地方競馬を盛り上げた“砂の王者”ライトウォーリア、川崎でラストランの舞台に別れ

地方競馬ファンに長く愛されてきたライトウォーリアが、川崎競馬場で行われた引退式をもってターフならぬ「ダートの舞台」に別れを告げました。NARグランプリ2024年度代表馬という輝かしい勲章を持つ名馬が、ファンの拍手に包まれながら新たなステージへと歩み出します。

JRAデビューから地方のトップホースへ

ライトウォーリアは、2017年2月13日生まれの牡馬で、父はマジェスティックウォリアー、母はスペクトロライトという血統です。生産は北海道安平町のノーザンファームで、馬主はキャロットファームという、競馬ファンにはおなじみの名門ラインから送り出された1頭でした。

2019年にJRAでデビューしたのち、2022年からは川崎競馬・内田勝義調教師の管理馬として地方競馬へ戦いの場を移します。そこからの躍進は目覚ましく、

  • 2022年・埼玉新聞栄冠賞(SⅢ)優勝
  • 2022年・勝島王冠(SⅡ)優勝
  • 2024年・報知オールスターカップ(SⅢ)優勝
  • 2024年・川崎記念(JpnⅠ)優勝
  • 2025年・大井記念(SⅠ)優勝

と、数々のビッグタイトルを手にしてきました。とくに2024年の川崎記念制覇は、地方競馬ファンの記憶に深く刻まれています。

また、同年には韓国のコリアカップ(GⅢ)にも遠征し、川崎競馬所属馬として初めて海外へ挑戦した存在としても知られています。こうした活躍が評価され、NARグランプリ2024年度代表馬および4歳以上最優秀牡馬に選出されるなど、「地方競馬の顔」と呼ぶにふさわしい実績を残しました。

通算39戦10勝、地方を代表するダートホースの戦績

ライトウォーリアの戦績は、通算39戦10勝。地方収得賞金は2億3,142万円、総収得賞金は3億2,242万円にのぼります(いずれも2025年11月末時点)。南関東の重賞戦線を中心に、常に上位争いを演じてきた堅実さも魅力でした。

ラストランとなったのは、12月3日に行われた大井競馬場の勝島王冠。このレースでは3着に健闘し、有終の美へとつながる走りを見せています。大崩れせず、最後まで一線級として戦い続けた姿は、まさに「職人肌のダートホース」といった印象を残しました。

川崎競馬場で涙と笑顔の引退式

引退式は、川崎競馬第8レース終了後に行われ、多くのファンがスタンドから熱い拍手と声援を送る中で行われました。主戦を務めた吉原寛人騎手、そして内田勝義調教師ら関係者も姿を見せ、これまでの労をねぎらいました。

調教師の内田勝義師は、「調教師になってから一番思い入れのある馬」と語り、その存在の大きさをしみじみと振り返っています。川崎記念制覇や海外遠征など、厩舎としても新たな歴史を切り開いてくれた存在であり、言葉以上の感謝の気持ちがにじみ出ていました。

吉原寛人騎手「本当に産駒も楽しみ」

引退式の場で注目を集めたのが、長くコンビを組んできた吉原寛人騎手のコメントです。吉原騎手は、ライトウォーリアに対して「本当に産駒も楽しみ」「いい子どもを出してほしい」と、種牡馬としての未来に期待を込めたメッセージを送りました。

レースで幾度もコンビを組み、ともに重賞タイトルをつかんできたパートナーだからこそ、その言葉には重みがあります。ライトウォーリアの勝負根性粘り強さを身近に感じてきた吉原騎手ならではの視点から、「この馬の良さが子どもたちに受け継がれてほしい」という願いが素直に伝わってきました。

今後は青森・スプリングファームで種牡馬入り

引退後のライトウォーリアは、青森県のスプリングファームで種牡馬入りし、繋養先は荒谷牧場となる予定です。すでに今月初旬の勝島王冠後には種牡馬入りが発表されており、引退式はその門出を祝う場ともなりました。

父マジェスティックウォリアーのパワーとスピード、母系に流れるディープインパクトの血統背景を併せ持つライトウォーリアの配合は、地方競馬のダート路線においても魅力的な選択肢となりそうです。吉原騎手が語ったように、今後は「産駒としての活躍」が大きな楽しみとなります。

