年末年始明けに広がる「あけおめ退職」現象とは?

年末年始の長期休暇が終わり、久しぶりに出社したら、いつもの席に同僚がいない——。「あけおめ退職」と呼ばれるこの現象が、近年、大きな話題になっています。
この記事では、最新の調査や報道をもとに、あけおめ退職の実態や背景、職場や働く人への影響を、できるだけわかりやすく解説します。

「あけおめ退職」とは?

「あけおめ退職」とは、年末年始の休暇が明けて新年最初の出社日、同僚や先輩・後輩などがすでに退職しており、職場からいなくなっている状況を指す言葉です。
もともとはインターネット上で使われ始めた俗語ですが、近年はニュースや調査結果のなかでも用いられるようになり、社会的な関心が高まっています。

マイナビが実施した「年末年始休暇と転職に関する調査」では、年末年始の休暇明けに、比較的近しい人が退職していた状況を「あけおめ退職」と定義しています。

どれくらいの人が「あけおめ退職」を経験しているのか

マイナビの調査によると、正社員の28.4%が「あけおめ退職」を経験したことがあると回答しています。 およそ5人に1人以上という割合で、決して珍しい出来事ではないことがわかります。

さらに詳細を見ると、年代によって差があり、20代では41.1%があけおめ退職を経験しているとされています。 4割以上という高さで、若い世代ほど身近な人の退職に直面する機会が多い状況です。

一方で、マイナビの調査では、「年末年始の休暇中に会社を辞めたいと考えた経験がある」正社員は3人に1人という結果も示されています。 実際に退職に踏み切るかどうかは別として、年末年始のタイミングで「辞めたい」と考える人は少なくないことがうかがえます。

退職が多いタイミングとしての「年末年始」

マイナビの同調査では、企業に対して「退職者が最も多かった長期休暇」についても尋ねています。
その結果、もっとも多かった回答は「年末年始休暇」(23.4%)で、次いで「ゴールデンウィーク休暇」(21.0%)、「夏季休暇」(9.7%)と続きました。

また別のまとめでは、長期休暇後に退職者が出たことがある企業の割合として、
年末年始:36.6%、ゴールデンウィーク:35.2%、お盆:28.6%といった数字も紹介されています。
ゴールデンウィークやお盆でも退職はありますが、年末年始は特に目立つ時期であることが示されています。

ただし、「どの長期休暇後にも退職者は出たことがない」と回答した企業も3割ほどあり、すべての会社で必ず退職者が発生しているわけではない点も指摘されています。

退職代行サービスへの依頼は「通常の約3〜5倍」に

CBCの報道では、「正月明けに『あけおめ退職』が急増している」として、退職代行サービスへの依頼件数が通常時の約3〜5倍に増えていると紹介されています。
退職代行サービスとは、本人に代わって会社へ退職の意思を伝え、手続きのサポートを行うサービスで、ここ数年で認知が広がってきました。

このように、年末年始のタイミングで、「退職を決断し、かつ直接言いづらいので代行を利用する」人が一定数存在していることがうかがえます。

なぜ「年末年始明け」に辞めたくなるのか

あけおめ退職が増える背景として、いくつかの要因が指摘されています。

1. 年始という「節目」の意識

CBCの報道や解説記事では、「年始という節目」が大きな要因として挙げられています。
年末年始は、1年を振り返り、同時に新しい1年の過ごし方を考えることが多い時期です。
家族や友人とゆっくり話す時間が増え、自分の働き方や将来について見つめ直すきっかけにもなります。

マイナビの調査を担当したキャリアリサーチラボの担当者も、年末年始休暇を「自分の働き方を振り返る貴重な機会」と捉え、キャリア形成を考える好機であるとしています。 その結果として、「今の職場を続けるかどうか」を真剣に考える人が増えると考えられます。

2. 冬のボーナス支給後で、金銭的な不安が和らぐ

あけおめ退職の背景として、「冬のボーナス支給後で金銭的な余裕が生まれる」点も指摘されています。
退職や転職には、どうしても一定期間の収入減や生活の変化が伴います。ボーナスを受け取った直後は、当面の生活費を確保しやすく、「いまなら動ける」と考える人も少なくありません。

