「法治の力」で支える“走在前、挑大梁”――林武書記が語る新しい山東づくり

中国・山東省で、今、大きな転換点となる動きが進んでいます。経済大省として「走在前、挑大梁(先頭に立ち、大きな責任を担う)」ことを掲げる山東が、その土台として一段と重視しているのが「法治(法律に基づく統治)」です。
2025年12月19日、済南市で開かれた山東省委全面依法治省工作会議では、省委書記の林武氏が重要な講話を行い、「法治山東」の新たな段階に向けた方向性を示しました。

林武書記が出席し講話 「全面依法治省」の新たなスタート

この会議は、習近平法治思想と、中央の全面依法治国工作会議の精神を深く学び、山東省での具体的な実行方針を確認するために開かれました。
会議には、林武・山東省委書記が出席して講話を行い、周乃翔・省委副書記兼省長が議事を主宰、葛慧君・省政協主席楊東奇・省人大常委会副主任・党组書記らが出席しました。

林武書記は冒頭、近年の山東の歩みを振り返りながら、全省が習近平法治思想と党中央の重大な決定部署を真剣に実行し、全面依法治省で新たな成果を上げ、新しい段階に入ったことを評価しました。そのうえで、これからの山東は、経済発展や社会ガバナンスだけでなく、あらゆる分野を法治化していくことが不可欠だと強調しました。

「走在前、挑大梁」を法治で支える――林武書記のメッセージ

林武書記が会議で繰り返し強調したキーワードが、「走在前、挑大梁」です。
これは、山東が全国の前列を走り、経済社会発展において大きな役割を担うという意味で、近年、山東の発展目標としてたびたび掲げられてきた言葉です。

林武書記は、この目標を実現するためには、次のような姿勢が必要だと述べました。

  • 習近平総書記の重要指示精神を深く学び、方向性をしっかりとつかむこと
  • 「走在前、挑大梁」という目標にしっかりと照準を合わせること
  • 守正創新(基本を守りつつ、創造的に取り組むこと)
  • 穏中求進(安定の中で前進を図る姿勢)で、全面依法治省を進めること

そして、中国式現代化の「山東篇」を描くためには、強固な法治保障が必要であるとし、今後の全面依法治省の取り組みを「より高いレベルの法治山東づくり」と位置付けました。

会議で示された5つの重点分野

今回の会議では、今後の具体的な取り組みとして、主に次の5つの分野で「全面推進」していくことが示されました。

1. 科学的立法の全面推進

まずは「立法(法律や地方条例づくり)」の質とスピードを高めることです。林武書記は、次のような方向性を示しました。

  • 重点分野・新興分野の立法を加速させ、時代の変化に対応できるようにする
  • 立法の仕事の仕組みを整え、部門間の連携を強化する
  • 多様で柔軟な立法形式を取り入れ、現場のニーズを反映しやすくする

デジタル経済、環境保護、農村振興、企業のイノベーション支援など、さまざまな分野で「法律が追いついていない」状態を解消することが狙いです。

2. 依法行政の全面推進――行政の透明性と公正さを高める

次に重要視されたのが、政府自身が法律に基づいて行動する「依法行政」です。林武書記は、企業や市民にとっても身近な課題として、次の点を挙げました。

  • 法治化されたビジネス環境の継続的な改善(行政手続きの簡素化、公平・透明なルールなど)
  • 行政決定の科学性を高める(調査研究や専門家の意見を重視)
  • 行政執法の規範化(取り締まりや検査などを法律に沿って行う)
  • 行政復議(行政不服申立て)の改善・強化

これらはすべて、企業が安心して投資・経営できる環境づくり、そして市民が「行政に対して意見を言える」仕組みづくりにつながる内容です。

3. 公正司法の全面推進――裁判の信頼性を高める

三つ目は、裁判や司法制度の公正さを一段と高めていくことです。会議では、次のような課題と方向性が示されました。

  • 公正司法の制度・仕組みを整備し、誰もが公平に裁判を受けられるようにする
  • 司法保障の全面的な実施(弁護の権利、弱者への法的支援など)
  • 強制執行制度の改革を深化させ、裁判の判決を実際の履行につなげる

判決が出ても実際に履行されなければ、市民も企業も司法を信頼できません。
そのため、「裁判を受ける権利」だけでなく、「判決がきちんと実現される仕組み」まで含めて強化していく方針が示されています。

4. 全民守法の全面推進――暮らしの中に「法」を根付かせる

四つ目は、全ての人が法律を学び、守る社会づくりです。林武書記は、次のような取り組みの重要性を指摘しました。

  • 法治宣伝・法教育の強化(学校教育、メディア、地域活動などを通じた啓発)
  • 公共法律サービスの供給を最適化(法律相談窓口の充実、オンラインサービスなど)
  • 社会ガバナンスの法治化レベルの向上(地域のトラブルや紛争を法律に基づいて処理)

