ファーストリテイリング株に追い風 大手証券が「やや強気」継続し目標株価引き上げ、26年8月期予想も上方修正

ファーストリテイリング(ユニクロを展開する持株会社)の株式市場での評価が、じわじわと高まりつつあります。日系大手証券がレーティング「やや強気」を据え置いたうえで、目標株価を6万円に引き上げたことに加え、2026年8月期の経常利益予想が前週比で0.9%上昇したことが伝えられ、投資家の関心が再び高まっています。

大手証券が目標株価を6万円に引き上げ、「やや強気」を継続

まず注目されるのが、日系大手証券によるレーティング「やや強気」の継続と、目標株価の6万0,000円への引き上げです。これは、すでに高水準にある同社株価に対しても、なお一定の上昇余地があると判断したことを意味します。

「やや強気」という評価は、いわゆる「中立」よりは上、ただし「強気一辺倒」というほどではない、バランスを意識した前向きな評価です。投資家に対しては、「積極的に売る理由は乏しく、むしろ押し目では買いを検討してもよい」といったニュアンスを持つことが多いレーティングです。

目標株価を6万円とする判断の背景には、

  • グローバルでのユニクロ事業の拡大
  • 収益性の底上げやコスト管理の進展
  • 為替動向など外部環境が同社に有利に働いている面

などがあるとみられます。特に、ここ数年はアジアや北米など海外事業の存在感が増しており、国内だけに依存しない収益構造が評価されていると考えられます。

2026年8月期の経常利益予想が前週比0.9%上昇

同時に、アナリストによる2026年8月期の経常利益予想が前週比で0.9%上昇したことも報じられています。これは、各社アナリストが集計したコンセンサス(予想の平均値)が少し上方修正されたことを意味します。

前週から0.9%という上昇幅自体は一見すると小さく見えますが、コンセンサス予想が切り上がるということは、

  • 直近の業績動向や月次売上などが想定より堅調である
  • コストや為替の影響を考慮しても、利益面での見通しが改善している

といったプラスのサインと捉えられることが多く、市場心理にとっては追い風となります。

足元の株価水準と市場での位置づけ

足元のファーストリテイリング株は、5万6,000円台後半から5万7,000円前後の水準で推移しており、東京市場でも時価総額上位の主力銘柄として、日経平均株価の動きにも大きな影響を与える存在です。実際、12月中旬時点の株価はおおむね5万6,000円台となっており、1日の値動きでも数百円程度の上下が見られるなど、活発な売買が続いています。

アナリストのコンセンサスでは、株価予想の平均は5万7,000円前後とされており、現状株価とのギャップはそれほど大きくありません。このことは、市場がある程度「高評価を織り込み済み」の状態にあることを示しています。

一方で、今回報じられたような大手証券による目標株価6万円という水準は、コンセンサスよりもやや高めの評価にあたります。これは、その証券会社が、

  • 今後の収益拡大ペース
  • ブランド力の強さ
  • 世界的な衣料品需要の回復

などを、より楽観的に見ている可能性を示唆しています。

「やや強気」評価が意味するもの

今回のニュースでポイントとなるのは、レーティングが「やや強気」で据え置かれつつ、目標株価が引き上げられたという組み合わせです。「強気」に引き上げるのではなく、あくまで「やや強気」のままという点には、次のような含みがあります。

  • 業績や成長性には期待している
  • ただし、株価水準自体はすでにそれなりに高く、バリュエーション(株価評価指標)は割安とまでは言い切れない
  • 中長期的な視点では魅力的だが、短期的には値動きの振れも意識する必要がある

そのため、長期保有を前提に同社を「主力銘柄の一つ」として考えている投資家にとっては、今回の評価は心強い後押しとなりえる一方、短期売買を重視する投資家にとっては、「高値圏での売買タイミングを慎重に見極めたい」局面ともいえます。

経常利益予想の上方修正が持つインパクト

2026年8月期の経常利益予想が前週比で0.9%上昇したことは、表面的には小幅ながら、市場の見方が静かに改善しているサインと受け止められます。

経常利益は、本業のもうけに金融収支などを加えた企業の実力を示す指標です。この予想が切り上がる背景としては、

  • 既存店売上の堅調さ
  • 在庫管理やサプライチェーンの効率化
  • 為替の影響を踏まえてもなおプラスとなる収益構造

などが想定されます。特に、グローバルブランドとして展開するファーストリテイリングにとって、為替の動きは利益に大きな影響を与えますが、足元ではそのリスクを吸収しつつ、事業拡大を続けられているとの見方が強まっていると考えられます。

個人投資家にとってのポイント

今回のニュースを個人投資家の立場から整理すると、次のようなポイントが挙げられます。

  • 目標株価6万円は、現在の株価水準から見ると依然として上値余地を示す水準であり、中長期の成長期待が維持されていることを示している
  • レーティング「やや強気」継続は、過度な楽観ではなく、一定のリスクを織り込みつつもポジティブなスタンスを保っているというシグナル
  • 26年8月期の経常利益予想の0.9%上方修正は、業績見通しが徐々に良い方向へ見直されていることを映しており、今後の決算発表にも注目が集まりやすくなる

一方で、すでに株価は高水準にあり、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標を見ると、割安感が前面に出る水準ではないとの見方も根強くあります。したがって、投資を検討する際には、

  • 自分自身の投資スタイル(長期・短期)
  • ポートフォリオ全体のバランス
  • 相場全体の方向性

などをあわせて考えることが重要です。

今後注目したいポイント

今後のファーストリテイリングについて、市場が注目しそうなポイントは次の通りです。

  • 四半期決算や月次売上の動向
    既存店売上や海外事業の伸びが、今回の予想上方修正を裏付ける内容となるかどうかが注目されます。
  • 為替動向
    円相場の変動は、海外で稼ぐ比率が高い同社の利益に大きな影響を与えます。為替水準によっては、今後の業績予想が再び見直される可能性もあります。
  • 新規出店・ブランド戦略
    ユニクロだけでなく、ジーユーなど他ブランドの成長戦略や、新市場への展開も、中長期的な株価に影響する要素となります。

こうした複数の要因を踏まえつつ、今回の目標株価引き上げ経常利益予想の上方修正は、現時点での市場評価が「堅調な成長を見込んだ前向きなもの」であることを示すニュースだと言えます。

投資家にとっては、短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、決算や事業戦略の進捗を確認しながら、時間をかけて企業価値の推移を見守っていく姿勢が求められそうです。ファーストリテイリングは、日本を代表するグローバル企業として、今後も国内外の投資家から高い注目を浴び続けることになりそうです。

参考元