新大関・安青錦に沸く日本列島 地元の祝福と「双葉山ロード」への期待

大相撲界に新たなスターが誕生しました。新大関安青錦(やすあおにしき)の躍進は、相撲ファンだけでなく、出身地ゆかりの地域や地元自治体をも巻き込み、大きな話題となっています。

東京・東村山市では、新入幕力士羽出山(はでやま)の快進撃を祝う横断幕やポスターが掲げられ、住民からの応援メッセージ募集が始まるなど、地域ぐるみの盛り上がりを見せています。一方、国技館の土俵では、新大関・安青錦が「双葉山ロード」を目指し、史上2人目となる新関脇・新大関での連続優勝に意欲を燃やしています。

さらに、安青錦の師匠である秀ノ山親方は、看板力士としての「優遇」と「重圧」の両面を丁寧に解説し、愛弟子の大関初陣にエールを送っています。今回は、こうした動きを丁寧に追いながら、安青錦という力士の現在地と、そこから広がる相撲界・地域社会の熱気を、やさしい言葉でお伝えしていきます。

東村山市が盛り上がる理由 羽出山新入幕を地域ぐるみでお祝い

まずご紹介したいのが、東京・多摩地域にある東村山市の取り組みです。市内出身・ゆかりの力士である羽出山が新入幕を果たしたことを記念し、市内の主要駅や公共施設などにお祝いの横断幕やポスターが掲示されています。

横断幕やポスターには、羽出山のしこ名とともに、「新入幕おめでとう」「東村山から土俵へ」といった温かいメッセージが添えられています。こうした装飾は、通勤・通学中の市民の目にも自然と入り、「うちの町から力士が出ているんだ」という誇らしい気持ちを呼び起こしています。

さらに東村山市では、市民から羽出山への応援メッセージを広く募集しています。募集されたメッセージは、市の広報紙や特設コーナーで紹介されたり、羽出山本人に届けられたりする予定で、多くの人が気軽に参加できる仕組みになっています。

このように、地元自治体が横断幕やポスター、メッセージ募集を通じて力士を応援する動きは、近年少しずつ広がってきました。なかでも東村山市の取り組みは、「新入幕」という節目に合わせて市全体で祝福ムードをつくり出している点で、とても象徴的です。

新入幕力士にとって、土俵の上では厳しい戦いが続きますが、ふるさとからの後押しは何よりの力になります。羽出山が今後番付を上げていけば、いずれ安青錦のような大関・横綱候補として全国区の注目を集める日が来るかもしれません。

安青錦とはどんな力士? 最速級の出世で脚光浴びる新大関

続いて、本題の新大関・安青錦についてご紹介します。安青錦は、幕内昇進から非常に速いスピードで三役、そして大関へと駆け上がったことで「記録的なスピード出世」と注目されている力士です。

相撲界では、十両から幕内、そして三役、大関、横綱と、番付を一段ずつ上げていくのが一般的です。そのなかで、安青錦はわずかな場所数で関脇まで上り詰め、関脇在位中に優勝を果たしたことで、一気に大関昇進を決めました。

こうした急成長の背景には、がっしりとした体格をいかした前に出る攻め相撲と、土俵際で粘る巧みな足腰の強さがあります。立合いから一気に押し込む取り口だけでなく、組んでも相手をじわじわと攻め、最後は力強く寄り切るなど、総合力の高さが持ち味です。

また、取材対応や記者会見で見せる落ち着いた話しぶりや、謙虚な物腰も、ファンの間で好感を集めています。結果を残しつつも決して驕らず、「まだまだ上を目指したい」「ここからが本当の勝負」といった姿勢を貫いている点も、周囲から高く評価されています。

「双葉山ロード」への挑戦 新関脇&新大関での連続優勝を狙う

いま安青錦に注がれている最大の注目ポイントが、「双葉山ロード」という言葉に象徴されています。ここでいう「双葉山ロード」とは、昭和の大横綱として知られる双葉山が築いた、圧倒的な強さと記録になぞらえた表現です。

