高校バスケ「ウインターカップ2025」――鳥取城北が見せた“爆発力ではなく粘り”のバスケットボール

高校バスケットボールの冬の祭典「SoftBank ウインターカップ2025」(令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会)は、男子準々決勝を終え、ベスト4が出そろいました。その中心にいるのが、第1シード・鳥取城北高校です。
インターハイ王者として大会に乗り込んだ彼らは、今大会でも “爆発的な得点力” ではなく、土壇場で相手を上回る「粘り」と「接戦を制する力」で勝ち上がっています。

鳥取城北、北陸学院との接戦を制して4強入り

男子準々決勝、鳥取城北高校(鳥取)は北陸学院高校(石川)と対戦しました。第1シードとして優勝候補に名前が挙がる鳥取城北でしたが、この試合は決して楽な展開ではありませんでした。
試合は65-61と、最後の最後まで勝敗の行方がわからない接戦。終盤、北陸学院の猛追を受けながらも、鳥取城北はリードを守りきり、準決勝進出を決めました。

注目すべきは、その勝ち方です。大量リードを奪って押し切るのではなく、相手の勢いを受け止めながら、要所で守りとリバウンド、そして確率の高いシュートで得点を重ねる。スコアだけを見れば4点差ですが、その中身には「インターハイ王者」としての落ち着きと“勝ち切る力”がはっきりと表れていました。

北陸学院・小笠原和真の大爆発と、なお崩れない鳥取城北

この試合で相手の北陸学院は、2年生ガード小笠原和真が大暴れ。3ポイントシュートを8本沈め、計32得点とまさに“爆発”。
第4クォーターには鬼気迫る追い上げを見せ、会場の空気を一気に北陸学院側に引き寄せる時間帯もありました。

それでも鳥取城北は崩れませんでした。
リードを縮められながらも、慌てて早打ちに走らないこと、ファウルゲームになりかける場面でもフリースローをしっかり沈めること、ディフェンスで失点を最小限に抑えることなど、細かな局面で“ミスをしない”バスケットを続けたことが、最後の4点差につながりました。

北陸学院の小笠原が「爆発力」で試合を動かしたのに対し、鳥取城北はチーム全体の粘りとゲームマネジメントで対抗した形です。
この対比こそが、「爆発力ではなく、粘りで勝つ」という今大会の鳥取城北を象徴していると言えるでしょう。

インターハイに続く“夏冬連覇”へ前進

鳥取城北は、今年夏のインターハイで男子初優勝を飾ったチームです。
その勢いを持って臨んだウインターカップでも、第1シードとして堂々とコートに立っています。北陸学院を退けたことで、インターハイとウインターカップの「夏冬連覇」へ大きく前進しました。

インターハイ優勝校が、そのまま冬も頂点を狙う構図は、高校バスケファンにとっても大きな見どころです。
今大会は、事前の展望でも「インターハイ王者・鳥取城北が貫禄を見せるのか、それとも雪辱に燃える強豪校が歴史を塗り替えるのか」が注目点として語られてきました。
そのなかで鳥取城北は、プレッシャーを受けながらも、結果で期待に応え続けています。

準決勝の相手は前回王者・福岡大学附属大濠

鳥取城北が準決勝で対戦するのは、前回大会王者・福岡大学附属大濠高校(福岡)です。
大濠は準々決勝で土浦日本大学高校(茨城)を81-67で破り、王者らしい安定感を見せました。

この試合で大濠を引っ張ったのは、通称“怪物1年生”・白谷柱誠ジャック。20得点7リバウンドと堂々たるスタッツでチームをけん引しました。
さらに、2年生エースの本田蕗以も15得点をマークし、世代をまたぐタレントが揃ったチームであることを改めて印象づけています。

こうして準決勝は、
「インターハイ王者」鳥取城北 vs 「ウインターカップ前回王者」福岡大学附属大濠
という、まさに高校バスケ頂上決戦の一つとも言えるカードになりました。

鳥取城北がこれまで通りの粘り強いバスケットで王者・大濠を封じるのか、それとも大濠の多彩なオフェンスと個の力が上回るのか。
“爆発力”と“粘り”――スタイルの違いにも注目が集まります。

もう一つの準決勝カード――福岡第一と東山も接戦を制して4強へ

男子の準決勝もう一カードは、福岡第一高校東山高校の対戦となりました。
福岡第一は、帝京長岡高校(新潟)の反撃を振り切り、76-72で勝利。
終盤まで流れの読めない試合展開のなかで、双子ガードの宮本聡宮本耀が要所で存在感を発揮し、最後はチーム最多16得点のトンプソン ヨセフ ハサンが勝利を引き寄せる3ポイントを沈めました。

一方の東山は、第2シード・八王子学園八王子高校を相手に、劇的な逆転勝利を収めています。
試合は序盤から八王子がリードを奪い、東山は0-11のランを許すなど苦しい立ち上がり。
インサイドのニャンセ ハセダト、アウトサイドの照井昇太朗らを中心に、八王子が内外からバランスよく得点を重ね、ハーフタイム時点でも八王子が7点リードを保ちました。

