中国軍が台湾周辺で大規模軍事演習を実施 10万人以上の乗客に影響
中国人民解放軍の東部戦区は12月29日、台湾周辺で「正義使命2025」と題した大規模な軍事演習を開始しました。この演習により、台湾の航空便に大きな混乱が生じ、10万人以上の乗客と857便が影響を受けている状況です。
演習の規模と内容
台湾国防部によると、12月29日午後3時までに、中国の軍用機延べ89機と軍艦14隻、海警船14隻が台湾海峡周辺・離島周辺で活動していることが確認されています。軍用機には主力戦闘機や補助戦闘機、無人機が含まれており、このうち延べ67機は台湾が定める警戒区域「応変区」に進入しました。
さらに、水陸両用強襲揚陸艦4隻が西太平洋一帯で活動していることも確認されています。中国側は演習区域として7カ所を公表しており、12月30日の演習開始時には8カ所目の演習区域が東部海域に開設される予定です。
2日目の演習と実弾射撃訓練
12月30日には演習の2日目が実施されます。日本時間の午前9時から午後7時まで、実弾の射撃訓練などが行われる予定です。中国軍は台湾を取り囲む5つのエリアを指定し、実弾射撃訓練を実施すると発表しており、指定した海域や空域へ船舶や航空機が入らないよう警告しています。
中国軍の東部戦区は、この演習に駆逐艦や爆撃機など多くの艦艇と航空機が参加し、台湾本島を取り囲む態勢で実施されると説明しています。
航空便への大きな影響
この大規模な軍事演習により、台湾の航空業界は大きな混乱に直面しています。台湾交通当局によると、10万人以上の乗客と857便が欠航や遅延の影響を受けると明らかにしており、多くの旅客が移動計画の変更を余儀なくされています。
指定された演習海域と空域への出入りが制限されるため、台湾発着便の多くが迂回ルートの利用やダイヤの変更を余儀なくされています。
中国側の主張と対抗姿勢
中国外務省は、この軍事演習について明確な立場を示しています。報道官の林剣氏は、軍事演習は「台湾独立」分裂勢力が武力による独立を図る行為に対する厳しい戒めであり、国家の主権と領土を守るために必要な行動だと主張しました。
さらに、台湾の民進党政権を名指しし、「アメリカに依存して独立を図ろう」と企てる「平和の破壊者」「戦争の扇動者」だと非難しています。中国外務省は、ボトムラインを越えて挑発するいかなる悪質な行為も、必ず中国の断固たる反撃に遭うと主張しています。
台湾側の対応
これに対し、台湾国防部は即座に対策を講じています。国防部政務オフィス主任で報道官の孫立方中将は、中国共産党がインド太平洋地域で行っている軍事行動やグレーゾーンでのかく乱が、地域の平和と安定を深刻に脅かしていると非難しました。
国軍は直ちに対策センターを設置し、全体の戦備規定に基づいて適切に兵力を派遣し対応していると説明しています。また、国防部は中国軍の軍事行動に関する情報を継続的に監視・公開し、透明性を保つ姿勢を示しています。
国際的な関心
この軍事演習の最中にも、他国の軍用機が台湾海峡周辺で活動していることが確認されています。台湾国防部参謀本部情報・参謀次長室次長の謝日升中将は、「あった」とした上で、国際航路上では多数の航空機が行き交っているため、機体の国籍や行動について詳しくは説明できないと述べました。
このことは、台湾周辺海域の複雑な国際的な状況を象徴していると言えます。
今後の見通し
中国軍による軍事演習は当初の予定通り12月30日も実施される予定であり、台湾周辺の海空域での警戒は続くことになります。航空業界や海運業界は、演習期間中の代替ルートの確保や乗客への情報提供に注力することが求められています。
この軍事演習は、台湾をめぐる海峡両岸の対立構図が今なお深刻であることを改めて示すものとなっています。




