イスラエルを訪問した日本国会議員団 ネタニヤフ首相が日本に謝意、先端兵器導入も議題に
自民党を中心とする日本の国会議員団がイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相との会談や、ドローンやレーザー兵器などの先端防衛技術の視察を行いました。今回の訪問では、安全保障分野での協力に加え、ガザ情勢を含む中東地域の安定や、日本の役割についても意見が交わされたとみられます。
ネタニヤフ首相が日本に謝意 「戦争中の支援」に言及
イスラエル首相府の発表によると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自民党の小野寺五典・安全保障調査会長ら日本側代表との会談で、「戦争中に日本が支えてくれたことに謝意を表明した」と述べたとされています。 会談では、イスラエルとパレスチナをめぐる地域情勢や、今後の日・イスラエル間の協力の進め方についても意見交換が行われました。
ネタニヤフ首相は、長らくイスラエル政治の中心人物であり、ガザをめぐる軍事行動や停戦交渉などでも大きな役割を担ってきました。その一方で、イスラエルの軍事作戦には国際的な批判も根強く、ガザでの攻撃をめぐっては、国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ氏に対する逮捕状を出したことも報じられています。 そうした中で、日本との関係強化や日本への謝意表明は、イスラエルにとっても外交的な意味を持つ動きといえます。
小野寺五典・自民党安保調査会長らがイスラエルを訪問
今回イスラエルを訪れたのは、自民党の小野寺五典・安全保障調査会長を団長とする議員団です。小野寺氏は1月4日夜、成田空港から出発し、イスラエルの防衛産業の視察などを行うために現地入りしました。 同行メンバーには、自民党の大野敬太郎衆院議員や松川るい参院議員らが含まれています。
小野寺氏は出発前、記者団に対し、今回の訪問の目的として、「レーザー、無人機、AI(人工知能)、ドローンといった最先端の技術」について意見交換を行うことを挙げました。 イスラエルは、これらの分野で実戦に基づいた高い技術を有するとされており、日本の新たな安全保障戦略を考えるうえで大きな参考になるという考えです。
また、小野寺氏は、イスラエルとイスラム組織ハマスとの間で結ばれた停戦合意の状況や、ガザの復興支援についても現地で意見交換したいと述べています。 「今でも散発的な武力衝突がある。まず停戦を確実なものにすること。その後の復興支援を国際社会でどう応援していくか。その中で日本はどのような役割を果たせるかを考えたい」と語り、軍事面だけでなく、人道支援や復興という観点も強調しました。
日本の国会議員団、イスラエル製先端兵器の導入を視野に視察
今回の訪問は、単なる表敬ではなく、日本側による先端兵器の導入検討という、具体的な目的も伴っています。報道によれば、日本の国会議員15人から成る議員団は、ガザ紛争でも使用されたとされるドローンやAIエンジンなど、イスラエルの先進兵器システムを視察しています。
イスラエルは、ミサイル防衛システムやサイバーセキュリティ、無人機・ドローン分野で世界的な先端技術を保有していることで知られています。 特に、無人航空機(UAV)や小型ドローン、レーザー迎撃システムなどは、近年の紛争で実戦投入されてきました。その経験と技術は、日本にとっても、ミサイル防衛や離島防衛などを考えるうえで大きな関心事となっています。
自民党の小野寺氏は、イスラエルのこうした実戦的な技術について、「今後の日本の安全保障政策を検討する上で役立つ」「実用性の高い知見を収集し、日本の防衛政策に生かす」と述べており、防衛装備品の具体的な導入や連携も視野に入れているとみられます。
イスラエル製ドローン・攻撃型無人機の導入検討
報道によると、防衛省はイスラエル製の攻撃型無人機(ドローン)の導入を検討しており、今回の議員団訪問も、そうした可能性を探る意味合いがあると受け止められています。 2026年度の防衛予算案では、ドローンの大量取得などに1000億円規模の予算が計上されているとされ、その中には艦艇を遠距離から攻撃する無人航空機など、攻撃用の装備も含まれています。
さらに、そのための実証実験には、イスラエル製兵器が含まれているとも報じられています。 つまり、日本は防衛力強化の一環として、イスラエルの無人機技術やAI兵器システムの本格的な導入や、共同開発・技術協力の可能性を探っている段階にあるといえます。