地方競馬を支えたスターの存在感

中央競馬のGⅠ戦線が注目を集める一方で、近年は地方競馬にも多くのスターが誕生しています。ライトウォーリアは、その中でも「象徴的な1頭」といえる存在でした。

  • 地方所属馬として海外遠征を経験したチャレンジ精神
  • 南関東の重賞戦線で長く第一線を走り続けた安定感
  • NARグランプリ年度代表馬に選ばれた実績

こうした歩みは、地方競馬のレベルの高さや、ファンに楽しみを提供し続ける懸命な取り組みを象徴しているともいえます。

川崎競馬を舞台に広がる“地方競馬の楽しみ方”

今回の引退式が行われた川崎競馬では、レースだけでなく、さまざまな企画やイベントを通じて新たなファン層の開拓も進められています。その一つが、バラエティ色のある企画映像や対決企画です。

たとえば、「【じゃいVSほのか】川崎競馬を舞台に1万円でガチンコ勝負!ラスト・第5弾は全日本2歳優駿(JpnⅠ)!」という企画では、芸能人や著名人が予算1万円を手にレース予想対決を繰り広げ、川崎競馬場や全日本2歳優駿(JpnⅠ)といったビッグレースの魅力を、競馬初心者にもわかりやすく伝えています。

この企画の舞台となる全日本2歳優駿は、2歳馬の頂点を争う重要な一戦で、将来のスターホースへの登竜門としても注目される存在です。こうしたレースとともに、バラエティ企画を通じて「競馬はよくわからない」という人たちにも楽しみ方を広げる試みが続けられています。

地方競馬の魅力:距離感の近さと物語性

ライトウォーリアのようなスターの引退式は、地方競馬の「距離感の近さ」をあらためて感じさせてくれる瞬間でもあります。スタンドのすぐそばを歩く馬に声援を送れること、レース後には調教師や騎手の表情が間近で見られることは、中央の大規模競馬場とはまた違う魅力です。

また、JRAから地方へ移籍し、そこで才能を開花させていく馬のストーリーは、まさに「第二の馬生」とも呼べる物語です。ライトウォーリアの歩みは、その代表例のひとつといってよいでしょう。

中央でデビューし、その後地方に移ってから大輪の花を咲かせる――。こうしたストーリーがあるからこそ、地方競馬には「ドラマ」を求めて足を運ぶファンが後を絶ちません。

ファンとともに歩んだ“砂の王者”の今後

今回の引退式では、ライトウォーリアのこれまでの走りをスクリーンで振り返る演出や、記念写真の撮影なども行われました。スタンドからは名残惜しむようなため息とともに、「お疲れさま」「ありがとう」という声が自然と上がり、その人気ぶりを感じさせました。

競走馬としての役目を終えたこれからは、青森の地で種牡馬として新たな命を送り出す役割が待っています。ファンの多くが、「いつかライトウォーリア産駒が川崎競馬場に戻ってきて、父と同じように重賞を勝ってくれたら」と、未来の姿に思いをはせていることでしょう。

吉原寛人騎手が語ったように、「産駒に乗れることを楽しみにしている」という願いが現実となる日は、そう遠くないかもしれません。父と同じく、タフなダートで粘り強く伸びる子どもたちが現れたとき、また新たなドラマが始まります。

ライトウォーリアが残したもの

ライトウォーリアの引退は、一つの時代の終わりを感じさせる出来事でありながら、同時に地方競馬の新たなステージへのスタートでもあります。

  • 地方競馬から海外へ挑戦した「先駆者」としての足跡
  • NAR年度代表馬として地方競馬の存在感を示した功績
  • ファンや関係者との深いつながりが生んだ数々のドラマ

こうした財産は、これからも多くのファンの記憶に残り、地方競馬を語るうえで欠かせない一章となっていくはずです。

そして、全日本2歳優駿をはじめとする2歳戦線では、次のスター候補たちがすでにしのぎを削っています。引退していく名馬がいれば、新たに輝き始める若駒もいる――。その循環こそが、地方競馬の魅力であり、競馬というスポーツの大きな魅力なのかもしれません。

ライトウォーリアが築いた物語を受け継ぐのは、これから登場する若きダートホースたちです。ファン一人ひとりがその歩みを見守り、声援を送ることで、また新しい「地方競馬のヒーロー」が生まれていくことでしょう。

参考元