岩手県宮古市「お飾り市」開幕 和紙に七福神と宝船、年の瀬を彩る縁起物

岩手県宮古市で、毎年年末の風物詩となっている「お飾り市」が始まりました。宮古地域に古くから伝わる縁起物がずらりと並び、新年を迎える準備をしようと多くの市民が会場を訪れ、年の瀬ならではのにぎわいを見せています。

宮古市魚菜市場の駐車場で開催 地元6店舗が出店

お飾り市の会場となっているのは、宮古市の中心部にある魚菜市場の駐車場です。
ここでは27日から大みそかの31日まで、地元の6つの店がお飾りを並べ、店先は鮮やかな色彩であふれています。

出店しているのは、長年お飾り作りに携わってきた職人や、縁起物を扱う専門店など、地域に根ざした店ばかりです。
どの店先にも所狭しとお飾りが並び、訪れた人たちは一つひとつ手に取って表情を確かめながら、家族や商売先に合うものをじっくり選んでいました。

和紙に描かれた七福神と宝船 宮古に伝わる縁起物

宮古市のお飾りは、色とりどりの和紙に、七福神宝船などが描かれた、地域独特の縁起物です。
鮮やかな赤や金、青などを用いて丁寧に色付けされ、年神様を迎える正月飾りとして、古くから地元の家庭や商店で親しまれてきました。

七福神は、福禄寿・恵比寿・大黒天など、福や長寿、商売繁盛をもたらすとされる神様たちで、その姿が賑やかに和紙の上に描かれています。
また、七福神を乗せた宝船は、良い一年の「船出」を願う縁起物として、特に人気があります。

こうしたお飾りは、宮古地域で受け継がれてきた伝統的な正月飾りで、「一年の無事」「家内安全」「商売繁盛」を願って、家の中の目立つ場所や店先に飾られます。
単なる装飾品ではなく、「新しい年をどう迎えたいか」という気持ちを形にした、地元の人にとって大切な文化の一つとなっています。

年末恒例行事として定着 多くの市民が買い物に

お飾り市は、今では宮古の年末恒例行事としてすっかり定着しており、「これを買わないと年を越せない」と話す人も少なくありません。
会場には、家族連れや高齢の夫婦、仕事帰りの人など、さまざまな世代の市民が訪れ、色鮮やかな和紙のお飾りを前に、自然と表情をほころばせていました。

特に、28日には多くの人が会場を訪れ、新しい年が良い一年になるよう願いながら、気に入ったお飾りを選ぶ姿が見られました。
買い物客からは、「もうお正月なんだなという感じ。あっという間の一年でした」といった声や、「来年は家族みんなが健康で、楽しく過ごせればいい」と新年への願いを語る声が聞かれました。

お飾り市は、単に正月用品を買う場というだけでなく、人々が一年を振り返り、新しい年への願いを共有する場にもなっています。
久しぶりに会う知人同士が近況を語り合ったり、店主と客が「今年もお世話になりました」と挨拶を交わしたりする光景も見られ、年の瀬ならではの温かな空気に包まれていました。

職人たちが受け継ぐ技と心 手作業で色付け

お飾りの多くは、一枚一枚、手作業で色付けされています。
和紙に下絵を描き、そこへ丁寧に色を重ねていく作業は、長年の経験がものを言う職人技です。七福神の表情や衣の色合い、宝船の細かな装飾など、細部までこだわりが込められています。

制作に携わる人々にとって、お飾りは「売り物」であると同時に、「宮古の文化そのもの」です。
地域に伝わる図柄や色の使い方を守りながらも、少しずつ現代の暮らしに合うよう工夫を重ねてきたとされ、そうした積み重ねが、今の多彩なお飾りの姿につながっています。

訪れた人の中には、「同じ店で毎年買っている」「祖父母の代からこのお飾りを飾っている」と話す人もいて、世代を超えて受け継がれる正月の風景であることがうかがえます。
子どもと一緒に訪れた家族が、「これは福の神様なんだよ」と説明しながらお飾りを選ぶ様子も見られ、伝統が次の世代へと手渡されていることを感じさせます。

飾り方と込められた願い

宮古市のお飾りは、購入した後、家の中のよく見える場所に飾られるのが一般的です。
仏間や客間、玄関先など、「一年を通して家族の目に留まる場所」に飾ることで、日々、七福神や宝船に込められた願いを思い出すという人もいます。

そこには、「新しい年を良い年にしたい」という願いに加えて、「一年の無事を見守ってほしい」という気持ちも込められています。
商売をしている家庭では、店の壁やレジの近くに飾り、商売繁盛多くの出会いを願う場合も多いとされています。

また、お飾り市の時期が近づくと、「今年はどんな図柄にしようか」「昨年は宝船だったから、今年は七福神かな」といった会話が家族の間で交わされるという声もあり、選ぶ時間そのものが年末の楽しみになっている家庭も少なくありません。

年の瀬の空気をつくる「お飾り市」

宮古市では、このお飾り市が始まると、「いよいよ年の瀬だ」と感じる市民も多いといいます。
魚菜市場の駐車場に並ぶ屋台の明かりや、人々の話し声、和紙の鮮やかな色彩が合わさり、街全体に正月を迎える空気が広がっていきます。

近くの商店街でも、この時期になると正月用品の売り場が広がり、買い物袋を手にした人たちが行き交う姿が見られます。
お飾り市でお気に入りの一枚を手に入れた後、鏡餅や食材を買い求める人も多く、宮古の年末の暮らしと商店街のにぎわいをつなぐ役割も果たしています。

お飾り市は、大みそかの31日まで、宮古市魚菜市場で開かれています。
新年を前に、七福神や宝船に願いを託そうとする人々の姿は、これからも宮古市の冬の風物詩として受け継がれていきそうです。

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