専業主婦の「年金7万円ショック」──働き方次第で、老後はいくら変わる?
「専業主婦だと、自分の年金は月7万円ほどしかない」と知って、不安やショックを受ける方が増えています。今回は、
- 専業主婦の年金がなぜ「月7万円前後」なのか
- 45歳からパートで月収15万円・65歳まで働くと、年金はいくら増えるのか
- ボーナス月に収入が多いと、年金が止まってしまうのか
- 配偶者の厚生年金加入18年で、加給年金は何年もらえるのか
といったポイントを、わかりやすく整理してお伝えします。
専業主婦の年金はなぜ「月7万円前後」なの?
専業主婦(主夫)が老後にもらえるのは、基本的には「老齢基礎年金」だけです。これは、国民全員が対象となる「国民年金」にあたる部分です。
2025年度の老齢基礎年金の満額は、
月額 69,308円(年額 831,696円)
とされています。40年間(20歳〜60歳)きちんと保険料を納めた人で、この金額が目安です。
一方で、実際に専業主婦が受け取っている老齢基礎年金は、未納や免除の有無などにより差があり、平均では約5万6,000円/月程度というデータもあります。そのため、
- 満額に近い人 → 「月7万円くらい」
- 未納期間などがある人 → 「月5〜6万円程度」
といった受給額になるケースが多く、自分の老後の年金額を知ったときにショックを受ける方が少なくありません。
夫の年金とは「別枠」なので注意
よくある勘違いとして、「夫の厚生年金が多いから、自分も合わせて安心」と思ってしまうことがあります。しかし、
- 夫:老齢基礎年金+厚生年金
- 専業主婦:老齢基礎年金のみ(厚生年金加入歴なしの場合)
と年金はあくまで「各人別々」です。夫婦2人で見ればそれなりの額でも、夫が先に亡くなったあとは、「自分の基礎年金+遺族年金」で暮らすことになり、生活水準が大きく変わってしまうケースもあります。
45歳から月収15万円で65歳まで働くと、年金はいくら増える?
千葉テレビの「チバテレ+プラス」などでも特集されているように、
45歳からパートなどで月収15万円で働き、65歳まで続けた場合、老後の年金がどれくらい増えるのか
という問いに関心が集まっています。
シミュレーションの前提
ニュースで紹介されているケースでは、
- 45歳まで専業主婦(厚生年金の加入歴なし)
- 45歳〜65歳までの20年間、月収15万円で厚生年金に加入して働く
- その結果増えるのは「老齢厚生年金」の部分
という想定で試算されています。
老齢厚生年金が「月7万円程度」増える試算
記事のシミュレーションによると、
45歳から月15万円で65歳まで20年間働くと、老齢厚生年金が「月額約7万円」程度になる
とされています。これは、
- もともと専業主婦として老齢基礎年金のみ → 月7万円前後
- +20年間の就労で厚生年金部分が約7万円/月加算
というイメージで、合計の年金月額が「約14万円」に近づくことになります。
もちろん、実際の金額は、
- 加入期間(実際に何年厚生年金に入るか)
- 標準報酬月額(給与水準)
- 今後の保険料率や改定率
によって変わりますが、「40代半ばからでも働き始めることで、老後の年金を一回り増やすことができる」可能性が示されています。
「働くと損」ではなく「働くほど老後の土台が厚くなる」
パートに出る専業主婦の方からは、
- 「夫の扶養を外れると、社会保険料がかかって損では?」
- 「手取りが減るなら、働かない方がマシ?」
といった不安の声も多く聞かれます。
しかし、老後まで視野を広げると、
- 厚生年金に加入 → 将来の年金額(老齢厚生年金)が着実に増える
- 自分名義の年金が増える → 夫に万一のことがあっても、生活の下支えになる
という「長期的なメリット」が大きいことが分かります。
ボーナス月に「給与+ボーナス=46万円」+年金7万円でも、年金は止まる?
次に、「在職老齢年金」に関する疑問です。ニュースでは、
ボーナス月に、給与とボーナスの合計が46万円で、年金が7万円ある場合、年金は支給停止になるのか?
というケースが取り上げられています。
在職老齢年金の基本的な考え方
在職老齢年金とは、
- 年金をもらいながら厚生年金に加入して働いている場合
- 「給与(+ボーナス)」と「年金」の合計が一定額を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる
という仕組みです。
具体的な支給停止の基準額は年齢(65歳未満か、65歳以上か)などで異なりますが、
- 「標準報酬月額」と「老齢厚生年金(報酬比例部分)」の合計が一定額を超えると、その超えた分の1/2が支給停止
というのが大まかなルールです。
質問のケースではどうなる?