別の報道では、日本の議員団がイスラエルで、ガザ紛争で使われたドローンやAIベースの武器システムなどを実際に視察していることが伝えられています。 こうした視察は、日本国内で進む防衛力強化や、いわゆる「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の議論とも密接に関わってくる可能性があります。
与野党議員が参加 一部からは懸念や批判の声も
今回のイスラエル訪問には、自民党だけでなく、連立与党の一角を占める日本維新の会の議員も参加していると報じられています。 自民党の松川るい参院議員は、今回の訪問について「日本の国益のために活かしたい」とSNSで述べており、日本維新の会の青柳仁士衆院議員も、超党派議員団の一員としてイスラエル政府要人らと面談すると発信しています。
一方で、イスラエルによるガザでの軍事行動は、国連の人権専門家や人権団体などから、国際法違反やジェノサイド(集団殺害)との強い批判を受けています。 国連のパレスチナ人権特別報告者を務めたフランチェスカ・アルバネーゼ氏は、国際軍需企業などがガザでの紛争から利益を得ていると指摘し、日本政府に対して、イスラエルとの軍事情報交換や兵器購入をやめるよう訴えています。
こうした観点から、日本の政党・議員がイスラエルとの防衛協力を進めることについて、「イスラエルの戦争犯罪を事実上容認し、加担することになりかねない」との批判も出ています。 日本国内でも、人道的観点と安全保障上の必要性をどう両立させるかが、今後大きな議論のテーマとなりそうです。
ガザ停戦後の地域情勢と日本の役割
イスラエルとハマスをめぐる紛争は、停戦合意後も完全に終息したわけではなく、一部では散発的な武力衝突が続いていると報じられています。 小野寺氏は、現地の状況を直接確認した上で、停戦の定着とガザの復興支援についてもイスラエル側と話し合う意向を示しました。
日本はこれまでも、中東地域の安定やパレスチナ支援において、主に人道支援や経済協力の面で役割を果たしてきました。軍事的な関与を避けつつ、対話と支援を通じて平和に貢献するという立場をとってきたことが特徴です。その一方で、近年は周辺情勢の緊迫化や日本自身の安全保障環境の変化を受け、防衛力の抜本的強化を進めています。
今回のイスラエル訪問は、日本が「技術協力・装備品導入」という形で中東の軍事大国との関係を深める可能性を示すものであり、日本外交・安全保障政策の転換点となるかどうかにも注目が集まっています。ガザの復興支援や停戦の維持に日本がどのように関与していくのか、また、その一方でイスラエルの兵器を導入することの是非をどう考えるのかが、これからの大きな課題です。
日本の安全保障戦略とイスラエル技術の位置づけ
日本政府は、国家安全保障戦略などいわゆる安保関連3文書の改定を進めており、今後の防衛力整備の方向性が重要な論点になっています。 その中で、無人機・ドローン、AI、サイバー防衛など、新たな戦い方に直結する技術は「ゲームチェンジャー」として位置づけられています。
イスラエルは、周辺国との長年の紛争や不安定な治安環境を背景に、これらの分野で高い技術力を培ってきました。 ミサイル迎撃システム、監視・偵察ドローン、攻撃型無人機、サイバー防衛技術などは、すでに実戦で運用されており、その評価も高いとされています。日本側としては、その蓄積されたノウハウを学び、必要な装備を導入することで、自国の防衛力を効率的に高めたい考えがあります。
しかし同時に、これらの技術が実際に使われてきたのは、ガザなどの紛争地域であり、多くの市民が犠牲になった戦場です。そこで培われた兵器を導入することが、人道的にどう受け止められるべきかという問題は避けて通れません。安全保障上の必要性と、人権・国際法の尊重という価値観を、どのように両立させていくのかが問われています。
今後の注目点
- ネタニヤフ首相と日本側の会談内容の詳細が、今後どの程度公表されるか
- イスラエル製ドローンやAI兵器システムの導入が、防衛省や国会でどのように議論されるか
- ガザ復興支援や停戦維持に対する、日本政府の具体的な支援策の中身
- 国内外の人権団体や専門家からの懸念・批判に、政府・与党がどう応えていくか
今回のイスラエル訪問は、単なる外交儀礼にとどまらず、日本の安全保障政策や中東外交の方向性に大きな影響を与えうる動きです。先端技術の導入という現実的な安全保障上の課題と、戦争や人権侵害への関与をどう最小化するかという倫理的な問いの両方に、丁寧に向き合うことが求められています。



