鈴鹿サーキットで進む「拠点づくり」 ─ F1日本GPに向けた西コース再舗装と新たな取り組み

三重県鈴鹿市と鈴鹿サーキットをめぐって、いま「拠点づくり」をキーワードにした動きが続いています。
鈴鹿市では今年の一文字に、拠点の「」が選ばれ、市としての重要ニュースとともに発表されました。その背景には、世界的なモータースポーツの舞台としての鈴鹿サーキットの存在と、地域全体で「拠点」を強化していく流れがあります。
そんな中、2026年のF1日本グランプリや国際レースを見据え、サーキットでは西コースの再舗装工事が進行中です。また、来場者の移動負担を軽くするための新たな取り組みとして、「パーク&ライド」を紹介する検証動画も公開され、話題を集めています。

「今年の一文字」は拠点の「拠」 ─ 鈴鹿サーキットと街づくり

鈴鹿市長が発表した「今年の一文字」は、拠点の「」でした。この漢字には、「足場」「基盤」「よりどころ」といった意味があり、鈴鹿市を産業・観光・子育て・防災などさまざまな分野の拠点としてさらに強くしていきたい、という思いが込められています。

その象徴的な存在が、言うまでもなく鈴鹿サーキットです。日本を代表するレーシングコースであり、F1日本グランプリをはじめ、二輪・四輪の国際レース、企業のテスト走行、さらに家族向けの遊園地やホテルなど、幅広い顔を持つ“総合モビリティリゾート”として機能しています。
鈴鹿サーキットが国内外から人と情報を引き寄せることで、鈴鹿市そのものもモータースポーツ文化の拠点として国内外に発信されていると言えるでしょう。

今回、サーキットで進む西コース再舗装工事や「パーク&ライド」の検証は、まさにこの「拠」を支える取り組みの一部です。コースの安全性・快適性を高めること、交通アクセスをよりスムーズにすることは、世界に誇れる拠点づくりに直結しています。

2026年F1日本GPを見据えた西コース再舗装工事

鈴鹿サーキットの西コースでは、2026年のF1日本グランプリや主要レース開催に向けて、路面の再舗装工事が進められています。今回の工事は、単なる補修ではなく、安全性・走行性の向上を目的とした本格的な路面張り替えです。

西コースの路面張替えは、公式情報によると2025年12月22日から2026年2月14日までの期間で実施される予定とされています。このスケジュールは、春から本格化するモータースポーツシーズンや、F1日本GPなどの開催に間に合わせるために組まれており、工事期間中は主に東コースの走行枠が用意される形となっています。

今回対象となっている西コースは、一般的にヘアピン(11コーナー)からスプーンカーブ、立体交差を経て最終シケイン「トライアングル」へと続く区間とされ、F1GPをはじめ多くの国際レースで「第3セクター」にあたる部分です。この区間は、高速で車両に大きな負荷がかかるため、路面の状態がマシンコントロールやタイヤへの負担、安全性に大きく影響します。

再舗装では、従来のアスファルトを剥がした上で、新世代の舗装材が敷設されていると報じられており、特に以下の点が期待されています。

  • 排水性の改善による雨天時のグリップ向上
  • 路面のうねり・段差の低減による安定性の向上
  • タイヤの摩耗バランスの改善と、長距離レースでの戦略性向上
  • さまざまなカテゴリーのマシンに対応できる汎用性の高い路面特性

鈴鹿サーキットでは、すでに2025年初頭に第1セクター(東コース側)の再舗装が完了しており、今回の西コース張替えによって、コース全体として新しい路面に生まれ変わる流れとなっています。
これまでの改修では、一部区間で初期テスト時にわずかなうねりなども指摘されましたが、そのフィードバックも踏まえた上で、西コースの工事ではさらなる精度が求められています。

また、西コースの路面張替えは、F1だけでなく、二輪の世界耐久選手権「鈴鹿8時間耐久ロードレース」や、インターコンチネンタルGTチャレンジ 鈴鹿1000kmなど、2026年に予定される主要イベントのためのアップデートとしても重要な意味を持ちます。高負荷かつ長時間走行が続くレースでは、路面の性能がレース展開にも大きく関わってくるためです。

