「netkeiba」も沸かせた“ロイヤルファミリー効果” 有馬記念売上大幅増の舞台裏

2025年の暮れを彩った「第70回有馬記念」は、競馬ファンだけでなく、ドラマファンやライト層も巻き込み、大きな話題となりました。馬券売上は713億4520万6100円と、前年から約163億円増という歴史的な伸びを記録し、21世紀で初めて700億円台に到達しました。この背景には、TBS系ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」のヒットと、それに呼応するように盛り上がった競馬メディア「netkeiba」などのオンライン情報源の存在がありました。

有馬記念、26年ぶりの700億円台 前年比163億円増のインパクト

JRAが中山競馬場で行った今年の有馬記念の馬券売上は、713億4520万6100円。前年の550億8305万7100円から、なんと約163億円の大幅増となりました。700億円台に乗せたのは、1999年以来26年ぶりで、売上額としては歴代8位という高水準です。

有馬記念はもともと「一年の締めくくり」として、ほかのレースと比べても圧倒的な売上を誇るビッグレースです。1996年には875億円超という空前の売上を記録し、「世界でもっとも馬券が売れたレース」としてギネス認定も受けています。しかし、景気後退などの影響もあり、その後は徐々に売上が低下し、2012年には約333億円にまで落ち込みました。

そこから流れを変えた一つの要因が、ネットでの馬券購入の普及です。2012年以降、インターネット投票の定着とともに売上は再び右肩上がりに転じ、2022年には18年ぶりに500億円を突破しました。この十数年は、ほぼ毎年10億〜20億円ずつ増えてきたところに、一気に163億円増という“ジャンプアップ”が起きたことになります。その裏には、2025年の競馬界を象徴する存在となったドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」の存在があると、多くの関係者が指摘しています。

「ザ・ロイヤルファミリー」効果 ドラマが競馬を“物語”として広げた

有馬記念の売上急増を語るうえで欠かせないのが、TBS系のドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」です。このドラマはJRAが全面協力し、実在のトップジョッキーや調教師も出演。競馬場やトレーニングセンター(トレセン)でのロケをふんだんに行い、本物の競馬の空気感をドラマの中に落とし込んだ作品でした。

放送期間中、平均視聴率は10%超のヒットを記録し、それまで競馬にほとんど触れてこなかった視聴者にも、「競馬ってこんなにドラマチックなんだ」という印象を強く残しました。ドラマの中でメインに描かれたレースが有馬記念だったこともあり、「ドラマ全体が有馬記念のPRになっていた」と評されるほどです。

なお、ファン投票にもその影響は色濃く現れました。ファン投票1位となったレガレイラ61万2771票を集め、前年のドウデュースが持っていた歴代最多票(47万8415票)を一気に13万票以上も上回りました。中山競馬場のスタンドには、「初めて来たのでは」と思われる観客も目立ったといい、ドラマをきっかけに“にわかファン”や新規層が相当数流入したことがうかがえます。

レース当日には、ドラマに出演した妻夫木聡さん松本若菜さん、原作者の早見和真さんらも中山競馬場を訪れ、スタンドに姿を見せると大歓声を浴びました。フィクションとリアルの世界が交差する光景は、テレビ画面越しに競馬を見ていた視聴者にとっても、大きな興奮を与えたことでしょう。

ミュージアムマイル優勝と“栗須チャン”サイン ドラマと現実が重なる瞬間

今年の有馬記念を制したのは、クリスチャン・デムーロ騎手騎乗のミュージアムマイルでした。皐月賞馬でもある同馬は、古馬の強豪たちを相手に見事な走りを見せ、自身2度目のG1制覇を達成しました。皐月賞馬が有馬記念を制したのは、2021年のエフフォーリア以来となる15頭目であり、同一年内に皐月賞と有馬記念という2つのG1を制したのは、史上8頭目という貴重な快挙でもあります。

レース後、C.デムーロ騎手は「『ザ・ロイヤルファミリー』を見て、勝ちたいと思った」と語り、ドラマに触発された心境を明かしました。現役ジョッキー自身がドラマを見て奮い立ち、それを結果につなげたというエピソードは、多くのファンの心を打ちました。

さらに、競馬ファンの間で話題となったのが、“サイン馬券”としてささやかれた偶然の一致です。ドラマの主人公は、妻夫木聡さんが演じた栗須(くりす)。有馬記念を勝ったのはクリスチャン(C.デムーロ)とミュージアムマイルで、「栗須チャンが勝った」とも読める――そんな言葉遊びが、ネット上や場内で広く語られました。こうした“遊び心”が、多くの人にとって馬券購入をより楽しいものにし、全体の売上増に一役買ったとも言えるでしょう。

netkeibaで広がる情報と熱狂 オンライン時代の有馬記念

今回の有馬記念の盛り上がりを考える際に重要なのが、オンライン情報サイト「netkeiba」やJRA公式のネット投票サービスなど、インターネット環境の整備です。前述のとおり、2012年以降はネット購入の普及が売上増の大きな推進力となり、2025年にはついに700億円台に到達しました。

netkeibaでは、有馬記念の売上速報やレース結果、ミュージアムマイルの全成績、払戻金一覧などをいち早く掲載し、ファンにとって欠かせない情報源となりました。なかでも、今年は次のような点でユーザーの注目を集めました。