現役時代の双葉山は、69連勝という金字塔を打ち立てたほか、番付上でも新三役・新大関といった節目を連続優勝で彩るなど、今なお語り継がれる偉業を成し遂げました。安青錦は、そうした偉大な大横綱と直接自分を重ねることには「とんでもない」「比べるなんておこがましい」と恐縮しつつも、番付上の足跡の一部で肩を並べる可能性に強い意欲を見せています。

具体的には、安青錦は「新関脇としての優勝」に続き、今度は「新大関として優勝」を狙っています。もしこれを達成すれば、新関脇・新大関という節目での連続優勝となり、これはこれまでに史上1人しか成し遂げていない珍しい記録となります。

そのため、メディアは「史上2人目の快挙へ」「双葉山ロードに挑む新大関」といった見出しで安青錦を取り上げ、ファンの期待も一気に高まっています。相撲界にとっても、数字や記録の面で語れるスターの登場は、話題づくりという点でも大きな追い風となります。

もちろん、安青錦本人は「大横綱と比べちゃ駄目」と繰り返し強調し、自分のペースで一番一番を大事に取ることの重要性を説いています。それでも、「番付の上では並べるところまで行きたい」という強い思いを隠さない姿勢は、多くの人の心を打っています。

「比べちゃ駄目」それでもにじむ覚悟 会見で見せた本音

新大関昇進後の会見で、安青錦は双葉山との比較について問われ、「大横綱と比べちゃ駄目です」と、やや困ったような表情を見せたと報じられています。

双葉山の名は、相撲ファンにとってまさに「雲の上」の存在です。連勝記録や在位中の圧倒的な強さなど、比較すること自体がはばかられるほどのレジェンドとして語られます。その名を持ち出されることへの戸惑いや恐縮は、ごく自然な反応だと言えるでしょう。

それでも安青錦は、そうした前置きをしたうえで、「番付の上では、そこに少しでも近づきたい」「自分も新関脇・新大関で結果を残していきたい」といった趣旨の思いを口にしています。この「比べられるのは恐れ多いが、自分も挑戦したい」という二重の感情こそ、いまの安青錦の心境をよく表していると言えます。

また会見では、「ここで満足してしまっては終わり」「もう一つ上を目指したい」といった言葉も見られました。大関は力士にとって一つの大きな目標ではありますが、その先にはさらに厳しい「横綱」という頂があります。安青錦が、すでに視線をそのさらに上に向けていることは、頼もしい限りです。

秀ノ山親方が語る「看板力士」の優遇と重圧

安青錦の師匠である秀ノ山親方も、愛弟子の大関初陣を前に、さまざまなメディアでコメントを寄せています。なかでも印象的なのが、「看板力士には、たしかに優遇される面もあるが、そのぶん重圧も大きい」という、両面を見据えた言葉です。

大関クラスの「看板力士」になると、取組では原則として毎日上位力士と当たるようになり、平幕相手の星勘定で番付を守るということがほぼできなくなります。また、本場所中は連日多くのメディアから注目されるため、土俵の外でも会見や取材対応が増えていきます。

一方で、看板力士であることは、番付上の地位や待遇、場所ごとの取組編成の面で、ある程度の「優遇」があるのも事実です。平幕力士に比べれば、ある程度自分のリズムで稽古や調整をしやすい一面もあります。

秀ノ山親方は、そうした「優遇」と「重圧」が同時にのしかかる立場だからこそ、「安青錦には、今まで以上に心身のコントロールが求められる」と説いています。勝ち星を積み重ねることだけでなく、ケガのリスクや精神面の疲労との付き合い方も、大関としての重要な課題だというわけです。

同時に、親方は「あまり気負いすぎないように」「今までどおりの相撲を取れば自然と結果はついてくる」といったエールも送っています。これは安青錦が、これまで自分らしい相撲で結果を出してきたからこそ出てくる言葉でしょう。