鈴鹿サーキットの改修の歴史と今回の位置づけ

鈴鹿サーキットは、これまでも安全性と国際基準を満たすため、段階的に改修を続けてきました。
公式資料などによると、過去には以下のような主な改修が行われています。

  • 2009年前後:東コースエリアを中心とした大規模改修(ピットビル新設、観戦エリア整備など)
  • 2012年:西コース(ダンロップ〜シケイン)の路面再舗装
  • 2014年:シケイン入口付近60メートルの再舗装
  • 2017年・2019年・2020年:1–2コーナー、130R、デグナーカーブなどの縁石・路面改修
  • 2022年:南コースの全面再舗装や排水設備更新
  • 2025年:東コース路面張替え(1月〜2月)

このように、鈴鹿サーキットは1950年代・60年代に造られた古いコースでありながら、段階的なアップデートによって、世界トップレベルのレースを開催し続けてきました。
2025年から26年にかけて行われる東・西コースの連続した路面張替えは、その中でも大きな節目と言える改修です。特にF1の2026年レギュレーション変更期に合わせる形で路面が刷新されることから、マシンの進化とコース特性がどのようにかみ合うのか、多くのファンや関係者が注目しています。

パーク&ライドの検証動画公開 ─ 来場者に優しい新たな移動手段

鈴鹿サーキットは、コース改修だけでなく、来場者の移動手段の改善にも取り組んでいます。その一つが、「パーク&ライド」と呼ばれる方式の検証です。

パーク&ライドとは、郊外などの指定駐車場に車を停め、そこからはシャトルバスなどの公共的な交通手段で会場まで移動する仕組みのことです。これにより、会場周辺の交通渋滞や駐車場不足を和らげ、来場者のストレスを減らす効果が期待されます。

鈴鹿サーキットでは、このパーク&ライドの運用について、検証の様子や利用の流れを紹介する動画を公開しました。動画では、おおまかに次のようなポイントが分かりやすく説明されているとされています。

  • 指定駐車場までのアクセス方法
  • 駐車後の受付やバス乗り場までの流れ
  • シャトルバスでの移動時間や乗車の様子
  • サーキット到着後の入場ルート
  • 帰りの混雑を和らげるための導線づくり

特にF1日本GPのように、世界中から多くの観客が集まるイベントでは、渋滞や駐車場待ちが観戦体験に大きく影響します。事前に動画で流れをイメージできることで、「どこに車を停めれば良いのか」「どれくらい時間に余裕を見ればいいのか」といった不安を和らげ、初めて鈴鹿を訪れるファンにもやさしい仕組みになっています。

また、パーク&ライドの活用は、環境負荷の軽減や、周辺住民の生活道路への影響を抑える点でも重要です。大きなイベントと地域社会がうまく共存していくために、こうした取り組みを“見える形”で紹介していくことは、とても意義のあることだと言えます。

鈴鹿サーキットが「拠点」であり続けるために

鈴鹿市の「今年の一文字」に選ばれた拠点の「拠」という漢字には、ただ施設を整えるだけでなく、「人が集まり、学び、楽しみ、支え合う場所」という意味合いも込められているように感じられます。

鈴鹿サーキットでは、

  • F1日本GPや世界耐久レースなどの国際イベントの開催
  • 西コースをはじめとするコース改修と安全性向上
  • パーク&ライドなどアクセス改善の取り組み
  • サーキットクルーズやファンイベントなど、地域・ファンとの交流

といった多方面での取り組みが進められています。これらはすべて、「鈴鹿を訪れる人たちが、安心して、快適に、そして楽しく過ごせるようにするため」の工夫です。

2026年に向けて路面が新しくなる西コースは、ドライバーやライダーにとってはもちろん、観客にとっても新たなレース展開やドラマが生まれる舞台となります。
そしてその裏側では、見えにくいところで進むインフラ整備や交通の工夫が、鈴鹿サーキットを支え続けています。

鈴鹿サーキットと鈴鹿市が協力しながら、「拠点の『拠』」にふさわしい街とサーキットづくりを進めていくことで、これからも多くの人に愛される場所であり続けていくことでしょう。

参考元