JFEスチール、「船舶にGX鋼材」で社長賞を受賞 グループ全体で環境・情報発信の両面強化
JFEグループで、環境負荷低減と情報発信の両面に関わる明るいニュースが続いています。
JFEスチール株式会社は「2025年 JFEスチール社長賞ならびに新商品開発賞」の受賞案件を発表し、その中でも、船舶向けにGX鋼材「JGreeX」を活用した取り組みが社長賞(優秀賞)に選ばれました。
一方、グループ会社のJFEシステムズ株式会社は、コーポレートサイトが「Gomez IRサイトランキング2025」で金賞を受賞し、投資家向け情報発信の分野でも高い評価を得ています。
JFEスチール社長賞とは? 社内で最も権威ある表彰制度
JFEスチールの社長賞は、同社の技術・業務・経営・商品開発などの分野で、特に優れた成果を挙げた案件やプロジェクトに贈られる、社内で最も権威ある表彰のひとつです。
この表彰制度は大きく分けて以下の2つで構成されています。
- JFEスチール社長賞:業務改善、技術開発、収益向上、社会貢献など、多様な取り組みの中から特に優れた案件を選定
- 新商品開発賞:オンリーワン・ナンバーワンを目指す新商品の開発や市場展開に対して授与
2025年も多数の応募案件の中から厳選され、社長賞(優秀賞)6件、新商品開発賞(銀賞)4件などが表彰されています。
この制度は、社員のチャレンジ精神や創意工夫を後押しし、同社の技術力・事業力の底上げにつながる重要な仕組みとなっています。
社長賞受賞:「外航バルク船への『JGreeX』継続採用スキーム構築」
2025年のJFEスチール社長賞(優秀賞)のひとつとして注目されたのが、「外航バルク船への『JGreeX(ジェイグリークス)』継続採用スキーム構築」という案件です。
この取り組みは、JFEスチールが開発・展開しているGXスチール(脱炭素・低炭素を志向した鋼材ブランド)である「JGreeX」を、外航バルク船の新造船建造において継続的に採用してもらう仕組みを確立した点が評価されています。
荷主とサプライヤー、二つの立場を活かしたユニークなビジネスモデル
この案件の大きな特徴は、JFEスチールが「鋼材のサプライヤー」であると同時に、海運会社にとっては「荷主」でもあるという、二重の立場を活かした点にあります。
具体的には、次のような構図です。
- JFEスチールは造船会社に向けて船舶用鋼材を供給する立場
- 同時に、自社の輸出製品を運ぶために海運会社のサービスを利用する荷主という立場も持つ
この二つの関係を組み合わせ、JFEスチールは以下のようなスキームを作り上げました。
- 自社の輸出材を運ぶために新造される外航バルク船の建造時に、GXスチール「JGreeX」を優先的に採用してもらう
- 海運会社・造船会社・JFEスチールの三者が協力して、船舶の建造段階からCO₂排出削減に貢献する仕組みを構築
このように、単に「環境性能の高い鋼材を売る」だけでなく、物流と調達を一体で捉えたビジネスモデルを実現した点が、大きな評価ポイントとなりました。
GX鋼材「JGreeX」とは? CO₂削減に貢献する次世代鋼材
「JGreeX」は、JFEスチールが展開するGXスチール(Green Transformation Steel)の一ブランドで、製造プロセスにおけるCO₂排出量を削減した「環境配慮型の鋼材」です。
詳細な技術仕様や数値は同社の製品情報で説明されていますが、概ね以下のような特徴を持つ鋼材として位置付けられています。(ここからは一般的なGX鋼材の概念説明も含みます)
- 製造時のCO₂排出削減を目的とした低炭素・脱炭素プロセスを活用
- 従来の鋼材と同等の強度・耐久性を維持しつつ、環境負荷を低減
- 鉄鋼業界・サプライチェーン全体のカーボンニュートラル化に貢献
この「JGreeX」を船舶用鋼材として採用することにより、船の建造段階におけるCO₂排出を減らし、さらに完成した船舶が世界中の貨物を運ぶという意味で、サプライチェーン全体の環境負荷低減につながる取り組みとなっています。
世界に先駆けた「社会全体のCO₂削減」ビジネスモデル
JFEスチールは、この「船舶へのJGreeX採用スキーム」を通じて、社会全体のCO₂削減に資するビジネスモデルを世界に先駆けて構築したとしています。
ポイントとなるのは、次のような連鎖です。
- 鋼材製造段階:GX鋼材「JGreeX」により、製造時のCO₂排出を削減
- 船舶建造段階:環境性能に優れた鋼材を用い、建造時の環境負荷を低減
- 運航段階:その船が輸送する貨物(JFEスチールの輸出材など)も含めて、サプライチェーン全体の環境価値を向上
単一の工程・単一企業内での削減にとどまらず、サプライチェーン全体を見据えたCO₂削減の仕組みとして提案・実行したことが、社長賞に値する取り組みとして高く評価されています。
