7年ぶり復活の「水戸黄門」 武田鉄矢版はなぜ賛否両論なのか
国民的時代劇として長年親しまれてきた「水戸黄門」が、約7年ぶりに新作としてテレビに帰ってきます。今回は、BS-TBSの開局25周年企画として放送される「水戸黄門スペシャル」を中心に、主演・武田鉄矢さんが築き上げてきた“新たな黄門像”と、一部視聴者の根強い反対意見、そして今後のシリーズ化の行方まで、わかりやすくまとめてご紹介します。
BS-TBSで「水戸黄門スペシャル」放送決定
BS-TBSは、2025年12月28日に2時間スペシャルドラマ「水戸黄門スペシャル」を放送すると発表しました。 開局25周年企画として制作されるこの作品は、約7年ぶりとなる新作ドラマ版「水戸黄門」で、ファンのあいだで大きな注目を集めています。
主演はもちろん、2017年からBS-TBS版「水戸黄門」で6代目・水戸光圀を務めてきた武田鉄矢さん。 7年ぶりにテレビドラマとして“黄門さま”役に戻ってくることになり、その復活はニュースサイトやスポーツ紙、公式X(旧Twitter)で連日取り上げられています。
ドラマの舞台は、能登・輪島から金沢へと続く北陸の地。 公式情報によると、物語は西山荘で隠居生活を送る光圀が、能楽をきっかけに甥である前田綱紀に会うという名目で、助さん・格さんらおなじみの一行とともに金沢に向かう旅路から始まります。 番組としては初となる4K放送にも対応し、美しい北陸の風景や時代劇ならではの映像美も見どころとなりそうです。
おなじみのメンバーに加え豪華ゲストが集結
今回のスペシャルでは、これまでのBS-TBS版「水戸黄門」で“黄門一行”を支えてきたキャストが、引き続き出演します。
- 水戸光圀:武田鉄矢
- 佐々木助三郎(助さん):財木琢磨
- 渥美格之進(格さん):荒井敦史
- 風車の弥七:津田寛治
- くノ一・詩乃:篠田麻里子
助さん役の財木琢磨さんは、今回のスペシャルに先駆けて、自身が出演した第一シリーズの再放送が行われることも明かしています。 BS-TBSでは12月18日から、平日夕方の時間帯に武田黄門の第1シリーズ再放送を編成しており、スペシャル放送への期待を高める狙いがうかがえます。
さらに、ニュースサイトによると、スペシャル版には剛力彩芽さん、秋野太作さん、加藤雅也さんなど、豪華なゲスト陣も出演予定とされています。 長年のファンにとってはおなじみの黄門一行と、新たなゲストキャストがどのような化学反応を見せるのか、見どころのひとつと言えるでしょう。
「水戸黄門」放送の歩みと武田鉄矢さんの起用
「水戸黄門」は1969年、TBS系の「ナショナル劇場」枠(月曜20時台)でスタートしました。 初代・水戸光圀を演じたのは東野英治郎さんで、その後も
西村晃さん、佐野浅夫さん、石坂浩二さん、里見浩太朗さんへと、名優たちが代々バトンをつないできました。
しかし、長年続いた地上波でのレギュラー放送は、2011年にいったん終了します。 その6年後の2017年、BS-TBSに舞台を移し、新たなキャスト陣による“新生・水戸黄門”としてシリーズが復活しました。 このとき6代目・水戸光圀に抜擢されたのが武田鉄矢さんです。
武田さんは、地上波時代の「水戸黄門」にゲスト出演した経験こそあったものの、黄門さまを演じるのは初挑戦でした。 一方で、TBSドラマ「3年B組金八先生」の坂本金八役で長年親しまれていたことから、“どうしても金八先生のイメージで見てしまう”という視聴者も少なくありませんでした。
新たな「武田黄門」像への戸惑いと批判
BS版「水戸黄門」で武田鉄矢さんが光圀を演じ始めた当初、視聴者や関係者からは少なからぬ戸惑いの声も上がりました。
ある芸能プロ関係者は、撮影現場でのエピソードとして、印籠を掲げる位置を悪役俳優から指摘される場面があったことを紹介しています。「印籠の位置が違う。もう少し高め」とダメ出しされたという話で、長くシリーズに関わってきたスタッフ・出演者とのあいだに、“水戸黄門らしさ”を巡る感覚の違いもあったようです。
また、武田さんの持つ明るくコミカルなキャラクターが色濃く出たことで、「黄門さまがコミカルすぎて、貫禄や品格が足りない」といった声も、往年のファンの一部からは上がりました。 こうした不満や違和感は、週刊誌などでも取り上げられ、特に前任の5代目・水戸黄門を務めた里見浩太朗さんが、武田さんの起用に落胆していたと報じられたことも話題になりました。
今回のスペシャル放送決定が報じられた際にも、SNS上では、《どん兵衛の新しいCMかと思った》《この黄門様は、ミスキャストだよなぁ〜》といった否定的な投稿が見られたと伝えられています。 こうしたコメントからは、従来の「厳格で威厳のある黄門さま」というイメージを大切にしてきたファンほど、武田版の柔らかい人物造形になじめない面があることがうかがえます。