これにより、トラブルが起きたときに「力」や「情」に頼るのではなく、「法」を基準に冷静に解決する社会に近づくことが期待されています。

5. 涉外法治の全面推進――開かれた山東を法で支える

五つ目の柱として、対外関係に関わる「涉外法治」の強化も打ち出されました。経済大省・山東は、多くの外国企業や海外市場と結びついているため、次のような取り組みが重要になります。

  • 涉外分野の制度づくり(外国投資、国際取引、海事などに関するルール整備)
  • 涉外の行政・司法協力の強化(国境をまたぐ事件や紛争への対応)
  • 涉外法律サービス能力の向上(国際ビジネスに対応できる法務人材・機関の育成)

これらは、海外から見て「安心してビジネスができる場所」としての山東の信頼を高めるための基盤にもなります。

「法治山東」を支えるのは人と仕組み――党の指導と評価制度

会議では、こうした多方面の取り組みを進めるうえで、中国共産党の指導を強化し、責任体制と評価の仕組みを整えることの重要性も強調されました。

  • 党の指導を強め、全面依法治省の責任をしっかり担うこと
  • 全体的な計画と実施を強化し、「バラバラ」ではなく一体となった推進を行うこと
  • 法治に携わる幹部・人材の育成を図り、専門性と責任感を高めること
  • 法治評価体系を整備し、成果を客観的に測れるようにすること

こうした取り組みを通じて、政府、司法機関、各部門、大学などが一体となって「法治山東」づくりに取り組む体制を固めていく考えです。

「経済大省挑大梁」と「齐鲁粮仓」の安定・前進

山東は、全国でも有数の経済大省であり、同時に中国の重要な食糧生産基地でもあります。その象徴的な表現が、「齐鲁粮仓(チーリュー穀倉)」です。
「齐鲁」は山東の古称で、「齐鲁粮仓」は、山東が国家の食糧安全を支える大きな「穀物倉庫」であることを意味します。

近年、「経済大省挑大梁」というテーマのもと、山東では安定した穀物生産(“稳”)と質の高い発展(“进”)を両立させる取り組みが進められています。農業の現代化、農村インフラ整備、農産物ブランド化などを通じて、食糧供給の安定を保ちながら、付加価値の高い産業へと発展させていく方向が打ち出されています。

こうした取り組みを支えるうえでも、土地利用、環境保護、農業補助、農村金融など、多くの分野での「法治のルールづくり」が欠かせません
今回の全面依法治省工作会議で示された方針は、「齐鲁粮仓」の安定と前進を法的に支える役割も担っています。

「十四五」時期の山東答巻――農村振興と法治の関係

中国の第14次五カ年計画(「十四五」)期間中、山東は「走在前、挑大梁」を合言葉に、農村振興の「山東モデル(齐鲁样板)」づくりにも力を入れています。
産業の振興、生活環境の改善、公共サービスの向上、文化の継承など、多くの分野で取り組みが進められていますが、その共通の土台もまた法治です。

農地の権利、農民の収入保障、農村での環境保護、共同経済組織の運営など、農村振興の現場は「ルールづくり」と「ルールの守り方」に直結しています。
今回の会議で示された「全面依法治省」の方針は、都市だけでなく農村を含む全地域で、公平で透明なルールをつくり、安定した発展を後押しするものだといえます。

会議の開催形式と今後の広がり

この全面依法治省工作会議は、ビデオ会議形式で開催されました。
出席者は、関連する省指導者、省委全面依法治省委員会の委員、各市および省直部門、さらに一部の大学の主要責任者など、多岐にわたります。

これは、法治の推進が特定の機関だけの仕事ではなく、地方政府、司法機関、教育機関を含む全体の共同プロジェクトであるという姿勢を示すものです。
会議では、第三陣の全国法治政府建設示範市および示範プロジェクトの授牌も行われ、済南市、煙台市、済寧市、省法院、省人大常委会法工委、省司法庁などの責任者が経験交流の発言を行いました。

今後は、こうした「先進事例」の共有を通じて、山東全域での取り組みがさらに広がっていくことが期待されます。

林武書記の役割と期待される「法治山東」の未来像

今回の会議で注目を集めた人物の一人が、山東省委書記・林武氏です。
林武書記は、これまでも潍坊や済南での調査研究において、「発展と安全の統合」「高品質な党建設による高品質な発展の牽引」などを強調してきました。
こうした視点は、経済・社会の発展と「法治」の関係を重視する姿勢につながっています。

林武書記が今回の会議で示したのは、単に「法を守ろう」という呼びかけにとどまりません。
・新しい産業をどう法で支えるか
・企業の活力と法治のバランスをどう取るか
・市民や農民の権利をどのように守るか
・国際化する経済をどう法的に後押しするか

こうした具体的な課題を意識しながら、「法治山東」を通じて「中国式現代化の山東篇」を描くという、より大きなビジョンが示されています。

今後、科学的立法、依法行政、公正司法、全民守法、涉外法治という5つの柱が、日々の暮らしや企業活動の中でどのように形をとって表れていくのか。
そのプロセスは、山東が「経済大省」としての責任を法治の力で果たしていく姿そのものだといえるでしょう。

参考元