新商品開発賞:建築分野などを支える新工法・新商品の表彰
JFEスチールは、社長賞と並行して新商品開発賞も発表しています。
2025年の新商品開発賞(銀賞)4件のうち、ニュースリリースで紹介されている代表的な案件の一つが、次の案件です。
- 「JFEの異幅仕口工法 SHIBORAN-NEO」(読み:シボラン・ネオ)
この案件は、建築鉄骨の接合部(仕口)に関わる工法で、柱と梁の幅が異なる場合でも効率的かつ高品質に接合できる技術として開発されたものです。
新商品開発賞は、こうしたオンリーワン・ナンバーワンを目指す技術・商品に光を当てることで、同社の製品開発力をさらに高める狙いがあります。
表彰式の様子と社内活性化への効果
JFEスチールは、2025年12月17日に社長賞・新商品開発賞の表彰式を実施し、代表取締役社長の広瀬氏が受賞者とともに記念撮影を行いました。
表彰式は、プロジェクトメンバーの努力を讃えるとともに、社内のモチベーション向上や横展開の促進にもつながります。
同社はニュースリリースの中で、表彰制度の概要についても説明し、日々の業務改善や技術開発、商品開発などの成果を定期的に評価・表彰することで、チャレンジを後押しする企業文化を醸成していく考えを示しています。
JFEシステムズ、IRサイトで「Gomez IRサイトランキング2025」金賞を受賞
JFEグループでは、環境対応や技術開発だけでなく、情報発信の質についても高い評価を受けています。
JFEスチールのグループ会社であるJFEシステムズ株式会社のコーポレートサイトが、「Gomez IRサイトランキング2025」において金賞を受賞しました。
「Gomez IRサイトランキング」は、上場企業などを対象に、投資家向け情報(IR情報)の分かりやすさ、タイムリーさ、サイトの使いやすさなどを総合的に評価するランキングとして広く知られています。
今回、JFEシステムズのサイトが金賞に選ばれたことは、次のような点が評価された結果と考えられます。(ここでは、一般的な評価観点を踏まえた説明を行います)
- 企業情報・決算情報・ニュースリリースなどが分かりやすく整理されている
- 財務データやIR資料へのアクセスがしやすく、投資家が知りたい情報に素早くたどり着ける構成になっている
- スマートフォンなど多様なデバイスからも見やすいユーザビリティの高さ
この金賞受賞により、JFEグループは「環境・技術・IR・情報発信」といった複数の分野で、高い評価を受けていることになります。
環境・デジタル・コミュニケーション、三つの軸で存在感を高めるJFEグループ
今回のニュースから見えてくるのは、JFEグループが三つの大きな軸で存在感を高めているという点です。
- 環境(GX・カーボンニュートラル)
JFEスチールのGX鋼材「JGreeX」を外航バルク船に継続採用するスキームは、鉄鋼業というエネルギー多消費産業が、サプライチェーン全体のCO₂削減に踏み込んだ取り組みを進めている象徴的な事例です。 - 技術・商品開発
新商品開発賞に代表されるように、建築・自動車・インフラなど多様な分野に向けた新工法・新素材の開発を通じて、社会の安全・安心や効率化に寄与する技術を生み出しています。 - デジタル・情報発信
JFEシステムズのIRサイト金賞受賞は、デジタル領域でのユーザビリティ向上や、投資家に対する情報開示の充実度が高く評価された結果といえます。
鉄鋼という重厚長大型産業でありながら、環境配慮型の素材開発やデジタル技術、IRコミュニケーションなど、幅広い分野で取り組みを進めている点は、今後の企業価値向上にも直結していくと考えられます。
今後の注目ポイント
今回の発表を受けて、今後の注目ポイントとしては、次のような点が挙げられます。
- 「JGreeX」を活用した船舶向けビジネスの広がり
今回構築されたスキームが、外航バルク船だけでなく、他の船種や他の貨物輸送にも広がっていくかどうかが注目されます。 - GX鋼材の他分野への展開
自動車、建築、インフラなど、さまざまな分野でGX鋼材のニーズが高まっている中で、JFEスチールがどのように製品ラインアップとビジネスモデルを拡充していくのかが見どころです。 - IR・デジタルコミュニケーションのさらなる進化
JFEシステムズのIRサイト金賞を一つのきっかけとして、グループ全体でウェブサイトやデジタルツールを活用した情報発信がどのように進化していくかも、投資家やステークホルダーにとって重要な視点となります。
環境負荷低減とデジタル・情報発信の強化——。
JFEグループの今回の受賞ラッシュは、同社が「鉄をつくる会社」から「社会の持続可能性を支える総合企業」へと進化している姿を象徴的に示していると言えるでしょう。