それでも東山は諦めませんでした。
第3クォーターも点差を広げられかけましたが、第4クォーターに入ってエースの佐藤凪が覚醒。
果敢なドライブでファウルをもらいながら得点を重ね、試合残り2分で東山が初めて逆転に成功します。

さらに、4点リードで迎えた残り30秒には、佐藤凪の弟である佐藤久遠が、勝利を引き寄せる3ポイントを沈めました。
東山は最後の10分間で27-15とスコアをひっくり返し、77-74で逆転勝利。2大会連続となる準決勝進出を決めました。

佐藤凪はこの試合で、ゲームハイとなる29得点に加え、4リバウンド7アシスト2スティールと、まさに“チームの大黒柱”とも言える活躍。
中村颯斗も3ポイント6本成功を含む20得点、佐藤久遠も15得点7リバウンドと、東山は複数の選手が二桁得点を挙げるバランスの良さを見せました。

「接戦を制する力」が問われるウインターカップ

男子準々決勝4試合のスコアを見ると、どの試合も接戦の中での“勝ち切る力”が勝敗を分けていることがわかります。

  • 鳥取城北 65-61 北陸学院
  • 福岡大学附属大濠 81-67 土浦日本大学
  • 福岡第一 76-72 帝京長岡
  • 東山 77-74 八王子学園八王子

特に、鳥取城北・福岡第一・東山の3校は、終盤までどちらに転んでもおかしくない試合をものにしてベスト4に勝ち上がりました。
こうしたトーナメントでの接戦は、単なる得点力だけでなく、
・流れが悪い時間帯にどれだけ我慢できるか
・ムードに飲まれず、自分たちの形を続けられるか
・ラスト数分で“当たり前のプレー”を確実に遂行できるか

といったメンタル面と戦術理解力が色濃く問われます。

その意味で、鳥取城北が北陸学院の猛追を受けながらも逃げ切った試合は、“爆発力ではなく、粘りで勝つ”チームの象徴的なゲームになったと言っていいでしょう。

テレビ・配信でも盛り上がる「熱冬!」――デイリーハイライトで大会を追体験

「SoftBank ウインターカップ2025」は、現地・東京体育館での観戦に加え、バスケットLIVEや各種配信・放送を通じて全国のファンが楽しめる環境が整っています。
大会5日目となる男子準々決勝・女子準決勝の日程では、YouTubeなどでライブスコア速報が配信され、チャットやSNSでの応援も盛り上がりました。

さらに、テレビ朝日が展開する「熱冬!高校バスケ デイリーハイライト~SoftBank ウインターカップ2025~」では、各日の注目試合や好プレー、選手たちの表情が凝縮されたダイジェストが放送されています。
現地に行けない人でも、ハイライトを通じて鳥取城北の“粘りのバスケ”や、東山の劇的逆転劇など、大会の空気感を追体験できるのが魅力です。

大会公式サイトでは、日程・結果・ボックススコア、現地レポートなども随時更新されており、戦評記事や選手インタビューを読むことで、試合の裏側にあるストーリーにも触れることができます。
例えば、北陸学院・小笠原和真についての現地レポートでは、「飛躍の1年」を送った2年生ガードとして、鳥取城北戦で見せた鬼気迫る追い上げと、その背後にある成長の軌跡が紹介されています。

ウインターカップ2025男子ベスト4と準決勝カード

ここまでの結果を踏まえた、男子ベスト4と準決勝の対戦カードは以下の通りです。

  • 鳥取城北高校(鳥取)
  • 福岡大学附属大濠高校(福岡)
  • 福岡第一高校(福岡)
  • 東山高校(京都)

準決勝カードは、

  • 鳥取城北 - 福岡大学附属大濠
  • 福岡第一 - 東山

という組み合わせになっています。
インターハイ王者 vs 前回ウインターカップ王者、そして福岡の強豪・福岡第一 vs 逆転劇で勢いに乗る東山――どのカードも、「最後に笑うのはどのチームか」を占うには十分すぎるほど見どころの多い対戦です。

“爆発力”だけではない、高校バスケの奥深さ

高校バスケットボールというと、どうしても「得点量の多い選手」「派手なダンクや3ポイント」に注目が集まりがちです。
実際、北陸学院・小笠原和真の32得点や、東山・佐藤凪の29得点といった“爆発的なスタッツ”は、大会のハイライトとして強く記憶に残るプレーでしょう。

一方で、今年のウインターカップ2025男子は、
「粘り」「接戦を制する力」「最後まで諦めないメンタル」
といった、数字には表れにくい部分の重要性を改めて教えてくれています。

鳥取城北が示しているのは、派手さだけではない“勝つためのバスケット”です。
どれだけ相手に流れが傾いても、どれだけ会場の雰囲気が相手に味方しても、自分たちが準備してきたバスケットを信じて、最後までやり続けること
その結果として、「爆発力ではなく、粘りで勝つ」試合が積み重なり、チームは頂点に近づいていきます。

高校バスケの最高峰であるウインターカップ2025。
ベスト4が出そろった今だからこそ、スコアやスタッツだけではなく、各チームがどんな“粘り”を見せて勝ち上がってきたのかに目を向けてみると、より深く大会を楽しむことができるはずです。

参考元