一方で高まる評価 「お約束」と“ノリの良さ”が魅力
しかし、その一方で、武田鉄矢さんの「水戸黄門」を支持する声も着実に増えてきました。 同じ芸能関係者は、シリーズを重ねるなかで、武田版「水戸黄門」が次第に評価を高めていった背景として、次の2点を挙げています。
- 従来のシリーズと同じ「お約束」の安心感:悪代官や悪徳商人を成敗し、最後に印籠を掲げて一件落着という、長く続くおなじみの展開が守られたことで、ファンが安心して楽しめる作品世界が維持された。
- これまでにない“ノリの良い黄門さま”:従来の重厚で威厳のある光圀像とは異なり、人間味があり、時にコミカルな表情も見せる黄門像が新鮮だと感じる視聴者も増えた。
つまり、武田版「水戸黄門」は、従来のフォーマットをしっかり受け継ぎながらも、人情味や軽妙さを前面に出した“新しい黄門像”を打ち出したことで、賛否を呼びつつも独自のファン層を形成してきたと言えます。
ニュース記事も、「このままロングランシリーズへ成長する可能性も秘めている」と指摘しており、今回のスペシャルが好評を博せば、今後も継続的なシリーズ化が現実味を帯びてくるとの見方が広がっています。
BS-TBSでの「水戸黄門」再スタートと再放送の動き
BS-TBSは、「水戸黄門スペシャル」に先駆けて、武田鉄矢さん主演によるシリーズの再放送や、新たな展開も準備しています。
まず、12月18日からは、武田黄門の第一シリーズ再放送が平日夕方18時30分〜19時30分の枠でスタートします。 これはスペシャル放送直前の“おさらい”としての位置づけで、すでに視聴済みのファンにとっては懐かしさを、初めて見る視聴者にとっては作品世界に入りやすい導入となりそうです。
さらに、BS-TBS公式サイトでは、「武田鉄矢主演!国民的時代劇がキャスト陣も一新し、新生『水戸黄門』として再スタート」と紹介されており、東北を舞台に黄門一行の世直し旅が再び始まるという情報も掲載されています。 詳細な放送スケジュールや内容は今後順次明らかになっていく見込みですが、スペシャルドラマと並行してシリーズ展開を視野に入れていることがうかがえます。
なぜ「水戸黄門」は今も愛され続けるのか
「水戸黄門」がこれほど長く支持されてきた背景には、いくつかのわかりやすい“魅力の軸”があります。武田鉄矢さん版にも、この魅力はしっかり受け継がれています。
- 勧善懲悪のわかりやすさ:悪人が罰せられ、善人が救われるという展開は、時代を問わず多くの人にとって爽快で安心感のある物語構造です。
- 旅情と土地の魅力:各地を旅しながら、その土地ならではの文化や風景、人情が描かれる点は、旅番組的な魅力も兼ね備えています。今回の舞台となる輪島・金沢も、映像的な見どころが多い地域です。
- “お約束”の楽しさ:印籠を掲げる名場面や、助さん・格さんの立ち回り、弥七やくノ一の活躍など、毎回の“型”があるからこそ、視聴者は安心して物語に身を委ねることができます。
武田版「水戸黄門」は、この「型」をしっかり守りながら、黄門さまの人間味や柔らかさを前に出すことで、現代の視聴者にも親しみやすい作品を目指してきました。 長年のファンの中には従来の重厚なイメージを大切にする人も多く、そこにギャップが生じているのは事実ですが、それもまた「国民的シリーズ」であるがゆえの宿命とも言えるでしょう。
今後の「武田黄門」はどこへ向かうのか
現在、武田鉄矢さんは情報番組「サン!シャイン」(フジテレビ系)のスペシャルキャスターも務めていますが、この番組が来年3月で終了すると複数のメディアで報じられています。 そうした動きから、「いよいよ本業である俳優業に本格的に戻るのではないか」との見方も出ており、今回の「水戸黄門スペシャル」は、その象徴的な仕事のひとつとも捉えられています。
芸能関係者の間では、「今回のスペシャルをきっかけに、武田版『水戸黄門』がロングランシリーズへと育っていく可能性がある」との声もあります。 一部視聴者からの根強い反対意見が存在するのは事実ですが、それでもシリーズとして継続するだけの支持と手応えを、これまでの放送で積み重ねてきたと見ることができます。
「水戸黄門」は、これまでも主演俳優の交代を繰り返しながら、その都度、新しい黄門像を受け入れてきた歴史を持っています。 初代から5代目まで、それぞれの黄門さまに熱心なファンがいるように、6代目・武田鉄矢さんの黄門さまも、賛否を超えて“ひとつの時代”を象徴する存在として、今後語り継がれていくのかもしれません。
7年ぶりに旅立つ「武田黄門」が、輪島・金沢の地でどのような世直しを見せてくれるのか。そして、その先にロングランシリーズとしてのさらなる展開が待っているのか。年末のスペシャル放送は、「水戸黄門」という長寿シリーズの“現在地”と“これから”を確かめる格好の機会となりそうです。