一方で、「ボーナスが少なすぎて辞める理由になる」ケースもあるとされています。 自分の評価や待遇への不満が、このタイミングで一気に高まることもあるのです。

3. 給与・待遇への不満、業務量、人間関係の疲れ

マイナビの調査では、年末年始休暇中に「会社を辞めたい」と感じたきっかけとして、次のような理由が挙げられています。

  • 給与や待遇への不満
  • 業務量の多さ
  • 人間関係の疲れ

日ごろから抱えていた不満が、年末年始の休暇中に改めて浮かび上がり、「このままでいいのだろうか」と考えるきっかけになると分析されています。 帰省や友人との再会で、別の働き方をしている人の話を聞き、今の環境を客観視する機会が増えることも、退職意向を高める要因とされています。

4. 長期休暇明けの心理的な負担

長期休暇明けには、たまった業務の処理や、生活リズムの立て直しなど、心身ともに負担を感じやすくなります。
マイナビの調査でも、長期休暇明けの業務再開に対する心理的負担が、退職や転職を考えるきっかけの一つになっていると指摘されています。

年末年始は、仕事から距離を置きやすい一方で、「またあの忙しさが始まるのか」と考えたときに、気持ちが重くなり、退職に気持ちが傾く人も少なくないと考えられます。

あけおめ退職をめぐる感情:残された側の複雑な思い

あけおめ退職は、辞める本人だけの問題ではありません。
マイナビの調査結果を紹介した記事では、あけおめ退職を経験した人の間で、「驚き」「寂しさ」「うらやましさ」など、複雑な感情が生まれていることも伝えられています。

突然、近しい人がいなくなってしまうことで、

  • 仕事の引き継ぎが十分にされていない
  • 残されたメンバーの負担が増える
  • 職場の雰囲気が変わる

といった影響が出ることも考えられます。

一方で、「思い切って新しい道に進んだ同僚が、少しうらやましい」と感じる人がいるのも自然なことです。あけおめ退職は、職場全体の働きやすさや、一人ひとりのキャリア観を問い直すきっかけにもなり得ます。

企業側に求められる対応とは

マイナビの調査を担当したキャリアリサーチラボの担当者は、「企業は休暇明けの負担を軽減し、公平な評価制度の構築など、『選ばれる職場づくり』を進める必要がある」とコメントしています。

あけおめ退職を減らすために、企業側が検討できる取り組みとして、次のような点が挙げられます。

  • 休暇明けの業務量の調整:一気にフルスロットルで仕事を詰め込まず、慣らし期間を設ける工夫
  • 評価や待遇への納得感を高める:ボーナスや昇給の基準をわかりやすく伝える
  • 日ごろからの相談窓口の整備:不満や不安を抱え込まずに話せる環境づくり
  • コミュニケーションの活性化:年末や年始に面談を行い、キャリアの希望をすり合わせる

また、解説記事では、あけおめ退職の「前触れ」として、

  • 評価や将来の話題に関心を示さなくなる
  • 有給休暇の取り方が極端になる
  • 急に静かになる(あきらめのサインの可能性)

といった変化に注意を促す指摘も紹介されています。
こうした兆しを無理に引き止めるためではなく、本人の状況を理解し、できる範囲で環境を整えるためのサインとして受け止めることが大切だとされています。

働く一人ひとりにとっての「年末年始」とキャリア

年末年始は、家族と過ごしたり、地元に帰省したり、学生時代の友人と久しぶりに会ったりと、日常とは違う時間が流れる時期です。
他の人の働き方や生活を目の当たりにすることで、「自分もこうなりたい」「今のままでいいのか」と、自身のキャリアを見つめ直すきっかけになります。

あけおめ退職の背景には、「今の環境に不満があるから辞める」という側面と同時に、「自分の将来を前向きに選び取りたい」という思いもあると考えられます。
企業としてはもちろん、働く一人ひとりにとっても、年末年始は「心と生活を立て直し、自分の働き方を考える節目の時間」といえるのかもしれません。

「あけおめ退職」をどう受け止めるか

あけおめ退職という言葉は、一見すると軽い表現に聞こえるかもしれません。ですが、その背景には、仕事の負担、待遇への不満、人間関係の悩み、将来への不安や期待など、さまざまな感情が折り重なっています。

あけおめ退職の増加は、単に「最近の若者はすぐ辞める」といった話では片付けられません。
・長期休暇が取れるようになったこと
・転職が一般的になってきたこと
・退職代行サービスの普及で、辞めやすくなったこと
など、社会全体の変化とも深く関わっています。

これからの働き方を考えるうえで、あけおめ退職は、「誰もがよりよい環境で働くにはどうすればよいか」を考えるヒントの一つと言えるでしょう。
年末年始に「会社を辞めたい」と感じる人が多いという現実を、働き手と企業の双方が共有し、お互いにとってより納得感のある選択ができる社会づくりが求められています。

参考元