北海道中央バスが賃金制度を大幅見直し 運転手の基本給最大27万円に引き上げ、年功序列を廃止へ

北海道の公共交通を支える北海道中央バスが、バス運転手の賃金制度を大きく見直すことを発表しました。新しい制度では、運転手の基本給を最大27万円に引き上げるほか、従来の年功序列型の賃金体系を廃止し、職務内容に応じて給与を決める「職務給」を導入します。

この見直しにより、入社から早い段階で年収約500万円を目指せる仕組みとなり、特に若手や中途採用者の待遇改善を通じて、深刻化するバス運転手不足の解消と離職防止を図る狙いがあります。

新たな賃金制度の概要:基本給は21万~27万円に

北海道中央バスが公表した資料によると、新しい賃金制度は令和8年(2026年)4月からバス乗務員を対象に導入される予定です。

  • 基本給:月額21万円~27万円
  • 住宅手当を含めると、21万3,200円~27万7,200円の水準(基本給+一律手当)
  • 別途、家族手当・時間外勤務手当・通勤手当なども支給

これまでの初任給は月額約19万~20万円程度とされており、今回の見直しにより初任給は一律21万円に引き上げられます。 さらに、経験を積むことで基本給が最大27万円まで上がる仕組みとなっており、同業他社との人材獲得競争を意識した賃金水準の底上げが図られています。

入社2年目で年収500万円も可能に 若手重視で離職防止へ

今回の賃金制度見直しで特に注目されているのが、入社2年目でも年収約500万円を目指せるという点です。 北海道中央バスの資料では、具体的な年収イメージとして次のように示されています。

  • 入社後、早期の段階で年収約500万円(扶養家族3名の場合)
  • 入社後約10年目で年収約570万円(扶養家族3名の場合)

ここで示されている「早期の段階」は、実質的に入社2年目前後で年収500万円の水準を想定していると受け止められており、「入社2年目で年収500万円」というニュースとして大きく話題になっています。

特に、これまで「若いうちは給与が低く、生活が厳しい」「家族を養うには不安」といった理由から、バス運転手の仕事を敬遠したり、別業種へ転職したりするケースも少なくありませんでした。北海道中央バスは、こうした状況を改めるため、若手や中途採用者の賃金を重点的に引き上げる方針を打ち出しています。

会社は、新制度によりバス運転手の給与水準を「一般的な平均賃金を上回る水準」に設定するとしており、人材の確保と定着を強く意識した取り組みであることがうかがえます。

年功序列を廃止し「職務給」へ 仕事内容と賃金を結びつける

今回の改革のもう一つの大きな柱が、年功序列型の賃金体系を廃止し、職務価値に基づいて給与を決める職務給への移行です。

従来は、日本の多くの企業と同様に、年齢や勤続年数によって給与が上がる仕組みが主流でした。しかし、北海道中央バスはこうした制度を見直し、「バス乗務員としての仕事そのもの」を評価して賃金を決める方針を打ち出しました。

  • 年齢や勤続年数だけでなく、「職務の内容」と「責任の重さ」を重視
  • 仕事内容と賃金の関係をより明確かつ納得感のあるものにする狙い
  • プロフェッショナルとして技能・サービスを磨くことで、処遇向上を目指せる仕組み

これにより、「長く勤めれば自動的に上がる給与」から、「担う仕事の価値に応じて評価される給与」へと転換が図られます。会社は、新制度を通じて、乗務員一人ひとりがプロ意識を持ちやすい環境づくりにもつなげたい考えです。

なぜ今、賃金制度を見直すのか 背景に深刻な人手不足とバス事業の存続

北海道中央バスが今回の賃金制度見直しに踏み切った背景には、日本全体で深刻化している労働力不足、特にバス運転手の不足が大きく影響しています。

会社は資料の中で、「日本全体で深刻化する労働力不足は、バス事業の継続において最大の経営課題となっている」と明言しており、自社においても地域の生活を支えるバス乗務員の確保と定着が大きなテーマであるとしています。

また、近年はバス運転手の長時間労働問題や「2024年問題」と呼ばれる働き方改革関連法の影響もあり、運転手の拘束時間や残業時間の上限が厳しく設定されるようになりました。 これは運転手の健康を守り、事故防止のためには重要な一方で、人員が足りないと路線維持が難しくなるというジレンマも生んでいます。

このような状況の中で、各地のバス会社では賃上げや初任給引き上げによって人材獲得に動いており、長野県のバス会社が初任給25万~30万円という高い水準で募集を行うケースも出てきています。 バス運転手の待遇改善が全国的な流れとなる中、北海道中央バスも競争力を高めるための賃金制度の見直しに踏み切った形です。

「エッセンシャルワーカー」としてのバス運転手を支えるために

北海道中央バスは、バス乗務員を「社会を支えるエッセンシャルワーカー」と位置づけています。 通勤・通学、通院、買い物など、地域の人々の日常生活を支える公共交通の担い手として、バス運転手の役割は非常に大きなものです。

しかし、その重要性に比べて、「給料が安くて大変」「不規則勤務で体力的にもきつい」といったイメージが強く、若い世代を中心になり手不足が続いてきました。

今回の賃金制度改革は、こうしたイメージを少しでも変え、「長く安心して働ける仕事」としての魅力を高めるための一歩といえます。会社は資料の中で、「将来にわたって安心して長く働ける環境を整備するため、従来の賃金体系を刷新する」とし、新たな制度を通じて乗務員が誇りを持って働ける環境を構築すると強調しています。

利用者への影響と今後の課題

賃金が上がることは、働く側にとっては大きなプラスですが、その一方で会社側にとっては人件費の増加

北海道中央バスにおいても、今後、路線維持と運転手確保、そして安全運行のバランスをどのように取っていくのかが重要な課題となるでしょう。賃金制度の改善だけでなく、働き方の工夫やダイヤの見直しなど、総合的な取り組みが求められます。

一方で、私たち利用者の側にも、「安全で安定したバス運行を支えるには、ある程度のコストがかかる」という認識が求められてきています。 バスが少し待ち時間の長いものになったり、運賃が上がったりする場面もあるかもしれませんが、その裏側には、運転手が人間らしい生活を守りながら働くための環境整備があることも忘れてはならないポイントです。

北海道中央バスで働くという選択肢

北海道中央バスは、新賃金制度の導入とあわせて、バス乗務員の募集にも力を入れています。 札幌圏を中心とした路線バスの運行が主な業務で、経験を積むと高速バス・貸切バス・定期観光バスなど、より幅広い運転業務にもステップアップできるとしています。

休日は週休2日制で年間105日程度が確保されており、さまざまな手当や福利厚生も整えられています。 新しい賃金制度によって、安定した収入キャリアアップの道筋がより明確になることで、「運転が好き」「地元の足を支えたい」という人にとって、魅力的な選択肢となっていきそうです。

賃金制度の見直しはゴールではなく、あくまでスタートラインです。今後、実際にどれだけ人材確保や離職防止につながるのか、そして地域交通の維持に貢献できるのかが注目されます。北海道中央バスの取り組みは、同じ課題を抱える全国のバス事業者にとっても、大きな参考事例となる可能性があります。

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