今回のケースのように、
- ボーナスを含めた月の収入:46万円
- 年金:7万円(ここでは便宜的に、厚生年金部分が中心と仮定)
という場合、「収入が多いから即全額停止」とは限りません。
実際の支給停止額は、
- その人の標準報酬月額
- 年金額のうち、どこまでが老齢厚生年金の報酬比例部分か
- 年齢(65歳以上か未満か)
などによって個別に計算されます。
ニュースで取り上げられているように、「ボーナス月に合計46万円、年金7万円」というだけでは、年金が全額止まるとは言い切れない状況です。あくまで、
- 基準額をどれだけ超えているか
- その超過分の半分が支給停止となる
という枠組みで、一部だけがカットされるケースも多いと理解しておくと良いでしょう。
在職老齢年金の計算は複雑なため、具体的な自分の状況については、日本年金機構や年金事務所、年金相談窓口などでシミュレーションしてもらうのがおすすめです。
「自分65歳・配偶者61歳・厚生年金加入18年」でも、加給年金は2年間もらえる?
次は、「加給年金」に関するニュースです。
加給年金とは、
- 厚生年金に一定期間以上加入してきた人が
- 65歳になった時点で、一定の条件を満たす配偶者や子どもを扶養している場合に
- 老齢厚生年金に上乗せされる家族手当のような年金
のことです。
2025年度の加給年金額
2025年4月以降の基準では、配偶者を扶養している場合の加給年金額は、
年額 239,300円 + 特別加算
となっています。特別加算額は生年月日によって異なり、合計で30万円台〜40万円台になるケースもあります。
厚生年金加入期間「18年」で、加給年金は受け取れる?
一般的に、加給年金を受け取るためには、
- 老齢厚生年金の受給権がある(原則として老齢厚生年金の加入期間が20年以上ある)
- 配偶者が65歳未満で一定の条件を満たしている
といった条件があります。
ニュースでは、
- 自分:65歳
- 配偶者:61歳
- 配偶者の厚生年金加入期間:18年
- この場合、自分の老齢厚生年金に「配偶者加給年金」が2年間つくのか?
という疑問が取り上げられています。
ポイントとなるのは、
- 加給年金は「自分の厚生年金の加入期間」が基準であり、「配偶者の加入期間」は直接の条件ではない
- ただし、配偶者自身が老齢厚生年金の受給権を得るタイミングなどにより、加給年金が打ち切られることがある
という点です。
このため、
- 「自分が20年以上厚生年金に加入しているか」
- 「65歳時点で、配偶者を扶養している状態か」
- 「配偶者が自分の厚生年金からの振替加算などを受けるタイミング」
などによって、実際に2年間フルに加給年金がもらえるのかどうかは変わってきます。
ニュースのように「配偶者の厚生年金加入期間が18年」というだけでなく、自分の加入状況を含めて判断されるため、個別に年金事務所などで確認する必要があります。
「専業主婦の年金不安」にどう向き合うか
ここまで見てきたように、
- 専業主婦の老齢基礎年金は、満額でも月7万円弱
- 45歳からでも厚生年金に加入して働けば、老齢厚生年金として月7万円前後を上乗せできる試算もある
- 在職老齢年金や加給年金など、収入や家族状況によって年金額が増減する仕組みがある
といった事実があります。
「自分は専業主婦だから、どうせ年金は少ない」と諦めてしまうのではなく、
- 何歳から・どのくらい働くか
- 厚生年金に加入できる働き方を選べるか
- 60歳以降に任意加入などで基礎年金の満額を目指すか
- 加給年金や遺族年金の仕組みを理解し、家計の見通しを立てるか
といった点を一つひとつ確認していくことが大切になります。
また、2025年の制度改正では、週20時間以上働く人について、企業規模にかかわらず社会保険加入が段階的に義務化される見通しがあり、第3号被保険者制度そのものは廃止されないものの、パートでも厚生年金に入りやすくなる方向が示されています。これは、専業主婦・パート主婦が「自分の年金を増やしやすくなる」側面もあります。
老後の生活資金に不安がある方は、
- ねんきん定期便や「ねんきんネット」で自分と配偶者の将来の年金見込み額を確認する
- パートや再就職などで、厚生年金に加入できる働き方を検討する
- 在職老齢年金や加給年金などは、年金事務所や専門家に相談しながら具体的なシミュレーションをしてもらう
といったステップを踏むことで、「なんとなく不安」から「数字で把握して対策する」段階へと進むことができます。
専業主婦であっても、40代・50代からでも、年金の受け取り方や働き方を工夫することで、老後の安心を少しずつ大きくしていくことは十分可能です。