  • 売上速報・記録解説:「売上は713億4520万6100円」「前年比約163億円増」「21世紀初の700億円台」といった数字を分かりやすく伝えたこと。
  • レース分析:ミュージアムマイルの走りや、レガレイラが4着に敗れ連覇を逃した経緯など、専門的な視点を含めた解説。
  • 関連ニュースの連続掲載:「ロイヤルファミリー効果」をテーマにした記事や、C.デムーロ騎手のコメントを取り上げたニュースを連動させたこと。

こうしたオンラインでの詳細な情報提供によって、「テレビでドラマを見て競馬に興味を持った人」が、netkeibaでデータやコラムを読み、JRAのネット投票で馬券を購入する――という自然な流れが生まれました。まさに、ドラマ・専門メディア・公式サービスが一体となって、今年の有馬記念の熱狂を作り上げたと言えるでしょう。

「誰かの負けた涙」と「ザ・ロイヤルファミリー」 有馬記念が映し出す感情

産経新聞のコラム「産経抄」では、今年の有馬記念と「ザ・ロイヤルファミリー」を重ね合わせながら、「誰かの負けた涙」という表現を用いて競馬の本質に迫る論考が掲載されました(ニュース内容3の主題)。コラムの趣旨は、競馬が「勝った馬・勝った人」だけの物語ではない、という点にあります。

ゴール板を駆け抜けるのはいつも一頭だけですが、その背後には、多くの馬、多くの騎手、多くの馬主、そして多くのファンの「負けた涙」がある――。ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」も、華やかな勝利の裏にある挫折や苦悩を丁寧に描いた作品であり、その視点が視聴者に深い共感とリアリティを与えました。

有馬記念はファン投票によって出走メンバーが決まるため、「この馬に一年間の思いを託したい」というファンの感情が凝縮されたレースです。今年も、連覇を期待されたレガレイラが4着に敗れたこと、人気を集めながら届かなかった馬たちの走りなど、「負けた側」にも多くのドラマがありました。コラムでは、そうした「報われなかった思い」にも光を当てることで、競馬というスポーツの懐深さを伝えようとしていました。

「ザ・ロイヤルファミリー」出演俳優が単勝1万円勝負 吉沢悠さんの“あの時の気持ち”

ニュース内容2として話題になったのが、ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」に出演した俳優吉沢悠さんが、有馬記念で単勝1万円勝負をしたというエピソードです。吉沢さんはインタビューで、「あの時の気持ちを乗せて」と語り、ドラマの撮影を通じて感じた競馬関係者の思いや、作品に込めた感情をそのまま馬券に託した心境を明かしました(ニュース内容2)。

ドラマの出演者が実際のレースでも馬券を購入し、その様子がニュースになるというのは、まさにフィクションとリアルが地続きになった象徴的な出来事です。「ドラマで感情移入していた分、レースを観るときのドキドキが普段と全然違った」といったコメントは、多くのファンの共感を呼びました。

こうしたエピソードを通して、「俳優」「視聴者」「競馬ファン」の間に感情的な橋がかかり、「自分も単勝1万円、やってみようかな」と背中を押された人も少なくなかったはずです。結果的にそれが、全体の売上増という数字にもつながっていったと考えられます。

新たなファン層とこれからの競馬 netkeibaとメディアの役割

2025年の有馬記念は、「ロイヤルファミリー効果」とも呼ばれるほど、ドラマと連動した盛り上がりを見せました。しかし、その熱狂を一過性のブームで終わらせず、今後の競馬界全体の活性化につなげていけるかどうかが、これからの大きなテーマです。

その意味で、netkeibaをはじめとするオンライン情報サイトには、次のような役割が期待されています。

  • 初心者向けのわかりやすい情報提供:「初めて競馬に触れた」という人でも理解しやすい、基礎知識や予想のポイント、レースの楽しみ方の解説。
  • データと物語の両立:オッズやタイムなどの数字だけでなく、馬や騎手、調教師のストーリーを伝えることで、ドラマ性を感じられる記事作り。
  • 双方向のコミュニケーション:コメント欄やSNS連携を通じて、ファン同士が感想や予想を共有できる場を用意し、「一人で観る競馬」から「みんなで楽しむ競馬」へ広げていくこと。

また、JRAやテレビ局側も、「ザ・ロイヤルファミリー」で得た手応えをもとに、今後も競馬の魅力を多角的に発信していくことが求められます。ドラマや映画、バラエティ番組などを通じて、競馬が持つ「物語」「人間ドラマ」「感動」をわかりやすく伝えられれば、今回の有馬記念のように、新しいファンが一気に増える瞬間は今後も生まれていくでしょう。

そして、その受け皿となるのが、スマホ一つで馬券を買え、詳細なデータもすぐに確認できるインターネット環境です。netkeibaのような専門サイトは、テレビや新聞がきっかけで興味を持った人にとって、「次の一歩」を踏み出すための心強いパートナーになっています。

「誰かの負けた涙」を抱えつつも、それでもまた次のレースに向かっていく――。そんな競馬の世界に、今年は「ザ・ロイヤルファミリー」という物語が新たな光を当て、有馬記念という舞台を通じて、多くの人々の心をつなぎました。netkeibaをはじめとするオンラインメディアが、その熱を受け止め、次の世代のファンへとつないでいくことが、これからの競馬をさらに豊かにしていくはずです。

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