶりに大きな注目が集まることは間違いないでしょう。
そしてボーンマスにとっては、クラブ史上最高額となる売却を実現しつつ、エースを失うという痛みも伴う難しい決断でした。
彼らがこの大型移籍で得た資金をどう使い、どのようにチームを再構築していくのかも、プレミアリーグ全体の勢力図に影響を与える重要なポイントとなります。
「ポゼッション一辺倒」から、「状況に応じてあらゆる形で相手を打ち負かす」チームへ。
マンチェスター・シティとペップ・グアルディオラの進化の物語は、セメンヨという新たな主人公を迎えて、また新しい章に入ろうとしています。