大関初陣への期待と不安 「一番一番」が試される場所

新大関として迎える初めての本場所、いわゆる「大関初陣」は、どの力士にとっても特別な意味を持ちます。ファンやメディアは、「どこまで星を伸ばせるか」「優勝争いに絡めるか」といった点に注目し、いつも以上に大きな期待を寄せます。

一方で、相撲界には「大関の地位を守る難しさ」という言葉もあります。ケガや不調が重なれば、一気に負け越してしまい、番付を落としてしまうことも決して珍しくありません。大関という地位は、「なったら安心」というよりも、「なってからが本当の勝負」というべきポジションです。

安青錦の場合、「新大関優勝」という大きな目標がクローズアップされていますが、実際の本場所では、まず一番一番、目の前の相撲に集中できるかどうかが何より大切になります。連日、横綱やトップクラスの大関、三役陣と激突するなかで、どう自分の相撲を貫くかが問われます。

秀ノ山親方が説く「気負いすぎない」「いつもどおり」といった言葉は、そのような厳しい現実を踏まえたうえでのアドバイスです。安青錦が、その教えをどこまで実践できるかが、大関としての最初の試金石になるでしょう。

地域と土俵がつながる時代 羽出山と安青錦が示すもの

今回のニュースでは、東村山市の羽出山新入幕のお祝いと、安青錦の新大関・連続Vへの挑戦、そして秀ノ山親方のエールが同時に取り上げられています。一見別々の話題のようにも思えますが、その根底には「相撲が地域とともにある」という共通点があります。

羽出山の新入幕にわく東村山市の取り組みは、「地元から力士を送り出す」という昔ながらの文化を、現代的な形で受け継いでいるとも言えます。横断幕やポスター、応援メッセージ募集を通して、市民が気軽に相撲と関われる環境が整いつつあります。

一方、安青錦のようなスター力士の存在は、全国各地の相撲ファンだけでなく、子どもたちや、スポーツに関心を持ち始めた世代にも、「相撲ってかっこいい」「こんな力士になりたい」と思わせるきっかけを提供します。双葉山のような往年の大横綱に憧れるだけでなく、いま現在の土俵に立つ力士に憧れを抱けることは、競技そのものの魅力を高めるうえでも非常に大切です。

さらに、秀ノ山親方が語る「看板力士の優遇と重圧」は、単なるスポーツニュースを超えて、「トップに立つ人間の宿命」として、多くの人が共感できるテーマでもあります。華やかな結果の裏では、日々の地道な稽古や、見えないところでの葛藤が積み重なっています。

東村山市で掲げられる羽出山の横断幕も、国技館で土俵に立つ安青錦の姿も、そしてその背後から静かに見守る秀ノ山親方のまなざしも、すべてが「相撲という伝統文化を、今の時代にどう伝えていくか」という大きな物語の一部です。

これからの安青錦と大相撲への期待

今後の焦点は、やはり安青錦が新大関としてどのような成績を残していくかに集まります。もし新大関での優勝を果たせば、史上2人目となる「新関脇&新大関での連続V」という快挙が実現します。その瞬間、双葉山の名は再び大きく取り上げられ、安青錦の名前も、相撲史にしっかりと刻まれることになるでしょう。

もちろん、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではありません。強敵ぞろいの上位陣との対戦、ケガや体調管理との戦い、さらにはメディアやファンからの期待にどう応えるかといった、さまざまな壁が立ちふさがります。

それでも、安青錦がこれまで見せてきた謙虚さひたむきな努力、そして「もう一つ上を」という向上心を持ち続けるならば、きっと大関として、そしてその先の番付でも、長く愛される力士になるはずです。

東村山市の羽出山をはじめ、各地から新たな力士が続々と土俵に上がり、安青錦のようなスターがその頂を目指していく――。その流れのなかで、私たち一人ひとりも、応援メッセージを送ったり、テレビや会場で声援を送ったりしながら、相撲という伝統文化の「支え手」になっていけるのかもしれません。

これからも、新大関・安青錦の一番一番の取り組みと、羽出山をはじめとする新鋭力士たちの奮闘に、温かい目を向けていきたいところです。

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